見出し画像

映画で深める学び:『12人の怒れる男』で読み解く『感情的知能指数(EQ)』

はじめに

日々の生活や仕事の中で、意見が対立したり、感情が高ぶることはよくあります。そういった場面で役立つとされているのが「感情的知能指数(EQ)」です。でも、どうしてEQが注目されているのでしょうか?

その理由の一つとして、脳の仕組みが関係していると考えられています。たとえば、**「情動にハイジャックされる脳」**という現象があります。人の脳には「扁桃体」という部分があり、強い感情が起こると理性的な思考を奪い、感情的な反応を引き起こすことがあるそうです。この扁桃体は「好き・嫌い」「安心・不安」といった感情をすばやく判断し、理性を超えて行動を支配することがあるそうです。

これは生存本能として必要なことですが、現代のビジネス環境では逆効果になることも考えられます。

たとえば、会議中に感情的になって相手を非難してしまうと、相手が心を閉ざしてしまうかもしれません。反対に、冷静に対応できる人は信頼を集め、リーダーとしての評価も高まるのではないでしょうか。こう考えると、EQが注目されるのは、理性的な判断と信頼関係を保つために感情のコントロールが大事だからかもしれません。

このEQの重要性を理解するには、映画『12人の怒れる男』が参考になるかもしれません。この映画では、12人の陪審員が感情的な対立を乗り越え、冷静な議論を通じて結論を導き出す様子が描かれています。この記事では、この映画を通じてEQの4つの能力について考え、ビジネスシーンでどう活用できるかを探ってみたいと思います。



EQとは何か?

**EQ(Emotional Intelligence Quotient)**とは、自分と他者の感情を理解し、効果的に対応する能力です。EQは次の4つの能力で構成されています。

感情の識別: 自分と他者の感情を認識し、識別する能力。
感情の利用: 適切な感情を作り出し、問題解決や目標達成に活用する能力。
感情の理解: 感情の原因を分析し、その変化を予測する能力。
感情の調整: 感情を調整し、適切な行動へと導く能力。

EQについては、以下の記事の内容を参考にしています。詳しくはリンクからご覧ください。

映画のシーンで学ぶEQの4つの能力

『12人の怒れる男』では、陪審員たちが感情と理性の間で揺れ動きながら、冷静な判断を導いていく様子が描かれています。それぞれのシーンを通して、EQの4つの能力について考えてみましょう。

1. 感情の識別:陪審員8番の冷静な判断

映画の冒頭、陪審員たちは少年が有罪か無罪かを票決します。ほとんどの陪審員が「有罪」と答える中、陪審員8番(ヘンリー・フォンダ演)はただ一人「無罪」を主張します。「合理的な疑い」が残る限り、議論を続けるべきだと考えているようです。

8番は、他の陪審員たちの「感情的な反応」や「偏見」を識別しているのかもしれません。たとえば、ある陪審員が「彼のような奴はどうせ悪いことをする」と偏見に基づいた発言をする一方で、別の陪審員は怒りをあらわにして意見を述べます。8番は、こうした発言や態度から、彼らの判断が冷静な事実の検証に基づいていないことを察しているのではないでしょうか。これが、他者の感情を識別する力の一例と言えるかもしれません。

2. 感情の利用:ナイフの証拠を巡るシーン

ある陪審員が「こんな珍しいナイフは見たことがない。だから少年が犯人だ」と主張します。8番は、この主張が感情的な偏見に基づいていると考え、「では、これと同じナイフを見つけたらどうですか?」と言いながら、同じナイフを取り出してみせます。これにより、陪審員たちは驚きと疑念を抱き、議論の方向が変わるきっかけが生まれました。

この行動は、感情をうまく利用する例かもしれません。8番は、驚きという感情を引き出すことで、偏見に基づいた議論を中断させ、新たな視点から事実を再検証する機会を作り出したように見えます。感情的な対立を避けつつ、問題解決に必要な視点を提供する方法の一つと考えられます。

3. 感情の理解:偏見を認識しながら理性的に対応する

陪審員8番は、他の陪審員たちがそれぞれの個人的な偏見や経験に基づいて意見を述べていることを理解しているようです。特に陪審員3番は、自分の息子との葛藤を少年に投影し、「彼はきっと有罪だ」と感情的に強調しています。

8番は、3番の感情的な背景に対して直接的な対立を避け、冷静な態度を保ちながら議論を進めています。このような姿勢は、偏見を認識しつつ、感情的な反応を抑えながら理性的に対応する方法の一つかもしれません。偏見や個人的な感情に流されず、事実に基づいた対話を心がけることが、重要なアプローチとなる場合もあります。

4. 感情の調整:感情の爆発とその対処

終盤で、陪審員10番が強い偏見に基づいて感情的に爆発します。ほかの陪審員たちは無言で席を立ち、彼から距離を置きます。8番もまた、10番に直接反論せず、彼が感情を発散し終わるのを待ちます。その後、冷静に「偏見は私たちの判断を曇らせる」と話し、事実に基づいた議論に戻します。

この対応は、感情を調整することの大切さを感じさせるシーンかもしれません。感情的な対立を避け、冷静な対話を維持するための一つのアプローチと言えるでしょう。彼の行動は、理性的な判断と冷静さを保つために感情をコントロールする力を示しているように思えます。

まとめ:陪審員8番に学ぶリーダーシップとEQの実践

陪審員8番の行動は、EQの高い人の特徴を表しているように見えます。彼は冷静で粘り強く、他者の意見に耳を傾けつつ、感情をコントロールしながら議論をリードしています。ビジネスにおけるリーダーとして、このようなEQの高い行動から学べることは多いのではないでしょうか。

映画『12人の怒れる男』を通じて、EQを高めるための具体的なアプローチを考えることができます。これを日常生活や職場で試すことで、感情をうまくコントロールし、理性的な判断を下す力を養えるかもしれません。より良いコミュニケーションとリーダーシップの実現に向けて、参考になれば嬉しいです。

おまけ:EQを高めるためのシンプルな方法

最後に、EQを高めるためのシンプルな実践方法をいくつかご紹介します。これらを日常に取り入れてみることで、感情のコントロールと他者との良好な関係構築に役立つかもしれません。

  1. 感情を意識する「感情チェックイン」を行う:
    1日の中で感情が揺れた瞬間を3つだけ振り返ってみましょう。なぜそれが起こったのかを軽く考えるだけで、自己認識が高まり、次に同じ状況に遭遇したときに冷静に対応できるようになるかもしれません。

  2. 「一度言葉にしてから発言」する習慣を持つ:
    感情的になりそうな時は、一度頭の中で自分の考えを整理してから発言してみてください。「今の状況で本当に伝えたいことは何だろう?」と自問することで、冷静な対応がしやすくなることもあります。

  3. 「リフレームする力」をつける:
    感情的に反応しそうな場面で、「相手の立場ならどう感じるだろう?」と視点を変えて考えてみる習慣を持つと良いかもしれません。これにより、感情的な衝突を避け、より建設的な議論ができるようになる可能性があります。

  4. 感情を落ち着ける「数を数える」:
    感情が高ぶったときは、深呼吸して5つ数えるだけで、気持ちを落ち着けることができるかもしれません。これにより、感情に支配されることなく、理性的な対応ができるようになるでしょう。

この記事では、映画『12人の怒れる男』に描かれたEQの実践例と、いくつかのシンプルな方法を紹介しました。これらの考え方や方法が、ビジネスや日常生活で感情をコントロールし、コミュニケーションやリーダーシップをより良くするための一助になれば幸いです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?