猫だけど、演技派女優
ひじきがクロミを見ていると、日頃からひじきのことが嫌いなクロミが「ちょっと何見てんのよ!」とでも言うように、ひじきをケージの隅に追い詰めて、シャーシャー言い出す。
コハクは、それを涼しい顔で見ている。この猫は、自分に関係ないことにはとことん無関心なのだ。
まともにケンカすると体も大きくて、力も強いひじきの方が勝つのだが、ひじきはジッと我慢している。その様子は、道路でカツアゲされている中学生みたい。
クロミはさながらスケバンか。丈の長いセーラー服が似合いそうなクロミである。
大抵、我慢しているひじきもあまりにクロミがひつこいと反撃に出る。それでもひじきは自分のパワーを自覚しているので、ほんのちょっとパンチするぐらいなのだが、演技派女優クロミは、「ああー」と言って大袈裟に倒れ込むのだ。
クロミは生まれ持っての女優で、コハクとケンカしている時でも、私たちが見てるのを察知すると、全くパンチを受けてないくせに、「ああー」と言って倒れ込んだりする。
どこでそんなことを覚えたのか?なんか色々見てるんだろうなあ。
クロミは、ご飯を催促しているのに、無視された!(実際は、まだご飯の時間ではない)というようなことも、ちゃんと覚えていて、時間が経ってから、仕返しのように、シーしたりするので、普段から「クロミは本当に可愛いねえ」とか言って、ご機嫌をとっている。
そういう時もひじきはすぐゴロゴロ言ってくるのに、クロミは「何を分かりきったことを、今更」とでも言うようにツーンとしている。
かと思うと、自分が甘えたい時は、「ねえー」とねっちこい甘え声を出して近寄ってくる。
クロミは顔を触られるのが好きなので、頬の辺りをゴリゴリしてあげると、一気にうっとり顔になる。しかし、そういう時でも、「自分が甘えてあげている」というスタンスは崩さない。さすが、女優猫である。