【書評】生物はなぜ死ぬのか
「なぜ生まれてきたのか」
「なんのために生きているのか」
その質問の答えはないし、考えるのも時間の無駄というのが私見だ。だけど、「なぜ死ぬのか」の答えの一端が書いてある本に出会った。その本の内容とレビューを書いていきたい。
内容紹介
生物の定義の1つは、自己複製できるかどうか。つまり子孫を作れるかどうか。
生命が地球に誕生する確率を表す例えは、「25メートルプールにバラバラに分解した腕時計の部品を沈め、ぐるぐるとかき混ぜていたら自然に腕時計が完成し、しかも動き出す確率に等しい」
進化が生き物を作った。生物界を牛耳る最大の法則は「進化」であり、進化とは「変化と選択」。
新しい生物が生まれる事と古い生物が死ぬことで、新しい種ができる「進化」が加速する。容赦ない生物界のリストラが進化の原動力となっている。
進化は、絶滅= 死によってもたらされたものである。死による世代交代=変化がある方が、多様性が生まれ、その種が生き残る可能性が上がる。
細胞の老化には、がんになるリスクを抑える効果がある。一方で細胞が分裂を繰り返すとゲノムに変異が蓄積し、がんになるリスクが上がる。これは生物の宿命のようなもので、人間であれば55歳を超えると、がんになるリスクは一気に上がる。つまり人間が進化によって得た本来の寿命は55歳である。
有性生殖は無限に近い組み合わせを持っている。そのため重要なのは、多様性=個性を損なわない教育。
生物にとって死とは、進化、つまり「変化」と「選択」を実現するためにある。「死ぬ」ことで生物は誕生し、進化し、生き残ってくることができた。死は生命の連続性を維持する原動力だ。生まれてきたのは偶然で利己的であるが、死んでいくのは必然で利他的なものである。
レビュー
評価:★★★
生物学者が「なぜ死ぬのか」に回答した本。新しい発見はあるが、細胞や遺伝子の説明パートはちんぷんかんぷんであり、かつ、本書で何か行動を変えることもないので★3つとした。
読んで感じたのは、多様性の大事さ。多様であるほど生き残る可能性が上がる原則だ。だが、日本の場合、教育にしても会社にしても社会にしても、多様性が認められているとは言い難い。近年、ダイバーシティがやたらと提唱されているが、多様性が欠如している裏返しだと思う。戦後のあまりにも短い成功体験に長期間囚われている弊害。
進化=変化と選択、というのは腑に落ちた。変化を拒んだ瞬間に、進化=成長は止まるのと同じだと思う。変化を嫌う高齢者は多いが生物的に見れば、現状維持は唾棄すべきものだろう。
あとがき
好奇心は満たすことができる一冊でした。
最近は脳科学や生物学の本を読む機会が多いけど、なぜなのかは自分でも分からない…。「老い」を感じているからでしょうか?
これからも好奇心のまま読書して、面白ければ紹介していきたいと思います。ではまた違う記事でお会いしましょう。