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去年の2月は

2021年2月
ある日曜日のこと。

金曜日の夜から5歳の孫が泊まりに来ていた。
近くのマンションに住んでいたが、
母親は9月に生まれた赤ん坊の世話で忙しく、父親(わたしの息子)は一足先に転勤先に単身赴任していた。

コロナのせいで、孫は幼稚園から帰っても遊ぶ友達もいないので、しょっちゅううちに遊びに来ていた。
週末はいつも泊まっていった。

その日の朝、わたしの父と母が暮らす
広島のケアホームから電話があった。

早朝、末期癌の父の容体が急変したが、少し落ち着いたという知らせだった。

父に関してはいつ何があってもおかしくないと覚悟はしていたが、
すぐに行くべきなのか、わからなかった。危篤ではなかった。

あと5日で、2人の孫とお嫁さんは
息子の赴任先に引っ越す予定だ。
正直、引っ越しの手伝いをしてから広島に帰りたかった。
でも、やはり今日行くべきなのだと直感的に思った。

取り敢えず、昼食の親子丼を孫に食べさせようと、電話を切ってから支度を始めた。


お昼前にケータイが鳴った。

 11時〇〇分
 お父様が永眠されました。

顔見知りの看護師さんからだった。

これから行くつもりだったんです!

何度も看護師さんに言った。

5歳の孫は、ばぁばが突然大泣きしたのを見て、訳もわからず、ものすごく動揺したと思う。

わたしはとにかく親子丼をと思って、孫に食べさせた。

歩いて10分の距離だったが、
車に乗せて、お嫁さんのいるマンションに送り届けた。

ごめんね、引っ越しの手伝いしようと思ってたのにね、と言うと

お嫁さんは泣きながら
お義母さんすみません、すみません
と繰り返した。

わたしは家に戻って
予めまとめておいた喪服などの荷物を
カバンに詰めて、夫の運転する車で新幹線の駅に向かった。