やらなきゃクビになるから仕事するの?
「その仕事って本当に大事なの?! やらなきゃクビになるわけじゃないでしょう? 家のことは、私ばかりやってるじゃない…!」
あるドラマを観てたらそんな場面に出会いました。
家庭をかえりみない仕事まっしぐらな夫に妻から向けられた言葉です。
奥様、気持ちは理解します。
しかし、言葉尻を捉えるようで恐縮ですが、クビにならないためにやる仕事なんてロクなものじゃありません。彼は、ある種の使命感に突き動かされているんです。危機感ややらされ感で仕事をしても良いパフォーマンスはでません。
…といっても、家族も大事にできないようでは、やはり続かないでしょうね。奥様が期待していることについては、彼はやらされ感を感じているわけです。もちろん奥様から見ればひどい話です。
彼自身、自己矛盾に陥っていることに気づいていないのです。
彼は、仕事を自分事として捉えていると言えるかもしれません。しかし、本来、自分事である(と奥様は考えている)はずの家のことについては、仕方なくやっている(ように奥様からは見える)わけですね。
…とはいえ、奥様は彼をクビにするわけにもいかない。だから、余計に腹が立つのだと思います。
…あれ?
これ、社長と社員も同じかもしれないですね。
経営者からの期待は、社員側からすれば受け取るものになります。誤解を恐れずにいえば、その内容がなんであれ、構造的に受け身になります。本質的に「やらされ」なのだという理解が必要なわけです。
しかし、なかなかその理解に立つのは難しい。なぜならば、経営者にとってみれば、会社の仕事はすべて自分事だからです。多くの経営者は、そんなジレンマを抱えています。
The Daily Druckerを読んでいたらこんなことが書いてありました。
「価値観が多様化する中、経済的なメリットだけでは、組織は崩れてしまう」のように解釈しました。また、以下のようにも書かれています。
「伝統的な組織は権威で成りたつが、情報社会においては、組織成員の責任が求められる」といったところでしょうか。
図にすると、こんな感じです。
左側が伝統的な組織で、右側がいま求められている組織です。The Daily Druckerでは「Hierarchy Versus Responsibility」と表現されていました。
どちらの図にも「理念・ビジョン」「戦略」とあるのが分かるでしょうか。組織には、そうした「考え」が必要です。進むべき方向がぶれるからですね。これは、どちらの場合でもトップから与えられています。つまり「構造的にやらされである」とはこのことです。
違いは、ドラッカーがいうように「Hierarchy(権威)」ではなく「Responsibility(責任)」です。あえて Responsibility と英語にしているのは、そのニュアンスが大切だからです。
Responsibilityは、レスポンス(応答)のアビリティー(能力)です。自ら自律的に答えたい、変わりたい、できるようにしたい! そんな前向きなニュアンスです。
理念や戦略を与えることで、「やりたい」「できる」と思っていただくようにしなくてはなりません。自分たちにとってワクワクするし、できる方法を一緒に考える仲間がいたり、ときに「権威」ある人から、サポートがあることが大切なのです。
気をつけないとならないのは、「お金がもらえる」とか「やらないとクビになる」という社会通念が根強いということです。冒頭の奥様の言葉からも分かると思います。そして、それが構造的に想起されてしまうのだということも、トップに立つ人は留意すべきでしょう。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?