「太鼓の達人」で聴くクラシック音楽アレンジ①《バロック音楽》
はじめに
クラシック音楽というと、敷居が高いようなイメージはありませんか?
(初期レコードの録音可能時間が4分程度だったため)慣例的に4分程度の曲が多い現代音楽に比べるとクラシック音楽は演奏時間が長いものが多いですし、とっつきにくいと感じるかもしれません。
そこでクラシック入門として是非オススメしたいのが、太鼓の達人です。
太鼓の達人には多くのクラシック音楽が収録されていて、ゲームの尺に合わせていずれも2分程度に編曲されているのでサクッと聴けます。
おまけに、原曲の良さを生かしつつも大胆に編曲された名アレンジ曲も存在するのです。
今回は、太鼓の達人のクラシックアレンジを原曲も交えながら解説していきます。
※便宜上「バロック音楽」「古典派」「ロマン派」という時代区分で作曲家別に紹介していきますが、ハッキリとした線引きは難しいということと、必ずしもその時代の傾向を代表する作曲家というわけではないということにご留意ください
バロック音楽
1600年から1700年代前半はバロック時代です。
ハレルヤ・コーラスでおなじみのメサイアを作曲したヘンデルや、後述のバッハやヴィヴァルディが代表的な作曲家として挙げられます。
(「バロック」は「歪んだ真珠」という意味で、それまでの写実的な「ルネサンス美術」とは違った美術様式を指す言葉ですが、「バロック音楽」は単に「バロック時代の音楽」という意味なので美術様式とはそんなに関係無いです。。。)
そんなバロック時代に作られた曲もアレンジされ、太鼓の達人に収録されています。
【パッヘルベル】
〖カレ・カノ・カノン〗
原曲〖カノン〗
作曲者:ヨハン・パッヘルベル
最も有名なカノンの一つで、ヨハン・パッヘルベルが唯一残したカノンでもあります。
カノンというのはカエルの合唱のように、同じ主題(メロディ)を繰り返して重ねていく様式のことです。
カレ・カノ・カノンのボーカルは輪唱ではないので、カノン要素は薄い編曲となっています。ちなみに編曲者はエンジェルドリームでおなじみの岡部啓一さん。
【ヴィヴァルディ】
〖弩蚊怒夏〗
原曲〖四季 夏 第3楽章〗
作曲者:アントニオ・ヴィヴァルディ
四季はアントニオ・ヴィヴァルディによって1725年に発表されたヴァイオリン協奏曲集「和声と創意の試み」中に収録されている曲群の通称です。
春夏秋冬それぞれ3つの楽章から構成されています。
四季「春 第1楽章」の冒頭は誰しも聴いたことがあるでしょう。
(太鼓の達人でいうと春竜~Haryu~にもフレーズが使われています)
弩蚊怒夏は、四季の中でも「夏 第3楽章」を原曲としています。
四季は各楽章ごとにソネット(短い詩)が添えられており、「夏 第3楽章」は以下の通り。
曲調のイメージ通り、激しい夏の嵐を表す詩となっています。
鬼のような長複合譜面にピッタリですね()
【バッハ】
〖トッカータとフーガとロック〗
原曲〖トッカータとフーガ〗
作曲者:ヨハン・ゼバスティアン・バッハ
皆さんご存知ヨハン・ゼバスティアン・バッハの名曲。特に最初のフレーズの知名度はバツグンです。
トッカータは即興的な試し弾き、フーガは特定の主題(メロディ)を繰り返すというような意味です。全く同じフレーズを繰り替えすカノンと違い、フーガは多少のアレンジや変奏を伴い、自由な傾向にあります。
原曲の引用動画でいうと2:40あたりまでがトッカータ部、それ以降がフーガ部という構成です。
「トッカータとフーガとロック」の1:33頃にはバッハの別曲「小フーガ ト短調」のフレーズも含まれています。
Flash動画を嗜んだ人は「ハゲの歌」として聴いたことがあるかもしれない
余談ですが、トッカータとフーガはバッハの作ではないという説もあります。
作曲者が誤って伝わり、後の時代になって本当の作曲者が判明する例は結構あるのです。例えば…
【ペツォールト】
〖メヌエット〗
原曲〖メヌエット〗
作曲者:クリスティアン・ペツォールト
長年バッハのメヌエットとして親しまれていたこの曲は、近年の研究によってバッハではなくクリスティアン・ペツォールトの作曲であったことが分かっています。
いまだに楽譜やメディアでも慣例的にバッハの作とクレジットされることがあり、誤解している人も多いのではないでしょうか。
今知られているクラシックの名曲も、実は作曲者が違っていたなんてこともあるかもしれませんね。
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バロック時代の章は以上です。300年ほども前に作られたというのが意外に感じる曲もあったのではないでしょうか。
次回は古典派〜初期ロマン派の時代に生まれた曲を紹介していきます。
ここまでお読みいただきありがとうございました。