Kくんの思い出
曖昧な記憶ですが、確か小5の家庭科の授業で、枕カバーを縫い、刺繍をするという課題がありました。
ミシンの直線縫い自体は難しくはなかったのですが、刺繍のデザインは各自、自由でした。
わたしは家にあったフランス刺繍の本から簡単な図案を選びました。
遠くに山が連なり、手前にお花畑、そこで帽子を被った小犬が遊んでいるというもの。
隣の席のKくんは、五分刈りで強面、喧嘩っ早いタイプでしたが、刺繍の図案をどうするか、頭を悩ませていたようです。
悩んだ末にわたしの図案からヒントを得て、こんなオリジナルデザインを考えました。
そのKくんが、50代で帰らぬ人となりました。
母が偶然Kくんの家の前を通りかかり、葬儀が営まれているのを知りました。
母親と妻、女子大生の娘さんを残して、早すぎる旅立ちでした。
枕カバーのエピソードは、奥さんも娘さんも知らないと思います。