問題解決あるあるコラム#44:失敗はふり返りたくない
こんにちは。いちおか@問題解決サポーターKAIOS代表です。
問題解決あるあるコラム第44回のテーマは、「失敗はふり返りたくない」です。これまでのコラムでも、何度も何度も、人間はふり返るのが嫌いな生き物だ、とお伝えしてきました。その中でも、特に「失敗」は絶対にふり返りたくないのです。この性質によって現場で生まれてしまっている数々の「困りごと」について、今回は「ふり返って」みたいと思います。
失敗は無かった事にしたい
誰だって失敗しますよね。特に初めてのことや、慣れていないことはまず失敗します。失敗すると皆さんはどう感じますか? 「くやしい」ですか? 「仕方ない」ですか? 感じ方は色々ありますが、多くの人がまず最初に「恥ずかしい」と感じると思います。他人から見ればたいして恥ずかしいことでもないのに、本人にとっては一大事です。「穴があったら入りたい」とは当にその通り。一刻も早くその場から立ち去りたくなります。できるならば今のは「無かったことにしたい」と思ったことがある方も多いのではないでしょうか? この、「恥ずかしい」という心理が「ふり返り」の邪魔をします。
記憶には恥ずかしい「気持ち」も記録されている
失敗は、ふり返った方が絶対に再発を防止できるのに、決してふり返ろうとしません。将来また同じ失敗をして恥ずかしい思いをするかもしれないのに、ふり返ることで再び感じる「恥ずかしさ」を避ける方を優先してしまいます。今先送りしても、結局またいつか思い出して恥ずかしい思いをするのに、です。この件は、コラム31の「忘れたい嫌な思い出はなぜ忘れられない?」でもお話ししましたね。
なぜなぜ分析は生き地獄
本人は忘れたいかもしれませんが、世の中はそんなに甘くありません。やらかしてしまったら、再発防止をしなければなりません。失敗の原因を詳(つまび)らかにし、他の人々にも情報を共有し、組織全体で同じ失敗をしないように対策を講じなければなりません。その道中で遭遇する「なぜなぜ分析」は、もはや生き地獄です。思い出したくない失敗を根掘り葉掘り聞かれ、なぜだなぜだと問い詰められます。実際には、周りも別に問い詰めている訳ではありませんが、本人にとっては問い詰められているように感じてしまいます。
「恥ずかしい」を受け入れられない気持ちが「ないない」を生む
この苦しみから逃れるには、失敗の原因を吐き出さなくてはなりません。でも、「自分が悪い」とは言いたくありません。むしろ、この時点で「なんで自分がこんなめに遭うんだ」と被害者になってしまっています。そうして出てくる「なぜなぜ」は、いつもの「アレ」です。「ルールがなかった」「教えてもらってなかった」「知らなかった」「指示されていなかった」「気づかなかった」という「ないない」づくしの「他責化」や「これでいいと思い込んでいた」という「正当化」です。
ルール化と教育の無限地獄
こうなると対策は「新しい手順の作成」や「教育訓練による周知徹底」といういつもの「行動規制」対策です。誰かが何かをやらかす度に新しいルールが作られ、言い聞かされ、確認事項が雪だるま式に増えていき、ますます「ないない」の状況を補強していってしまいます。これは、「言わなくても分かるでしょ」の回でもお話しした、我々の「他人を行動で評価してしまう」特性がそうさせてしまうのです。本人に強制的に反省を促し、「行動変容」を強要します。これでは益々ふり返ることが嫌になってしまいます。
結局全て「リスク回避」が発端
このように、ふり返りでは「恥ずかしい」思いをすることからの回避、なぜなぜでは失敗を受け入れなければならない「自己否定」からの回避を優先してしまっているのです。つまりは「自分が傷つくこと」を避けようとしているのですね。これは、「感情」と「行動」が結びついている我々人間が、絶対に逃げられない「宿命」なのかもしれません。
問題解決は「事実」に着目する
そうは言っても、失敗は再発を防止しなければなりません。万が一、人が怪我をしたり、多くの人々に悪影響を及ぼすような出来事ならなおさらです。でも、自分たちの「感情」が問題解決の邪魔をしてしまう。そんな時には、起きてしまった「できごと」=「事実」に着目すればいいのです。「なぜなぜ」で出てきた「ないない」たちは、どれも「環境や背景」を語っており、「できごと」が語られていません。これでは人の「行動」、そして「行動」に紐づいている「感情」に働きかけ、「リスク回避」を生んでしまいます。「できごと」に着目すれば、「行動」や「感情」は切り離すことができ、冷静に失敗と向き合えます。
まとめ
このように、失敗から始まる「問題解決」に「失敗」してしまうのは、人の「行動」と「感情」に着目してしまい、「リスク回避」を優先させてしまう状況を作り出してしまっているからなのです。「できごと」=「事実」に着目すれば、人は冷静に現状を見ることができ、「失敗」とも向き合えるのです。その具体的な方法は、「CITA式問題解決トレーニング」で学ぶことができますので、興味のある方は、まず『問題解決の教科書』を読んでみてください。(宣伝です笑)
今回も最後までお読み頂きありがとうございました。
次回のテーマは「ふり返らないとスコープは広がらない」です。
次回もお楽しみに!