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特権

夫が定年退職して、昼食を2人で食べるようになった。
お蔭でわたしの生活は一変した。
夫は、週に2回ぐらいは出掛てひとりで好きなものを食べて来る。
一緒に外食もする。
それなりに気を使ってくれているのはわかる。

夫が現役時代には、昼食のためにわざわざ何かを作ろうという気は一切なく、納豆や玉子かけご飯が多かった。
あとは前日の残り物、子どもたちのお弁当のおかずの残りを温めて食べたり、スーパーでお惣菜(揚げたてのコロッケとか)を買うこともあった。

鍋を使うのは、麺類ぐらいで、おかずはレンジで温め直す。
ひとりの昼食には大して重きを置いていなかった。

夫が勤めていたときは、朝7時台に出勤すると、帰宅するのは深夜。
帰りは歩いて帰るが、朝は体力温存のために車で駅まで送っていた。
終電のときは車でお迎え。

夫に頑張って働いてもらうために全面協力していたけれど、見方を変えれば、夫がいない間はフリータイムで、気ままに過ごしていたともいえる。

一つ屋根の下で暮らしながら、現役時代はこんなに長時間夫と過ごすことはなかった。

夫在宅ストレス症候群とはこのことかと思った。

ご近所には、犬の散歩やスーパーに仲良くお出掛けされる御夫婦もいるが、我が家は昔から別行動が多い。

四六時中一緒なんて、とんでもない!

日中も別室で過ごす時間が長い。
家庭内別居といっても過言ではないが、こうすることで心地よい共同生活を維持することができる。

三度三度食事を作っていると、たった二人分でもストレスが溜まる。
夫は毎月料理テキストを購読しているくせに、今はほとんど作る日はない。
気まぐれに作ったとしてもせいぜい月1回程度。

わたしが食事の支度をしているときにソファに長々と寝そべっているのを見ると、時に、腸が煮えくり返りそうになる。

退職後は、金曜日の夜はそれぞれ好きなものを食べることにしようと宣言したはずなのに、毎週忘れている。

今日こそは…と思う。

わたしは袋麺でいいか…

だがしかし…

夫がいることで、きちんと食事を作らなければ…というモチベーションになる。

いつも手抜きばかりだと栄養失調になる。
食事作りは自分のためでもある。
その上、その日の気分次第で自分の食べたいものを作ることができる。 
有無を言わせず。

これは作る人の特権でもある。