猫の声を聞きに行く前の話
クロミの粗相対策
我々が猫初心者だったということもあるが、色々と問題行動が多く、誤飲したり、気を抜くとすぐに吐いたり、何かと手がかかったコハクに比べ、クロミは、丈夫で、性格も明るく、何か悪いことをしても、「これしちゃダメだよ」というと「はい、わかりました!」と言ってすぐ止めるようなメチャクチャ育てやすい子だった。病院へも、数え切れないぐらい通ったコハクと比べ、クロミは、ワクチンや爪切りなどで通ったことがほとんどである。
クロミがくる前のコハクは、毛布や布団が大好きで、夏でもクーラーの効いた部屋で布団に包まれて寝ているような猫だったが、クロミが3歳になってからは、そういうことはできなくなった。ベッドに粗相をするようになったからだ。
今まで全くそういったことをしなかったので、驚きと同時に不思議に思い、行動を観察してみたが、我慢できなくて、してしまったというのではなく、明らかに、そこがトイレでないとわかってしているようだった。
仕方なく、ベッドの上に防水シーツをひき、その上に大型犬用のトイレシートを何枚も敷く。人が家にいる時は、監視できるし、寝室は開けないようにして、クロミもそれがわかっているので、ちゃんとトイレでするのだが、夏場の留守の時は、エアコンの効き過ぎを防ぐために、寝室を開けて入れるようにしていたので、そういう時は、必ずと言っていいほど、粗相してあった。そのうち、小だけでなく、大までするようになり、ゲンナリするようになった。
親バカと言われればそれまでだが、クロミは、基本的に賢い猫なので、何か原因があるはずだと思い、その原因を探るべく、さらに観察を続けたのだが、決定的なものは掴めないまま、日々は過ぎ、もう諦めようかなと思い、職場の知人になんとなく、「動物が何を思っているのか、話が聞けたらいいんですけど…」と言ったところ、「いますよ、そういう人」となり、教えてもらったのだった。
そこは、整体や体の声を聞くみたいなことをされていて、疑り深い私は、「なんか変にスピリチュアル系の人だったらやだなあ」と思っていたのだが、とりあえず、猫は連れずに、整体を受けてみようと思い、行ってみたのだった。
まずは整体を受けに、いざ、お店へ
閑静な住宅地にある一軒家にそのお店はあった。2階が玄関になっており、階段が広場などにあるような木製で、そこを上がっていくと小さな庭があり、芝生が敷いてあった。とにかくメチャクチャツボにハマる家で、「なんて可愛い家なんだ。こんなセンスの良い家に住んでいる人とは気が合うに違いない」と勝手に確信して、ドキドキしながら玄関を開けた。これが街中の普通のビルだったら行くのを止めていたかもしれない。
ドアも、よくある玄関ドアではなく、映画に出てきそうな木製の小さめのドアだった。なんだか現実世界でないような気になりつつ、ドアを開けたら、店主の女性が出迎えてくれた。一瞬で、気がフッと緩む、独特の自然な雰囲気を持った女性だった。「変な人じゃなくて、よかった」と私は、心を撫で下ろして、中に入った。
玄関は土間風になっていて、庭が見える細長い窓の横を通って、リビングのような施術室に入ると、これまた大きな窓から庭が見えていて、気持ちがいい空間だった。そこで、整体してもらうわけだが、さすがに最初は、ちょっと緊張していたが、手足をグルグル回したり、皮膚だけをねじったり、されるがままでいるうちにどんどん体も柔らかく、気持ちもゆったりしてきて、不思議な時間だった。
施術が終わって、店主さんが私のところハーブティーを持ってきてくれた。熱いハーブティ。じんわり身体に染み込んでいく。
やっぱりなんだか不思議な力を持っている方のようだ。でも、押し付けたり、強制的な感じは全然なく、ふんわり、優しい。帰りは、びっくりするぐらい身体が軽くて、1時間ぐらい歩いて帰った。うん。動物の声も聞きに行こうと歩きながら色々考えた一日だった。