クロミのフミフミ
猫の可愛い仕草と言えば、「フミフミ」である。毛布や布団などの柔らかい生地の上で猫が両手でギュギュとやるあれである。フミフミは、一般的に親から早く離れた猫が小さい時に、お乳を飲んでいた記憶を思い出してすると言われている。
クロミは、家にやってきた時から、暇があればフミフミしていた。クロミは、兄弟と共に捨てられていたところを拾われたとかいう話だった。その時に、よほどひもじい思いをしたのだろうか。今でも、食に対する執着心がすごい。
人間の食べているものを欲しがるのもクロミだけで、特にパンは大好物なので、私が朝食にパンを食べていると、猛烈な勢いで横取りしようとする。右手でパン、左手でクロミの頭を押さえながら食べることになる。
フミフミの話に戻そう。
小さい頃、クロミは、フミフミを私に見てもらいたがった。「ねえねえ」とチョイチョイして、「こっちきて」と誘導し、フカフカのものがあるところに行き、おもむろにフミフミし始める。クロミのフミフミは、高速で、足踏みのように規則正しい。フミフミしながらも、「見て、上手でしょう?」と言いたげな顔をするので、尻尾の付け根の辺りを撫でながら、「上手、上手、すごいねえ」と言うと嬉しそうな顔をして、どんどん高速になっていく。どんどんどんどんフミフミして、「ふう〜」と疲れてゴロンと横になり、「なでて」と要求する。女子は、男子より要求がストレートのような気がする。なでて欲しい時は、そう言う顔をするし、そうじゃない時は触られたくない。はっきりしているのだ。
男子は、どちらかというと、子供に近い感じだが、女子は、友達みたいな感じがする。にゃーちも、コハクも大豆も男子だったので、初めての女子は新鮮だった。
コハクとうまくやっていけるのかが、一番気になっていたことだが、クロミは、コハクについてまわり、家の中のことを色々教えてもらい、毛繕いしてもらって嬉しそうだった。やはり、兄弟が多い中で育った子は、一人だと寂しがることが多い。クロミも最初からコハクのことを全く嫌がらず、「よろしく」という感じだったので、頼もしい存在だった。コハクも全く物おじしないクロミにびっくりしながらも、初めてできた妹にまんざらでもない様子で、お兄ちゃんっぽくなっていったのだった。