11月10日(日) 読書記録『デーミアン』
ヘルマンヘッセの『デーミアン』を読み終えた。
『デミアン』は大学生の頃に、新潮文庫の方で読んで、当時とても好きだった本である。
詳細については忘れてしまったけど、主人公シンクレールの友人であるデミアンがとても魅力的だと思った気がする。
自分が道に迷った時に助け、導いてくれたり、お互いの思想を話し合うことができたり。こんな友人がいたら幸せだなと思ったのかな。
今回は光文社古典新訳文庫の方で読んだ。
相変わらずデミアンは魅力的だった。
なんか人の考えていることを読み取ったり、自分の思ったことを実現させたりする。例えば席替えの時、自分が移りたい席に移ることができたりする。
どうやってやるのか話してくれるけど、その理論も相手をよく観察するとか、強く願うとかそういうもので現実的でないんだけど、デミアンだからできる。みたいな完璧な存在として描かれている。
主人公がやさぐれているときにも出会って言葉をかけてくれるけど、押し付けがましくない。
そして後になって、心配していたのだよと話してくれる。なんていい友人なんだろう。
この作品の一貫しているテーマは、善と悪、光と闇のような二項が対立している世界ではなく、悪の中に善が内包されているような、今までとは違う世界で、自分の考えに従って生きていこうということである。
キリスト教が絶対とされている時代だからこそのメッセージだと思うけど、現代に通じるものもある。
道徳に当てはめすぎず、光と闇に揺らぎながら、自分自身へと辿り着いていく。そういう揺れ動きを経験しながら成長する青年期の物語。
またいつか読み返したいと思う。