問題解決あるあるコラム#30:くり返しは安心を生む
こんにちは。いちおか@問題解決サポーターKAIOS代表です。
問題解決あるあるコラム第30回のテーマは、「くり返しは安心を生む」です。人はなぜ同じことを繰り返すのでしょう? いいことも悪いことも、思わず「Why ?」と問い質したくなる程、同じことをくり返します。同じ失敗を何度も何度もくり返された時には、いい加減聞いてみたくなりますよね、「なんでそれした?」って。今回はその理由を考えてみましょう。
人は無意識に同じ道に吸い寄せられる
我々は、以前にも手痛い思いをしたにも関わらず、同じ失敗をくり返します。それも、ものの見事に同じ道筋を通って。何故なのでしょう? あれだけ事前にダメだと自らに念を押し言い聞かせても、ふとした瞬間に、まるで魔が刺したかのように、ダメだと思っていた方へ舵を切ります。ダメだダメだと考えすぎるあまり、それを「やらなければならない」と自己暗示にかかりやってしまう、いわゆる「押すなよ」システムの場合もありますし、すっかり意識の外にあったのに「なぜか無意識の内にそちらに向かっていた」というケースもあります。これは、人間が「立ち止まったりふり返ったりするのが嫌い」という性質を巧みについた悪魔の仕業のようにも思えます。
前とおんなじは安心
「前に行った所」や「前にやったこと」は、いいことも悪いことも一度経験しているので心の余裕が生まれます。その「知ってるもんね」が、前回とは違う新しい行動に抱く「リスク」を回避させ、一時的な「安心」を選択させているのではないでしょうか? 人間は未来を予測することが苦手です。常に「今」と戦っているのです。その「今」の安心が何よりも優先され「過去」「現在」「未来」の時間軸の中の、「過去から学び」「未来の成功をつかむ」という本来取りたい選択肢ではなく、「今、安心したい」という選択肢を選ばせてしまっているのではないでしょうか?
くり返すと安心が生まれる
世の中、どんな仕事に就いていようと必ず「くり返し」が発生します。常にいつも違うことをやっている人はまず居ません。「くり返す」ことで習熟を生み、その活動そのものやその活動から生まれるモノやサービスに付加価値を生み出します。そうしてこの「くり返し」の中で、我々人間は「いつもと同じ」という安心感を得ています。「いつもと同じ」ということは、この先が「予測できる」状態です。つまり「くり返し」によって、この先何が起こるか分からないという「不安」から解放されるのです。
人間は不安が嫌い
そう、我々は常に「不安を排除」する方法を探しているのです。前に経験した失敗を避けるために前と違うことをしようとすると、その違うことによって失敗することが「不安」で、前に失敗したにも関わらず「経験のある行動」を選び「不安を排除」しているのです。ある意味「未然防止」をしているのですね。つまり「再発防止」をするよりも「未然防止」を優先してしまうが故に「再発」を招いている、というなんだかよく分からない状況を生み出してしまっているのです。
くり返して生まれた安定から異常を検知する
こうして考えてくると、人間は失敗の「くり返し」から逃れられないように思ってしまいます。が、一方でこの「くり返し」から生まれる「再現性」は、「安定を」作り出しアウトプットの「質」を高めます。そして、この「安定」状態はいつもと違う「異常」を敏感に検出し、そこから生まれる「想定外の失敗」を未然に防ぎます。これも、我々人間の持つ「リスク回避」能力に依るところです。異常を瞬時に検出し、排除もしくは修正することでいつも通りの状態に戻すと「安心」が生まれます。人間はこの状態が一番心地よいのです。
失敗も繰り返すと当たり前
このように、我々は「安心」との引き換えに、「失敗をくり返す」ことを選んでいる訳なのですが、「失敗をくり返す」ことは自分にとっても「リスク」であるはずなのに、なぜそれを避けようとしないのでしょうか? それは、もう1つの人間の特徴である「慣れ」が生まれているからです。初めて失敗すれば自分も傷つきますし、怒られて嫌な思いもします。でも、それも「くり返す」内に失敗も「経験」として蓄積され「予測可能な状態」となります。怒られることも予め分かっているし何をすれば解放されるのかも分かっているので、もはや「脅威」ではなく、先がわかっている「安心」になってしまっているのです。「自分の中で対処できるリスク」は、もう「リスク」ではなくなってしまうのですね。
まとめ
このように、失敗しても失敗しても同じことをくり返してしまうのは、「くり返し」から生まれる「安定」とその先にある「安心」を求めているからなのかもしれません。そして、「くり返し」によって得られる「慣れ」が、先がみえる「安心」を生み、失敗が「脅威」でなくなってしまっているのです。では、この「失敗地獄」から抜け出すにはどうしたらよいのでしょう? それには、この「失敗のくり返し」がさらに大きなリスクを孕んでいることを認識させ、その大きなリスクに対する「リスク回避プロセス」を発動させることで抜け出すことができます。微かな望みが見えてきました。が、それについてはまた次回に。
今回も最後までお読み頂きありがとうございました。
次回のテーマは「忘れたい嫌な思い出はなぜ忘れられないのか?」です。
次回もお楽しみに!