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無料🆓【院試解答】 京都大学 情報学研究科 数理工学コース サンプル問題A 基礎科目(微積分、線形代数)

【院試解答】 京大 情報学研究科 数理工学 サンプル問題A 基礎科目(微積分、線形代数)

問題は京都大学 大学院情報学研究科 数理工学コース 大学院入試サンプル問題にあります。
京都大学情報学研究科京都大学情報学研究科数理工学コースの筆記試験、基礎科目「微積分」及び「線形代数」のサンプル問題Aの解答例です。もし誤字・脱字や、解答の誤りを見つけた場合には、連絡いただけると対応します。
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総評

<難易度評価> 易、やや易、標準、やや難、難の5段階評価。

微積分:(i)易、(ii)易、(iii)易、(iv)標準、(v)やや易

線形代数:(i)易、(ii)易、(iii)標準、(iv)易、(v)易

<解答のポイント>
全体的にとても易しい。サンプル問題や過去の問題と比較しても最も易しいと思われる。

以下、ベクトルであっても太字では書かないこととする。また、$${I}$$を単位行列、$${O}$$を零行列とする。

微積分

(i)

解説

解を具体的に求めずとも、解の存在さえ示せば良い。登場する関数が連続関数なので、中間値の定理を使う。高校数学の範囲である。

解答

$${f(x)=\sin x - 1 + x^2}$$とおく。$${f(0)=-1<0}$$、$${f(\pi)=\sin \pi - 1 + \pi^2 = \pi^2 - 1 > 0}$$である。$${f(x)}$$は$${\mathbb{R}}$$上連続関数なので、中間値の定理より、$${f(x)=0}$$となる$${x}$$が$${(0,\pi)}$$に存在する。特に、$${\sin x = 1 - x^2}$$となる実数$${x}$$が存在する。

(ii)

解説

$${\frac{3x}{x^2-x-2}}$$の原始関数を求める問題。部分分数分解すれば良い。部分分数分解について詳しくは、部分分数分解の3通りの方法を参考にすると良い。なお、不定積分を求める問題では、積分定数を含めなければならないが、原始関数は微分してもとの関数に戻る関数であるため、積分定数はなんでもよい。参考:原始関数・不定積分の厳密な定義とその違い

解答

$${\frac{3x}{x^2-x-2}=\frac{3x}{(x-2)(x+1)}=\frac{1}{x+1}+\frac{2}{x-2}}$$である。よって、積分定数を$${C}$$として、

$$
\begin{aligned}
\int \frac{3x}{x^2-x-2}dx
&=\int \frac{1}{x+1}dx+\int \frac{2}{x-2}dx \\
&=\log |x+1|+2\log |x-2|+C \\
\end{aligned}
$$

である。よって、求める原始関数の一つは$${\log |x+1|+2\log |x-2|}$$である。

(iii)

解説

連鎖律を使う。

解答

$${x=(u^2-v^2)/2, y=uv}$$である。連鎖律より、

$$
\begin{aligned}
\frac{\partial z}{\partial u} &= \frac{\partial z}{\partial x}\frac{\partial x}{\partial u}+\frac{\partial z}{\partial y}\frac{\partial y}{\partial u} \\
&= u \frac{\partial z}{\partial x}+v \frac{\partial z}{\partial y} \\
\end{aligned} \\
\begin{aligned}
\frac{\partial z}{\partial v} &= \frac{\partial z}{\partial x}\frac{\partial x}{\partial v}+\frac{\partial z}{\partial y}\frac{\partial y}{\partial v} \\
&= -v \frac{\partial z}{\partial x}+u \frac{\partial z}{\partial y} \\
\end{aligned}
$$

(iv)

解説

$${f(x,y) = x^3+y^3-3xy}$$の全ての極値を求める。
極値の候補として、停留点(勾配が0ベクトルになる点)を求めたのち、各停留点におけるヘッセ行列を調べて、実際に極値を取るか調べる。頻出なので必ず押さえておく。きちんと調べるには、ヘッセ行列が正定値か不定値か、どちらでもないかを調べなければならないが、2変数の場合には、行列式の正負と、ヘッセ行列11成分の正負を見るだけで良い。参考:多変数関数の極値判定とヘッセ行列

極値を求める問題では、対称性とグラフの概形をうまく活用することで、計算量を減らしたり、計算ミスを防ぐことができる。
例えば、本問では$${f}$$が$${x}$$と$${y}$$について対称であることを利用して、偏微分の計算は$${\frac{\partial f}{\partial x}, \frac{\partial^2 f}{\partial x^2}, \frac{\partial^2 f}{\partial x \partial y}}$$のみで良い。また、$${f}$$は明らかに充分滑らかなので、ヘッセ行列は対称行列になる。
次にグラフの概形について考えると、$${y=\pm x}$$の直線上では、$${f(x,x)=2x^3- 3x^2}$$及び$${f(x,-x)=3x^2}$$である。これらの関数のグラフを書くと、$${x=0}$$でそれぞれ極大値、極小値を取ることから、$${(0,0)}$$は実際鞍点となっているとわかる。また、$${f(x,x)=2x^3- 3x^2}$$は点$${(1,1)}$$で極小値を取ることから、$${(1,1)}$$が極小点であることにも矛盾していない。

解答

$$
\begin{aligned}
\frac{\partial f}{\partial x} &= 3x^2-3y = 0 \\
\frac{\partial f}{\partial y} &= 3y^2-3x = 0\\
\end{aligned}
$$

を解いて、$${(x,y)=(0,0), (1,1)}$$が停留点であることがわかる。これらの点におけるヘッセ行列を求める。点$${(x,y)}$$におけるヘッセ行列$${H(x,y)}$$は、

$$
\begin{aligned}
H(x,y)&=\begin{pmatrix}
\frac{\partial^2 f}{\partial x^2} & \frac{\partial^2 f}{\partial x \partial y} \\
\frac{\partial^2 f}{\partial y \partial x} & \frac{\partial^2 f}{\partial y^2}
\end{pmatrix} \\
&=\begin{pmatrix}
6x & -3 \\
-3 & 6y
\end{pmatrix}
\end{aligned}
$$

である。したがって、

$$
H(0,0)=\begin{pmatrix}
0 & -3 \\
-3 & 0
\end{pmatrix}, \quad H(1,1)=\begin{pmatrix}
6 & -3 \\
-3 & 6
\end{pmatrix}
$$

である。
$${\det H(0,0) =-9<0}$$より、点$${(0,0)}$$は鞍点である。
$${\det H(1,1) =27>0}$$かつ$${(H(1,1)の11成分)=12>0}$$より、点$${(1,1)}$$は極小点である。
よって、求める極値は$${f(1,1)=-1}$$である。

(v)

解説

積分領域、被積分関数は共にシンプルなので、定石通りそのまま逐次積分すれば良い。
なお、計算ミスを減らすため、適当に下と上から積分値を評価して、答えが合理的であることを確認することが望ましい。
例えば本問なら、まず$${0\leq x, y \leq 1}$$の範囲で$${xe^y}$$の最大値は$${e}$$, 最小値は$${0}$$であることから、積分値は$${1}$$より小さく、かつ$${0}$$より大きいことがわかる。基礎問題は簡単な問題が多いので、計算ミスを防ぐためにも、このような評価を行うことが重要である。

解答

$$
\begin{aligned}
\int \int_D xe^y dxdy
&= \int_0^1 \left[ \int_0^x xe^y dy \right] dx \\
&= \int_0^1 x\left[ e^y \right]_0^x dx \\
&= \int_0^1 x(e^x-1) dx \\
&= \left[ xe^x - e^x -\frac{x^2}{2} \right]_0^1 \\
&= \frac{1}{2} \\
\end{aligned}
$$

線形代数

第$${i}$$行目を$${R_i}$$と表す。また、各行基本変形について、第$${i}$$行に$${k}$$を掛けて第$${j}$$行に足す操作を$${R_j + R_i\times k}$$、第$${i}$$行と第$${j}$$行を入れ替える操作を$${R_i \leftrightarrow R_j}$$、第$${i}$$行に$${k}$$を掛ける操作を$${R_i \times k}$$と表す。

(i)

解説

3つの与えられたベクトルが一次独立となる$${a}$$の条件を求める。一次独立の定義から求めようとすると、文字を含む連立方程式を解くことになり、行基本変形などの場面で場合わけと文字の計算が煩雑になる恐れがある。そのため、行列$${A}$$について、「$${\det A\neq 0}$$($${A}$$が正則であること)」と、「$${A}$$の各列ベクトルが一次独立であること」は同値であることを利用すると楽である。

解答

与えられたベクトルを列ベクトルとして並べてできる行列を$${A}$$とする。つまり、

$$
A=\begin{pmatrix}
1 & 1 & a \\
1 & 2 & 0 \\
-1 & 0 & 1
\end{pmatrix}
$$

$${A}$$の各列ベクトルが一次独立であるための必要十分条件は、$${\det A\neq 0}$$である。サラスの公式より、
$${\det A = 1+2a}$$であるから、求める$${a}$$の必要十分条件は$${a\neq -1/2}$$である。

(ii)

解説

サラスの公式を使って、行列式を計算する。参考:サラスの公式と使い方

解答

$$
\det \begin{pmatrix}
-2 & 1 & 3 \\
4 & -3 & -5 \\
-5 & 3 & 8
\end{pmatrix}
= 2
$$

(iii)

解説

逆行列を手計算で求める時には、行列$${A}$$と単位行列$${I}$$を横に並べた行列$${\begin{pmatrix} A & I \end{pmatrix}}$$に対して、行基本変形を行う。行列$${A}$$が正則であるとき、行列$${\begin{pmatrix} A & I \end{pmatrix}}$$は行基本変形によって、$${\begin{pmatrix} I & A^{-1} \end{pmatrix}}$$となる。参考:逆行列の求め方1:掃き出し法による計算

解答

$$
\begin{aligned}
\begin{pmatrix} A & I \end{pmatrix}
&= \begin{pmatrix}
-3 & 2 & 2 & 1 & 0 & 0 \\
-2 & 2 & 1 & 0 & 1 & 0 \\
2 & -1 & -1 & 0 & 0 & 1
\end{pmatrix} \\
&\to
\begin{pmatrix}
1 & 0 & 0 & 1 & 0 & 2 \\
0 & 1 & 0 & 0 & 1 & 1 \\
2 & -1 & -1 & 0 & 0 & 1
\end{pmatrix} \quad (R_1 + R_3\times 3, R_2 + R_3\times 1) \\
&\to
\begin{pmatrix}
1 & 0 & 0 & 1 & 0 & 2 \\
0 & 1 & 0 & 0 & 1 & 1 \\
0 & -1 & -1 & -2 & 0 & -3
\end{pmatrix} \quad (R_3 + R_1\times (-2)) \\
&\to
\begin{pmatrix}
1 & 0 & 0 & 1 & 0 & 2 \\
0 & 1 & 0 & 0 & 1 & 1 \\
0 & 0 & -1 & -2 & 1 & -2
\end{pmatrix} \quad (R_3 + R_2\times 1) \\
&\to
\begin{pmatrix}
1 & 0 & 0 & 1 & 0 & 2 \\
0 & 1 & 0 & 0 & 1 & 1 \\
0 & 0 & 1 & 2 & -1 & 2
\end{pmatrix} \quad (R_3 \times (-1)) \\
&= \begin{pmatrix} I & A^{-1} \end{pmatrix}
\end{aligned}
$$

よって、求める逆行列は

$$
\begin{pmatrix}
1 & 0 & 2 \\
0 & 1 & 1 \\
2 & -1 & 2
\end{pmatrix}
$$

(iv)

解説

文字も含まれないので、素直に連立方程式を解く。

解答

$${V=\left\{ x= \begin{pmatrix} x_1 \\ x_2 \\ x_3 \end{pmatrix} \in \mathbb{R}^3 \mid x \cdot a =0 \right\}}$$とおくと、$${V=\left\{ \begin{pmatrix} x_1 \\ x_2 \\ x_3 \end{pmatrix} \in \mathbb{R}^3 \mid x_1+2x_2+3x_3=0 \right\}}$$である。よって、

$$
V = \left\{ s \begin{pmatrix} -2 \\ 1 \\ 0 \end{pmatrix}+ t \begin{pmatrix} -3 \\ 0 \\ 1 \end{pmatrix} \mid s,t \in \mathbb{R} \right\}
$$

と表せる。明らかに、ベクトル$${\begin{pmatrix} -2 \\ 1 \\ 0 \end{pmatrix}, \begin{pmatrix} -3 \\ 0 \\ 1 \end{pmatrix}}$$は一次独立であるので、$${V}$$の基底である。以上から、$${V}$$の次元は$${2}$$で、その基底は$${\begin{pmatrix} -2 \\ 1 \\ 0 \end{pmatrix}, \begin{pmatrix} -3 \\ 0 \\ 1 \end{pmatrix}}$$である。

(v)

解説

$${2\times 2}$$の行列の対角化を行う。対角化は、線形代数ではこれまで必ず出題されている。$${3\times 3}$$の行列の対角化も同様の手順で行えるようになっておくこと。また、2024では証明問題も出題されたので、手順を暗記するのではなく、きちんと線形代数全体を満遍なく理解することが重要である。なお、一般に異なる固有値に対する固有ベクトルは一次独立である(証明は良い練習問題になると思う。)が、$${2\times 2}$$程度ならその事実を使わずとも、行列式が0でないことから、固有ベクトルが一次独立であることを確認できる。解答でも後者の方針で解いている。

解答

$${A}$$の固有多項式は、

$$
\det (\lambda I - A)=\det \begin{pmatrix}
\lambda +4 & 3 \\
-6 & \lambda -5
\end{pmatrix} = (\lambda -2)(\lambda +1)
$$

よって、$${A}$$の固有値は$${\lambda = 2, -1}$$である。

固有値$${\lambda = 2}$$に対応する固有ベクトルを求める。
$${u=\begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}\in \mathbb{R}^2}$$として、$${(A-2I)u=0}$$とすると、

$$
\begin{pmatrix}
-6 & -3 \\
6 & 3
\end{pmatrix}\begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 0 \\ 0 \end{pmatrix}
$$

よって、固有ベクトルは$${\begin{pmatrix} 1 \\ -2 \end{pmatrix}s \quad (s\neq 0)}$$である。同様に、固有値$${\lambda = -1}$$に対応する固有ベクトルは$${\begin{pmatrix} 1 \\ 1 \end{pmatrix} t \quad (t\neq 0)}$$である。以上から、固有値2, -1に対する固有ベクトルとして、それぞれ$${\begin{pmatrix} 1 \\ -2 \end{pmatrix}, \begin{pmatrix} 1 \\ 1 \end{pmatrix}}$$をとり、それらを列ベクトルとして並べた行列を$${P}$$とする。つまり

$$
P=\begin{pmatrix}
1 & 1 \\
-2 & 1
\end{pmatrix}
$$

このとき、$${P}$$の定め方から、

$$
AP=P\begin{pmatrix}
2 & 0 \\
0 & -1
\end{pmatrix}
$$

が成り立つ。また、$${\det P=3\neq 0}$$より$${P}$$は正則であるから、

$$
P^{-1}AP=\begin{pmatrix}
2 & 0 \\
0 & -1
\end{pmatrix}
$$

と$${A}$$は対角化される。

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