挑戦に喝采を。ローカルベンチャーの祭典開催【12/23 LOCAL VENTURE SUMMIT in NIIGATAレポート】
12月23日(土)地域密着型ベンチャーの祭典・LOCAL VENTURE SUMMIT in NIIGATAを開催しました。
本イベントは、Inquiry合同会社の新規事業として8月よりスタートしたローカルベンチャーシップの成果発表会であり、次なる挑戦者を生むための場として企画したイベントです。
ローカルベンチャーシップSeason0の振り返りも兼ねて、イベント当日の様子をレポートします。
はじめに:ローカルベンチャーシップとは?
自社の経営課題を題材にした実験的プロジェクトをつくり、外部人材とタッグを組んで3か月間協力をして挑戦する大人のためのPBL(プロジェクトベースドラーニング、問題解決型学習)プログラムです。
本プログラムは、地域に密着した生業や地域になくてはならない地域企業の経営者・リーダーを対象に、ベンチャー企業で求められるスキルとマインドを実践を通じて身につけ、変化と成長を志し挑戦を続ける地域企業(ローカルベンチャー)への変容をめざす実務直結型の学びが特徴です。
受講の対象となる「経営者」は、一般的にいわれる株式会社の代表取締役社長だけでなく広義に定義しています。
取締役、副社長、CxO、会長、代表理事といった一般的な企業の経営層に加え、園長や館長、工場長、塾長、店舗オーナー、女将…など肩書ではなく組織や団体の意思決定に関与できる立場の方を対象にしています。トライアル開催であるSeason0では新潟市内に事業所がある方を限定に募集しました。
挑戦の伴走者・ベンチャーバディ
経営者・リーダーのチャレンジに3か月間伴走するのが、「ベンチャーバディ」です。
ベンチャーバディは経営者の右腕ともいえる対等な立場の存在。普段と違う状況の下、経営者と協力しプロジェクトに取り組むことで生じる刺激や葛藤、これまでになかった視点を得ることを学びとして捉える「越境学習」がプログラムのポイントでもあります。
本事業の実施経緯・背景については以下の noteもご覧ください。
●イントロダクション「ローカルベンチャーシップが出来るまで」
はじめに主催者である山本よりイベントの趣旨とグランドルール、実施に至った経緯、ローカルベンチャーシップの概要について紹介を行いました。
事業実施の目的は挑戦を起点に変化・成長が自然に生まれていく学びの生態系を創り出すことであることをお話しました。
実現手段として企画したローカルベンチャーシップの特徴は、経営者とベンチャーバディという従来のインターンとは異なる対等な関係を構築し、コーディネーターが伴走すること。
また、双方に答えを持っていない新たなプロジェクトに協働して挑戦することで生まれる葛藤・迷いの経験を越境学習やアンラーンに活かそうとするのがねらいでもあります。
4チームのプロジェクトは以下のスケジュールで活動してきました。
●1部ローカルベンチャーシップ中間成果発表 ※動画あり
いよいよ、4チームの3か月の成果の発表です。各チームのプロジェクト概要は以下の通りです。発表の詳細はぜひ動画をご覧ください。
テーブルゲームを使った研修事業を新たに創り、「遊び」から生まれる「学び」を大人にも
ザツダンは次の10年へ...「みんなの言葉を進化させるプロジェクト」で、コピーライターの枠を超えた事業を具現化したい!
整体師同士の繋がりと学び合いを生み出す「整体塾」を立ち上げたい!
正社員とフリーランスの中間とは?地域の働き方をアップデートする「複業社員制度」を創設したい!
1部ローカルベンチャーシップSeason0中間成果発表発会(動画)
メモを取りながら聞く参加者も多く、真剣に耳を傾けてながらも笑いあり・涙あり・拍手ありの時間でした。
発表の合間には参加者同士の交流も兼ねて、意見交換・対話タイムも挟みながら進行。積極的に質問が飛び交いました。
●2部挑戦の連鎖を生む繋がりワークショップ
4チームの熱量高い発表を終えたあとは、全員が参加し挑戦の連鎖を生む繋がりワークショップです。
果敢に挑戦し成果を残したローカルベンチャーの姿に参加者の皆さんも”やってみよう”という気持ちも高まった様子…
参加者はプレイヤー(黄)とサポーター(白)を選び、紙に自分の2024年チャレンジまたはサポートできることを書き出します。
プレイヤーは30秒ピッチで2024年に挑戦したいことについて会場に投げかけ、お互いの紙を見ながらプレーヤー×プレーヤー、プレーヤー×サポーターでグループをつくりました。
古民家を利用したビジネス、安心する居場所づくり、とにかく新潟ではじめる等...思い思いのチャレンジが語られ、経験豊富な参加者から具体的なアドバイスがなされていました。
この場で大事にしたい価値観「挑戦に喝采を送ろう」「尊敬と感謝を忘れない」も体現され、活発な意見交換に背中を押されたプレイヤーもいたようです。
ワーク終了後、ピッチをしたプレイヤー数名からグループワークから得られた気づきや学びを共有してもらいました。
2024年、具体的なアクションへと繋がることを願っています!
●クロージングセッション
4時間半に渡るイベントもいよいよフィナーレ。発表者、観覧者、事務局より一日の感想、浮かんできた思い、メッセージなどを語ってもらいました。
などなど...一人ひとりの思いが交錯し、今後へと繋がるメッセージが語られました。今だからこそ語れる本音もお聞きでき、感慨深い時間でした。
皆さんとエネルギー溢れる場をつくることができ、ファシリテーターとしても幸せな時間を過ごすことができました。参加者の皆さん、最後までお付き合いいただきありがとうございました!
●ローカルベンチャーシップの考察(振り返り)
今回トライアル開催となったローカルベンチャーシップSeason0を振り返り、今回の事業がどのような意義や価値があったのかを考察してみたいと思います。よろしければ発表会動画の視聴を踏まえお付き合いください。
①大人も失敗が許容される環境下でのストレッチ経験
企業にとって顧客から対価をいただき価値提供しているサービスにおいての失敗は死活問題です。社内においてもある程度キャリアを積んでくると葛藤している様子を後輩・若手に見せるのは難しくなることもあると思います。
そのためお客様に失敗するかもしれない前提でサービス提供することはハードルが高く、従来の業務委託や副業兼業など仕事を協働して進めていく関係においても、依頼する外部人材に対して相応の対応が求められるはず。
ローカルベンチャーシップで扱ったプロジェクトは通常業務とは別に行うものであったこと。また、経営者・リーダーも明確な答えをもっていないため、手探りでスタートしていくこととなり、途中の計画変更はもちろんスタート時から失敗も織り込み済み。むしろその実践や葛藤が学びであることをプログラムのコンセプトに置いていました。
これはバディとして参画した学生・若手社会人にとっても同様であり、互いにそれを理解した間柄であるからこそ、ある種「失敗を見せあってもよい安心感」のようなものがあったのではないでしょうか。
異質な他者とのコミュニケーション、見切り発車での新規事業/サービスの開発、上手くいく見込みのないプランの実行。時に石橋を叩かずに思い切って渡るような体験が人によっては箍(たが)を外すきっかけとなったのではないかと思います。
これは、学生のために大人として学びの機会を提供するインターンでは恐らくこうはいかないでしょう。
ローカルベンチャーシップは社会的な立場がある人、普段表立って失敗ができない人、云十年の経験を持つベテランと呼ばれる人ほど、アンラーンの効果があり得られるものが大きいかもしれません。
②インターン以上社員未満のバディがもたらす影響
バディとして参加してくれた方からいただいたアンケートのコメントをご紹介します。
一見すると従来の実践型インターンに類似した取り組みですが、発表を見ていただいても分かる通り、その実は全く違うものであったことが伺えます。
インターンとして用意された課題に取り組むのではなく、企業のリアルな課題を一定の責任とリスクを負って同じ目線で取り組むという体験は、唯一無二ともいえるでしょう。これが彼らの高いコミットメントに繋がっていたと考えられますし、3か月とは思えない深い信頼関係もその副産物といえます。
時間的には社員ほど費やしてはいませんが、場合によっては取り組むテーマは社員であっても難しいものであったかもしれませんし、むしろ限られた時間で時に苦手なこともしなければならないという状況は、社会人が一皮剥けた体験と評するタフアサインメントになったと考えます。
経営者・リーダーにとってもローカルベンチャーシップは普段の業務の傍らプロジェクトに取り組むことになるので、時間的精神的余裕がなくなることもあり得ます。
一人の挑戦であれば周囲の目もないため後回しにしたり、途中で投げ出すこともあると思いますが、時に自分のプロジェクトを自分以上のモチベーションでやってくれるバディの姿を見せられることで、火が付いた場面もあったように感じます。
(横田さんも、発表の場で常にお尻に火がついていたと語って下さいました)
バディを対象にコーディネーターがフォローアップも兼ねて毎月合同でメンタリングをしていましたが、彼らの主体的な意識と行動を支えることが結果としてプロジェクトの成果創出に繋がったといっても過言ではないでしょう。
絶妙に続けることができる3か月という期間限定の限界突破が経営者・リーダーのマインドを揺さぶり、挑戦体質がつくられるきっかけとなったのかもしれません。どなたかがこの3か月の体験をラ●ザップと称していましたが、言い得て妙ですね。
手前味噌ですが、我々コーディネーターがプロジェクトの足りないピースを埋め、両者の支えとなった部分もあったと思います。
③挑戦する組織文化の醸成
こちらはザツダンの社員・鵜野さんからいただいたコメントです。
企業の支援をしていると社員が挑戦しない、失敗を恐れて行動しない等といった声を聞くことがあります。
この要因を一概には言えませんが、挑戦を回避する組織文化を変えるための一つの鍵として、代表者や管理職自身が挑戦し、失敗から学ぼうとしている姿を見せるということが効果的かもしれません。率先垂範、背中で語る。口だけではなく、やはり行動が一番説得力があります。
ローカルベンチャーシップの着想を得た復興庁の復興創生インターンでも、受け入れ先となる企業の経営者が挑戦し、情熱をもって動いている姿に影響され入社を決めた学生と出会う場面がありました。
SNS、HPではいくらでも良いこと・格好いいことを語れますが、近くでその背中を見せるからこそ社員の挑戦する背中を押し、協働する若者を惹きつけることに繋がるのではないでしょうか。
また、越境学習の経験がある経営者・管理職は、部下が社内外で越境学習を経験することに対しても寛容であるということも分かっています。
自分が一皮剝けたタフな経験をすることで、社員の挑戦に対して寛容になっていくのは、想像するに難くないですね。
以上のことから、ローカルベンチャーシップは新規事業開発、人材育成、採用、リーダーシップ開発、組織文化の刷新など様々な面で好影響を確認できました。
トライアルによってインターンを超えた新たな人材育成の方法論の確立に手応えを感じることができましたので、Season1も自信を持って取り組めそうです。
ちなみに、今回中間成果発表としたのは、プロジェクトはこれで終わりではないからです。4チームは継続的に動いていくことになりそうで、まさに変化と挑戦を続ける地域企業(=ローカルベンチャー)の姿が体現されたといえます。
引き続き、ローカルベンチャーのその後の活動を注視していきたいと思います。
●今後のローカルベンチャーシップ
Season1はスケジュール未定ですが、実施を予定しています。
変更点として受講対象を経営者・リーダーに加え、管理職・マネージャーという立場の方も対象とします。
将来のリーダー、マネージャー育成の機会としてマネジメントの実践経験に活かしていただけると有り難いです。
エリアはSeason1から新潟全県を対象に、県外についてはパートナーと協同でサービス提供を考えています。
また、Season1の実施にあたりコーディネーターやインターンなど一緒に動いていく運営チームのメンバーも募集致します。関心ある皆さんは今後の動向にもご注目ください。
ローカルベンチャーアルムナイの発足
ローカルベンチャーシップに挑戦してくれた企業、経営者やバディの皆さんによるアルムナイ(卒業生、OBOG)のネットワークを立ち上げます。詳細はまた別の機会で決まり次第お知らせいたします。
●Special Thanks
最後にLOCAL VENTURE SUMMITを一緒に盛り上げてくださった皆様をご紹介します。
グラフィックレコーディング
小林愛実さんよりグラフィックレコーディングを書いていただきました。一目で4時間半の学びが浮かび上がってくる素晴らしい作品、ぜひご覧ください!
参加レポート①
イメージライティングというサービスを提供しているライターのヤマシタナツミさんより、ローカルベンチャーシップに参加レポートと気づきをまとめていただきました。公式となる本レポートの補足としてぜひご覧ください。
参加レポート②
本イベントにリアル参加したヤギモトさんは、ご自身のブログでイベント紹介していただきました。X(旧Twitter)では新潟の夢を語るというアカウントで運用されています。新潟のベンチャー企業に関する情報も発信されていますので、興味ある方ぜひご覧ください!
カメラマン
燕三条でフォトグラファー、ライターとしても活躍されている斎藤恵さんにご協力いただきました。素敵な写真をありがとうございました!
斎藤さんは「shiruso」という屋号で活動されていますが、このネーミングもザツダンの横田さんがつけられたそうですよ!
デザイン
フライヤー、ロゴはハシゴデザインの高橋栄一さんに手掛けていただきました。カッコいいデザイン、ありがとうございます!
改めて、本イベントは多くの方に協力いただき作り上げることができました。発表者、参加者、そしてスタッフの皆さまに心から感謝いたします。本当にありがとうございました。