【エグゼクティブの成功マインドを磨くCEOコーチング:シーズン1-2】「イチヒャク発想」のメカニズム(前編)
(1)ゼロイチよりも、イチヒャク⁉
こんにちは。
エグゼクティブ専門コーチの久野和禎です。
今回は、拙著『CEOコーチング』の中でも紹介している「イチヒャク(1to100)発想」についてお話ししていきます。
書籍の話をするのがこの番組の主目的ではありませんが、みなさんにお届けする内容や知識、経験を厚みのあるものにするために、本と連動しながら進めていきたいと思います。
書籍『CEOコーチング』の本を特徴づけているものの1つが、イチヒャク発想、イチヒャクというアプローチです。
イチヒャクは、1を100にする発想ですので、このイチヒャク発想の前には、0を1にする「ゼロイチ」があります。当然、私もゼロイチの重要性は認識していますし、私自身、これまでいくつものゼロイチを経験してきました。そのため、ゼロイチについて聞かれる際にはその手法をお伝えすることもあります。ただ、ゼロイチの成否はその人の特性、資質に依存する部分もあり、正直、そこまで簡単なことではありません。
また、「ゼロイチをしたら終わり」ではなく、物事には「その先」が存在します。そして、多くの人が接するのは、誰かが行なったゼロイチを、10とか100にしていく場面だと思います。さらに言えば、0と1の差よりも、1と100の差のほうが大きいため、私はイチヒャクのほうに重点的にフォーカスしています。
前回お伝えした「どうやって判断の精度を上げていくか」というテーマは、このイチヒャクにもつながっています。そして、イチヒャクは、「100倍の規模を目指していくためには何が必要なのか」ということであり、
10を1000にすることも含んでいます。
(2)「人間の脳は目標達成に必要な情報を探すようにできている」らしい
私は、認知科学をベースに説明することが多いですが、「人間の脳はこういうふうにできているようです」と言うことはできますが、残念ながら断言することまではできません。人間の脳には誰かがつくった「取り扱い説明書」があるわけではないので、「人間の脳を理解しようとして分析したり、使ってみると、こういうふうになるから、きっとそうに違いない」「どうもこうらしい」としか言いようがないのです。
その前提でお話しすると、「どうも人間の脳は目指すものがはっきりすると、その目指すものに向かっていこうとする性質があるようだ」と言うことができます。
どうやって目指していくものに向かっていくのかといえば、「目指しているものを実現したり、達成したりするために必要な情報が目につきやすくなるらしい」のです。
今、この番組を聴いてくださっている方、あるいはこの記事を読んでくださっているあなたは、なぜ聞いたり、読んだりしているのでしょうか。多くの方の理由は「必要だと思ったから」ではないでしょうか。
では、なぜ、必要だと思ったのでしょうか。
きっと多くの方が「この番組や記事に、自分が必要としているものがあると思ったから」とお答えになることでしょう、
経営やビジネスにおいて(あるいは学校や病院の運営などにおいても)、「こうなりたい」という目標、姿があるからこそ、脳が上手に働いて「これを聞いておいたほうがいいんじゃない?」と教えてくれる――。そういうふうに考えられるのが、「認知科学」の発見なのです。
一度整理しましょう。
「目指しているもの」があると脳が上手に働いて、自分にとって必要なものを見せてくれるのです。便利ですよね。
「目指しているもの」があれば、勝手に見えるわけですから、あとはやるだけです。
その瞬間に感じるのは、「これは聞いておいたほうがいいかもしれない」ということであって、そのあとに、話者や著者の略歴を読んで、そのうえで「やはり聞いておいたほうがいいことを言っている」となる。つまり、最初に直感的に「必要な気がする」と感じて、そのあとで裏付けをとるという順番なのです。
そう考えると、意思決定、判断というのは「直感」であり、これがイチヒャク発想の裏にある「からくり」と言えます。
(3)脳は目標に合わせて「それなりのもの」を見せてくれる
目指している「目標」がばしっと決まっていると「直感」が働き始める――。このことが確かだとすれば、イチヒャクでも、イチジュウでも、イチサンでも、常に同じメカニズムが働くと考えられます。
もちろん、なかには「今のままがいい」という目標もあるでしょう。もし、「今のままがいい」ということであれば、「イチイチ」になるだけのことです。
一方、今よりも先に進む、たとえば、「1から3になりたい」という目標だったり、「1から10になりたい」という目標だったら、脳は「それなりのもの」を見せてくれるわけです。
「1から3になりたい」ときに脳が見せてくれるものと、「1から10になりたい」ときに脳が見せてくれるものと、「1から100になりたい」ときに脳が見せてくれるものは違います。
「健康に気をつけましょう」というコメントがあるとすれば、それは1から3でも、1から100でも言葉自体は同じですが、3を目指すのと、10を目指すのと、100を目指すのでは、やはり変わってくるのです。
脳が自動的に勝手に「君が100を目指したいと言うのなら、これくらいのことを見せてあげようかな」と働いてくれる――。そう考えると、わくわくしませんか?
脳は勝手なのです。自分は落ち着きたいのに、脳が勝手に緊張させて困った経験は誰にもあるはず。ですから、脳は自分の言うことを聞いてくれない、自分とは違う独立した存在と考えてはいかがでしょうか。その自分とは違う存在である「脳」を「どうすれば味方につけることができるか」を考えてみるのです。
そして、「自分はイチサンではなく、イチジュウを目指す」と目標を設定すればいいのです。そうすれば、「そうか、その望みをかなえよう」と言って、「イチジュウであれば、これをやっておいたほうがいいぞ」と直感的に脳が教えてくれるのですから。
そうすれば、「自分が何を目指すかが運命の分かれ目になる」ことに気がつくはずです。
(4)1人の直感を100人の直感へ
でも、「待ってください。直感が大切だということですが、1人の直感でいいんですか?」「社員が100人いるんです。私1人がイチヒャクを思い描いても、他のみんながそんなことをまったく考えていない状態では、とてもできる気がしません」という疑問が湧いてくるのではないでしょうか。
まったくその通りだと私も思います。
でも、もうすでにヒントは示されています。
社員のみなさんがあなたと同じようにイチヒャクで発想したらどうなるでしょうか?
みんなが本当にイチヒャクができると思ってしまったら、みんなの直感が働き始めますよね?
みんながそれぞれの直感で100になれるような情報を集めてきて、みんながそれに向かって行動し始めたら、100人の組織であっても、ぐぐぐっと動いてしまうと思いませんか?
これがまさに組織でイチヒャクを達成するためのからくり、秘訣なのです。
組織のトップを含めた全メンバーが「私たちはいま1だけど、100だっていけるはずだ。いってしまおう。できたらすごくおもしろそうだよね」と思ったとしたならば、それは脳の仕組み上は実現可能と考えられるのです。
もちろん、100の場合は、1週間、2週間という短期間のことではなく、3年、5年、10年というように、年単位でずっとイチヒャクを思い描きながら、会社としてもビジョンを掲げながら、やり続ける必要があります。
また、「脳の仕組み上はそうだけど、実際に行動しようとするとこういうことがあって、ああいうことがあって難しい」とか「やろうと思ったけど、怖くなって進めません」というような、実現を妨げる要因もあるでしょう。
そうした困難をひっくり返していくメカニズムが含まれているのが、CEOコーチングなのです。困難に直面したときに、「こういうときにはこうすればいい」というパターン、マニュアルのようなものはすでに存在しているのです。
それは5秒10秒でできるようなことではありません。でも、わかっているのと、わかっていないのとでは、天と地ほどの差がありますから、「楽しく、みんなの気持ちを整えながらやっていく方法が、ある意味、科学的にわかっているのは大きい」と私は考えています。
後編に続く
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
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