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Chef in Residence Project in 郡上 vol.0 ー 料理人と地域・人々の関係性のリデザイン

郡上の移住定住・起業創業プログラムである郡上カンパニー。そのプロジェクトのひとつのテーマである「ものづくり」に、我々は取り組んでいます。

「郡上に眠る資源や技術と、影響力のあるデザイナーがつながって新しいプロダクトやサービスが誕生したら面白そうだよね。」

アイデア出しの段階からそんな声は挙がっていたものの、なかなか「これ!」といった糸口を生み出せていませんでした。

そんな中、「料理も『ものづくり』と言えるのでは?」と、ものづくりの定義を広義に定め直し、今回、Chef in Residence(シェフ・イン・レジデンス)のプログラムを開始しました。

Chef in Residence(シェフ・イン・レジデンス)とは何か

代表的なレジデンシープログラムと言うと、アーティスト・イン・レジデンスという活動がもっとも有名ではないでしょうか。これは、アーティストに一定期間その土地に滞在してもらって、作品制作を行ってもらうもの。

Chef in Residenceとは、それと同様、シェフ(料理人)をデザイナーととらえ、郡上の土地に一定期間滞在してもらい、レシピ開発や商品開発、アウトプットの機会として食事会などを実施してもらう仕組みです。

なぜ郡上でChef in Residence(シェフ・イン・レジデンス)を行うのか

郡上には、保存食や発酵食品に代表される、伝統的な食文化や、四季の移り変わりを感じさせる自然資源、それらを大切にした人々の暮らしが脈々と受け継がれています。
わたしたちが郡上で暮らす中で、あまりにも身近にありすぎるそれらの文化を、なんとか途絶えさせずに継いでいきたいと感じました。

伝統的な暮らしとは別に、若手の料理人や生産者も多く、それぞれが知恵を絞りながらお客さまのもとへ「郡上の美味しいもの」を届けています。

なぜ郡上ではこんなに美味しいものを届けたい、と考える人が多いのか。

「旬の美味しい素材が身近にあって、それをただ食べてもらいたい。そう思う人が多いからやないかな」

ある作り手に聞いてみて、返ってきたそんな回答がとても印象的でした。

郡上というフィールドは、自然資源や多様な農作物はもちろんのこと、想いのある作り手や語り手が小さく点在する土地だと言えます。そういった方々の元に集い、食べて・学んで・語り合う時間を通して、共有の輪を拡げていく。人々によって大切に継がれてきた文化や慣習に、新たな視点を取り込み、未来へと継いでいく。

食の安全をうたいながらも、スーパーに行って探せばどんな食材も、いつだって手に入れることができる。大量生産、大量消費の大規模な消費システムに、わたしたちは知らず知らずの間にとりこまれ、疑問にすら思わなくなっているのではないでしょうか。

シェフは、そこで暮らす人びとが、普段の生活では見過ごしてしまうような「当たり前」の地域や資源の価値に、新たな光を照らしてくれる。これまで暗黙に存在した、食を軸にした人々と地域の関係性を、シェフは新しくデザインしてくれるのではないか、と我々は考えます。

Chef in Residence(シェフ・イン・レジデンス)の概要

滞在するシェフは、料理に関することだけにとどまらず、地域の文化や自然そのものを実際にフィールドワークで体感します。郷土料理などを地域の人たちから学び、食に関する作り手(生産者)を訪ね、地域の現状についてのリサーチを展開します。

そうして、滞在期間の終盤にはリサーチの結果としての成果発表である、レシピ開発や商品開発、食事会などを実施することを想定しています。

小川地区に広がる野草のビオトープ。自身の手で詰むシェフも楽しそうな様子

▲実際に自分の手で野草を摘むシェフの様子

今回のChef in Residenceはvol.0と銘打っています。本来であれば、地域に馴染みのないシェフを招聘し、一定期間滞在をしてもらい、地域の人との交流や学びを通して、新たな提案をするのが「レジデンシープロジェクト」の醍醐味です。

しかし、COVID-19の影響で、地域が「閉ざされた場所」になってしまった今、できることは何だろう?と考えた時に、地域の中で熱い想いを抱えながらも、まだまだ地域のことを学び、伝えたいと考えるデザイナー(シェフ)が少なからず存在します。

一度は自分の住む場所の魅力を感じられずに他の地域へ行ってしまった人々が、改めて育った地域の美しさ・豊かさに気がつき、根を張って生きたいと戻ってきています。日本のみならず、世界で修行をしたシェフによって、地域の新たな可能性を見出し、新しい関係性を築いていくことで、さらに魅力ある地域であり続け、人々を惹きつける地域になるのではないでしょうか。

今回のフィールドワークの舞台は明宝地区

今回フィールドワークを行なった明宝・気良は緑に溢れている

▲気良の里山の様子

Vol.0 今回のフィールドは郡上市明宝の気良(けら)と小川地区。

郡上を第二のふるさととして、いつでも帰ってこられる場づくりを行う、another home gujoのチームと共に、明宝・気良の民宿しもだの若女将 下田葉子さん、明宝・小川の民宿 上出屋の女将 西脇洋恵さんに案内をお願いしました。新緑の山々に囲まれた美しい里山をシェフと共に歩き、山菜の特徴や調理方法など、様々な知恵を聞きながら、アイデアを膨らませました。

はじまったばかりの試みである、Chef in Residence Project in 郡上。
vol.0のフィールドワークから食事会までのレポート、案内してくださった皆さんのインタビュー、参加してくださったシェフへのインタビューと、全三部のレポートでお届けします。



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クレジット

編集協力:小林弥生
主催・文・写真:NULL DESIGN オオツカサヨコ

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