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挑戦と挫折:次世代のマネジメントチームに必要な学びと経験の価値

リーダーには学ぶ習慣が必要です。トップは特にそうです。なぜなら、トップになってみないと分からないことがあるからです。

後継人事に関するドラッカーの実践的アドバイス

The only test of performance in the top position is performance in the top position—and there is very little preparation for it.

P.F.Drucker, Managing the Non-Profit Organiztion

上記は、ドラッカーの言葉です。いくら今のポジションでのパフォーマンスが良くても、経営はやらせてみないと分かりません。そうなると、トップのポジションは一つですから、ほぼ準備できません。

座学で準備することもできるでしょう。しかし、経営者の仕事はマニュアルでできるものではありません。暗黙知がそのほとんどをしめます。したがって、経験が必要です。とはいえ、何でも良いわけではないでしょう。ドラッカーは、以下のように述べています。

In this institution, what is going to be the biggest challenge over the next few years?  Then look at the people and their performance. Match the need against proven performance.

P.F.Drucker, Managing the Non-Profit Organiztion

「これからの数年間で、もっとも大きなチャレンジは何か、その上で人とパフォーマンスを見なさい」ということです。このあたりは、経験学習の研究でも、子会社の経営再建や新規事業の開発など、本人にとって新しい経験で、かつタフな仕事がリーダーを育てるとされています。

チャレンジと成長の限界

会社も経営者も既存の事業のみを続けているだけでは、どこかで限界が来ます。その限界には二通りの意味があります。一つは、世の中が変わっていく中で、自社が変わろうとしなければ、お客さまのニーズに応えられず、衰退していくということです。もう一つは、既存の仕事に最適化した結果、成長の限界を作ってしまうということです。

前者よりも後者の方が、見逃されがちだと思います。
たとえば、会社の中で新しいチャレンジをさせようと思ったら、既存の事業で実績をあげている人がアサインされます。ここにちょっとした落とし穴があるように思います。

会社として新しいことにチャレンジするのであれば、既存の事業での実績は、必ずしも有効ではありません。もしかしたら、それまでの成功体験に囚われ、停滞してしまうかもしれません。

また、結果としてアサインされない人が生まれます。既存の事業では大きなパフォーマンスは残していない人も、新しいチャレンジの機会を与えたら、意外な強みを発揮するかもしれません。

経営者に求められる価値観の変容と内省

経験学習の研究を俯瞰してみると、経験によって「挫折」を味わうことの重要性が語られています。今までのやり方では通用しないことを知ることで、自分の幅を広げるわけです。ここでいう幅は、知識やスキルといったものよりも、仕事への価値観といった自身のアイデンティティに関わることです。

むしろ、技術的な成長よりも、この価値観の変容が特に経営者には重要な要素であるように思います。なぜなら、視座が高まって、見る視点が変化することで、既存の延長にはない、新しい事業の可能性を見出すことができるからです。経営的な視点に立つとは、そういう意味だと思います。

加えて、挫折や葛藤と向きあう内省によって、「私たちは変われるのだと」いう価値観も生まれます。そのような組織学習の視点を得ることも経営者にとって不可欠だと思います。

覚悟を持ったリーダーたちのマネジメントチームが会社を変える

後継人事は、最終的に誰かひとりをトップに選ぶことが目的になりがちですが、会社を変え続けるマネジメントチームを生み出す仕組みと捉えると良さそうです。つまり、会社の未来に覚悟を持って向き合うリーダーによるマネジメントチームをつくることを目的とするのです。そうした切磋琢磨のチームが組織全体の空気を換え、イノベーションを起こしていくのだと思います。

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