⑫コンポスト ~アパートの庭エディブルガーデン化プロジェクト~
生ゴミを自然に還してゴミの総量を劇的に減らせる上、庭があれば土を豊かにもできる。
ほぼメリットしか思いつかない上ちゃんと管理すれば虫や匂いも問題にならず、慣れれば手間にも感じないので、今や暮らしづくりに欠かせないコンポスト。
庭の奥の2つの穴は、埋めるタイプのコンポストにしようと序盤に掘ったものだった(万が一虫や匂いが発生したときに備え、居住空間とお隣さんから一番離れた場所に掘った)。
さっそく実験的に運用を始めていたけれど、大雨が降った日にわかったことが。
「水が抜けない・・・」
多少の雨では気にならなかったものの、線状降水帯が発生して滝のような雨が降った翌朝に穴を観てみたら、見事に水が溜まってた。
ここまで水が抜けないとコンポストとしての運用は厳しいので、プランBへ移行!
雨が当たらない場所を選んで、段ボールコンポストを作ることにした。
というわけで、今日はちょっと長いコンポストのお話。
段ボールコンポストのつくりかた
段ボールコンポストの作り方にも色々ありますが、今回採用した材料はこんな感じ。
容器づくり
段ボールの底抜け防止のため、別の段ボールで二重底にする(朝刊1日分の新聞紙を敷くのもアリ)
段ボールの底抜け防止のため、別の段ボールで二重底にする(朝刊1日分の新聞紙を敷くのもアリ)
虫の侵入を防ぐ意味でも底面をしっかりテープでとめる。
中身の通気性を保ちつつ、上からの虫の侵入を防ぎたいので、蓋にはTシャツの首と袖を縛って被せるのが今のところ自分的ベストアンサー。
何でもいいのでコンポスト底面と地面の間の通気性を保てるものを敷いて、その上にコンポストを乗せて完成!
元々庭にあって通気性も確保できそうだったので今回はプラの人工芝を使いましたが、他にレンガだったり、100均の猫除け(黒いツンツンしてるやつ)、すのこなど何でもいいと思います。
あるもの何でも利用しましょう~。
可能であれば、自然に還るものがオススメ。
中身づくり
段ボールコンポストを作るには、シンプルにホームセンターで売ってる「ピートモス」と「籾殻くん炭」のふたつを混ぜるだけでもOK。
世田谷の大蔵コミュニティに居たときに皆で作ったコンポストはこの材料で、複数家庭分の生ゴミを入れてましたが問題なく分解されました。
ピートモスというのは、長い年月をかけて苔や水草が堆積して出来るもので、保水性が高かったり酸性であることを利用して主に土壌改良に使われます。この場合にアルカリ性の炭を混ぜるのには、ピートモスの酸性を中和する意味合いも。
今回ピートモスでなく木屑を使うことにした理由は、無料で手に入るということに加えてもうひとつ。
数千年~数万年かけて出来るピートモスを大量に消費するのも、長い目で見ると持続可能な方法じゃないことを、神戸三宮でパーマカルチャー活動をされている「百庭」の安川さんに以前教えてもらって納得したからでした。
この木屑をベースに、微生物のエサになる窒素分が多い米ぬか、微生物の住処になり庭の土の酸性度合い(酸性雨の影響できっと酸性寄り)を和らげてくれる燻炭、元々この場所に住む微生物に参加してもらう意味合いで庭の土や有機物の落ち葉を混ぜて中身は出来上がり。
容器づくり含め、作り始めて15分くらいでできちゃいました。
段ボールコンポストの運用の仕方
基本的には毎日出る生ゴミを埋めていけばいいんですが、以下のものは入れないようにしています。
分解しにくい玉ねぎの皮 → 作り立てで微生物たちはまだ大人しいだろうし気温的にもまだ分解能力が低いと思うので。
肉や骨など動物性の残渣 → 分解能力の懸念に加え、匂いと虫の発生を助長するかなと思うので念のため。
分解能力の高いコンポストだと、本当に有機物なら何を入れても大丈夫というのも見たことがあります。
が、少なくとも駆け出しのうちは上記のものは入れないようにしつつ、入れるものも大きいのは刻んで(500円玉より小さくすればOKと言われますが、僕はもうちょっと細かくしてます)
あとは残渣を入れるときに全体にスコップを刺して空気を入れる(微生物の活性化のため)ぐらい。
置く場所は雨がかからないところに。
前回入れた場所を忘れないようにスコップを刺しておくのがコツです。
そしていっぱいになったら、最後に入れた生ゴミが堆肥化するまで1カ月ほど放置。
なので、2基作っておいて交互に運用していくのが吉。
様々なコンポスト
段ボールコンポストの作り方だけでも色んな方法が開発されていると思いますが、家庭で使えるコンポスト自体にも様々なものがあります。
キエーロ
木枠と透明の波板でできた、太陽光と黒土のバクテリアの力で生ごみを分解・消滅させるもの。
堆肥が大量にできるわけではないので、堆肥の使い道がない場合にオススメ。
底がある普通タイプと直置きタイプがあり、2024年5月現在、定価は3~4万円程度。
以前広島県甲奴町で暮らしたPeace Culture Villageでも使われていました。
家庭用のもっと小型のものもあります。
ワイヤーネットコンポスト
廃材としても出る大型のワイヤーネットはけっこう万能。
つる植物を這わせる頑丈なネットとしても使えるけど、これを丸めて筒型にして(ちょっと力要る)地面に刺せば、これだけで通気性抜群なコンポストシステムに。
パーマカルチャーガーデンではキーホールガーデンの真ん中にしつらえてあるのをよく見かける(もちろん普通の畝でもOK)。
上から落ち葉や刈り草、生ゴミをどんどん入れていくと、時間の経過とともに微生物にとって住み心地が良くなる下の方から分解されていき、堆肥化されて下にある畝も自動的に良くなっていく。
これもある種の高度プランニング(『⑪水の確保』参照)だと思う。
上手くいけば生ゴミに混ざった種が自然に発芽して横から野菜が生えてくるし、カボチャなどは筒状のネットにぐるぐる巻きついて上へ伸びていくと見た目もかっこいい。
空間を立体的に、有効に使えるので空間デザインとしても優秀で、Space-Stackingの実践にもなるという優れもの。
(写真はパーマカルチャー関西のワークショップで作成したもの)
この庭のキーホールガーデンは小さいので一旦は段ボールコンポストにしましたが、いっぱいになったら2つ目はワイヤーネットにするのもいいかなと思っています。
ミミズコンポスト
中でたくさんのミミズを飼って生ごみを食べてもらい、消化してもらうことで土が豊かになっていくコンポスト。
微生物よりも体がずっと大きいミミズを活用するので、堆肥化のスピードがとても速いのが特徴。一方、温度や湿度、エサとなる生ごみの量などミミズが衰弱しないような環境づくりが必要なことが大変なポイント。
でも、手をかけてペットとしてミミズたちを飼っている感覚になるので単純に「かわいい」のもメリットだとか。
鎌倉の関係案内所「はつひので」では、コミュニティづくりにも紐づけたミミズコンポストプロジェクトをやっていて、せいろを上手く使って運用されていました。
LFCコンポスト
東京ではカフェやオフィスなど至る所で見かけるようになった、オシャレなバッグ型のコンポスト。
家庭で使う分には十分な大容量で、コンポストの専門家によりしっかりデザインされていて分解能力もお墨付き。
専用バッグは再利用が可能で、いっぱいになるタイミングで新しい基材(中身)を定期便で送ってくれる。
様々なアイデアと共に企業や行政ともコラボレーションされていて、今コンポスト界で最も勢いのある方々がよりゴミの少ない、リジェネラティブな未来に向けて取り組まれています。
堆肥の使う庭がない方向けの堆肥回収拠点やイベントも全国であります。
先日見学させていただいた渋谷川沿いの回収ボックスでは、渋谷のど真ん中で回収した堆肥を活用したルッコラガーデンを運営されていて、その様がインスタ映えすると若者の間でバズったとか。
すごい。
太陽熱利用型木製コンポスト<HIPPO>
パーマカルチャーデザイナーのウエノチシンさんが開発・デザインした、高機能なコンポスト。
誰でも作りやすいように、そしてパーマカルチャー的にも機能性が最大化されるように考え抜かれた一品です。
岡山のパーマカルチャーセンター上籾(PAMIMOMI)でご一緒して知ったコンポストで、ワークショップを受けて講座内で製作することでゲットできます。
自然な農業や種の権利の文脈で有名な岡本よりたかさんもオススメのコンポストで、10,000台を目指して頑張られているので検索してぜひ参加してみてください。
電動式乾燥型生ゴミ処理機
温風で生ごみを乾燥処理して体積を1/7に減らせる機械。
人体と同じく野菜の構成要素の大部分は水分なのでこれだけでも劇的に小さく軽くなるし、腐敗やカビの発生も防げる。
価格帯はピンキリで2~10万円程度とのこと。パナソニックなどが出しています。
電動式バイオ消滅型
バイオ材の補充が必要ですが、微生物の力で生ゴミが水と二酸化炭素に分解されて消滅していく優れものらしい。
価格帯は9~13万円程度とのこと。
その他コンポスト
他にもバケツで密閉して液肥を取り出せるものなど色々ありますが、密閉する嫌気性タイプだと強い匂いが発生しがちなので、家庭では好気性タイプがオススメと思います。
自治体の補助
またコンポストの購入を推奨・補助する自治体も多くあり、申請すれば格安で購入できることも。
例えば鎌倉市では、電動型については一台まで75%の助成、非電動型コンポストについては二台まで90%の助成金が出る制度があります(上限助成額3万円)。
90%ってもうやらない手はない!(主観)
東京で見たスゴいコンポストの運用と活用法
先月、日本有数の金融街、東京は茅場町のど真ん中のビルの屋上で運営されているエディブルガーデン『Edible Kayabaen』に行ってきました。
僕も受けたPDC (Permaculture Design Couse) の講師の一人、Phil Cashmanが中心となって運営されているホットな場所。
そこで見せてもらった巨大なコンポストは、そのビルのカフェと企業オフィスで出る大量のコーヒーかすとシュレッダーゴミを引き受けて、ガーデンで出る野菜の残渣と一緒に投入するだけで超絶パワフルなコンポストを実現していました。
触れずとも、蓋を開けるだけで微生物が有機物を分解する際に発する発酵熱が伝わって来てモワっと温かい。
中の方は60℃~70℃あるらしい(ちょっとうろ覚え)ので、手を突っ込むと温かいどころか軽く火傷しそう。
もちろんガスや電気などのエネルギーは一切使わず、継続的にその熱を出し続けているシステムのすごさに圧倒されました。
すごすぎ。
こんなふうに、優秀なコンポストシステムで生まれる熱エネルギーは想像以上に大きく、この熱を利用してお風呂をわかすことも可能!
千葉にあるパーマカルチャー安房(PAWA)で、実際に発酵熱でお風呂を沸かすシステムの堆肥の入れ替え作業をさせてもらった様子の写真を載せますね。
これもすごすぎ。
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いつかEdible KayabaenやPAWAみたいな規模と循環性のあるコンポストシステムの運用(運営)もやりたいけど、
まずは小さい暮らしレベルのトライアンドエラーから。
8月初旬から夫婦でCamino de Santiago巡礼の旅に出ています。出費はできる限り少なくしている旅なので、サポートは有り難く旅の資金にさせていただきます。ですが、読んでくださったり反応をいただけるだけで、一緒に旅している気分になって十分エネルギーをいただいています。^^