炒り豆腐か、炒り卵か
子どもの頃は、豆腐料理全般が好きではなかった。
中でも炒り豆腐は苦手で、いつも泣き泣き食べていた。
(母は好き嫌いを許さなかったので)
大人になって苦手を克服し、今では豆腐は常備していて、主菜として副菜として、頻繁に食卓に上る。
苦手だった炒り豆腐も、お手軽なおかずとして、もう一品欲しいときに重宝する。
有吉佐和子の『青い壺』の第十話に、学校給食を受け持つ若い栄養士の女性が登場する。
子どもたちに好き嫌いを何とか克服させようと腐心する。
豆腐嫌いの子が多い中で、炒り卵(掻き卵)に豆腐を混ぜる工夫をする。
好物に嫌いなものを少しずつ混ぜる、祖母の言葉がヒントになった。
わたしも早速真似してみた。
自己流で豆腐入り炒り卵を作ってみた。
まず豆腐をごま油で充分炒ってから卵を加えた。
冷蔵庫のしいたけ、カニカマ、万能ねぎも加え、具沢山の炒り卵になった。
普段作っている炒り豆腐も最後に卵を加えて仕上げる。
卵でとじた炒り豆腐と
豆腐入り炒り卵。
素材は同じ。
卵と豆腐の比率が逆転しただけだ。
この人の煎り豆腐(本文の表記)のレシピは超シンプル。
豆腐は水切りもせず、濡らした鍋に投入し、菜箸2膳(4本)でひらすらかき混ぜ、水分を飛ばす。
最後に卵を落とし、味付けし、仕上げにごま油をタラリと垂らす。
ネギを入れてもよい。
(『小林カツ代のお料理入門 ひと工夫編 』p.82 より)
料理研究家の小林カツ代さんのこの本は、レシピとエッセイを足して二で割ったような内容。
わたしの愛読書だ。
小林カツ代さん
庶民的で気取らない家庭料理が得意な、明るい方でした。