読んだ本の感想「傲慢と善良」
辻村深月さんの本は何冊か読んでいました。
この「傲慢と善良」はとにかく早く読めばよかったと思う作品でした。
ネタバレなく感想を書きたいと思います。
好きで見ているBSの番組「あの本、読みました?」にも何度も登場して絶賛されていたがなかなか手に取ることをしなかった。
なんであんなに選ばなかったんだろう…
それも自分の中にある傲慢さがあったからだと読み終えてみたらわかったことだ。
たまたま友人が貸してくれた本の中に「傲慢と善良」が入っていて読んでみることに。
読んでいくと今まで感じたことのない感覚に襲われ物語の世界にすんなりと入っていくことが出来ました。
傲慢と善良という一見相反するものが見事に調和されて書かれていました。
ただの恋愛小説ではなく、人間の奥底にある感情を呼び戻してくれ、きちんと認識させてくれるような作品です。
大きな声で「あなたは傲慢だ」「あなたは善良だ」と言われるような衝撃ではなく、言葉が細胞に染み渡っていきじわじわと「自分は傲慢なのでは?善良なのでは?」と考えさせられる衝撃でした。
ここで心に刺さった一文を引用します。
ここから↓
現代の日本は、目に見える身分差別はもうないですけれど、一人一人が自分の価値観に重きを置きすぎていて、皆さん傲慢です。その一方で、善良に生きている人ほど、親の言いつけを守り、誰かに決めてもらうことが多すぎて、"自分がない"ということになってします。傲慢さと善良さが、矛盾なく同じ人に存在してしまう、不思議な時代なのだと思います。
↑ここまで
この一文を読んだ時に今まで謎に思っていたものがふっと腑に落ちた感覚になりました。
自分の価値が1番上にあり、なんでも自分で決めることが正しいと思っている人が多くいるなと思ってました。その一方で自分の意見はなく周りに流されていく人もたくさんいるなと思ってました。別々のタイプの人が存在しているのだと思ってましたが、この本を読んで一人の人間の中に両方とも存在しているのだと気がつく事が出来ました。
自分の中にも傲慢さと善良さは存在していることを改めて認識しました。
何かの一面だけで人は語れるものではなくたくさんの面を持つことで成り立っているのだと思いました。
自分にとって都合のいい部分しか見えていない自分に気が付かないといつまでも同じ価値観で居続けてしまうと思いました。
他者を見ることによって自分の価値観に気がつくことをしていかなければいけないと気が付きました。自分探しを自分の中にしてもそれは自分にとって都合のいい面しか探すことしか出来ないとわかりました。
自分の価値観を揺るがすような素晴らしい作品だと思います。
手に取る機会があれば一度読んでみてください。
人に薦められたものを素直に読む善良さが必要で自分では見つけられない価値観を手に入れることに繋がるのだと改めて理解できた作品でした。
貸してくれた友人には心から感謝しています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。