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まずは四角形の面積を拡大していただいて...

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もう春ですね。と吹聴してたら寒くなってきました。この時期の洋服のマネジメントが難しすぎて毎年体調を壊しているような気がします。こんな季節のご挨拶から始まった今回のレビューは「トラペジウム」。スケジュールが上手くハマって公開初日に見に行くことが出来ました。原作者が乃木坂46の1期生の高山一実という色物な作品でしたが中身はうん、、、惜しいなって感じ。

感想

「はじめてアイドルを見たとき思ったの。人間って光るんだって。」
夢に取り憑かれた少女・東ゆう。
アイドルになるための計画を進める中で、ゆうは様々な困難にめぐり逢う。
そして東西南北の“輝く星たち”を仲間にしたゆうが、
高校生活をかけて追いかけた夢の結末とは――

「映画『トラペジウム』公式サイト」より引用

原作者がバチバチにアイドルだったこともあり作中のメンバーのセリフのリアリティが高い。アイドルが長編小説という浅はかさが出ざるを得ない状況から自分のバックボーンを落とし込んだのは逆に強みになった印象。多忙になって少しずつ壊れていく大河のセリフは確実にメンバーの誰かが言ってた言葉を引用してたんじゃねと邪推してしまうほどにリアルで見る人の心を深く抉るような鋭利さがありました。アイドルという閃光にも近い光を浴び続けるが故に生じる闇をもろに浴びる大河、華鳥、亀井とその光に目が眩まされて正気を失っていく東。必然的に4人の歯車が狂っていく展開は今後暴発することがわかっていてもソワソワさせてくれました。

今回の主人公の東は「プラダを着た悪魔」のエミリーに似ているように感じます。自己目標の実現に向けてひたむきに真っすぐに物事に取り組みますがその努力が傲慢と見栄を作り出し、周囲を見失って最終的に挫折してしまう流れはエミリーとリンクしているように感じます。その点で東は最終的に救われた結末になったのでよかったです。周囲を見るというのは簡単に聞こえますが実際にはものすごく難しいことであることを改めて感じます。

これは全体的に言える事ですが薄い。出会って、仲良くなって、アイドルとして駆け上がって、軋轢が生じて、挫折して、立ち直るを90分でやるのはさすがにきつすぎた。トラペジウムの意味は「不等辺四角形」なのですがまずは面積を増やしてくれよって話です。今回はアイドルという存在の功罪を描きたかったが故にそれまでの過程がめちゃくちゃに早い。もはやダイジェストレベル。それのせいで各キャラの掘り下げが浅く感情移入できず、そして東がアイドルに執着する理由もぼやけてしまってるので作中の東がただのマッドアイドルになってしまってるのは本当に痛恨。さらには展開の速度も速かったので予定調和感が否めない。冷静に考えて地域の東西南北の高校からそれぞれ1人ずつ集まってることってそんなに面白くないしこんなに都合よくビジュアル強めの4人が集まるのも変な感覚。

自分がアイドル畑の人間であるが故に感じる違和感としては、メンバ―全員のビジュアルが可愛い前提で進んでしまうが故に結局はアイドルはルッキズム至上と誤解されかねないことと売り出し方が古臭い。当然、アイドルにおけるルックスは重要なバロメーターであるがそれ以外にも重要なことがたくさんある。その大事なことがこの作品では伝わっていない気がしたのは非常に悔しい。売り出し方もキナ臭さ全開だった「ヘキサゴンファミリー」の風味が強すぎた。ある意味でショービジネスの胡散臭さが出てよかったのかもしれない。

結局、尺が足りてない。それ故に最後の個展も良いシーンだがそれまでの引きが弱すぎて奥行きがなさすぎた。90分の映画ではなく、各キャラの掘り下げしっかりしての1クール12話構成だったら最後のシーンはもっと感情を引き出せたように感じる。アニメ映画は映画でやる意義を完全に観てる側にわからせることが重要であるのを改めて感じる。結構様々な角度から意見しましたが差し引きはギリプラスな印象でした。

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