【シーズン3-9:エグゼクティブの成功マインドを磨くCEOコーチング】ゴールは「現在形」で 示す ~アファメーションの効果
(1)実現していないことを実現しているかのように書く
こんにちは。
エグゼクティブ専門コーチの久野和禎です。
シーズン3では、書籍のタイトルにもなっている「ゴールドビジョン」についてお話ししています。
将来の夢をもち、その夢について日記等に「書く」のはとてもよいことである――。
このことは、有名なスポーツ選手が小さなころに書いた「夢」を実現した事例が広く知られるようになった影響もあり、現代では当たり前のこと、常識として捉えられるようになってきました。
今回のテーマはその常識と関連したものであり、「ゴールを設定する際、なぜ現在形で表現するのか」です。
「『こうなりたい』と書く」ことは、「書かない」よりはいいに決まっていますが、私は「もうすでに実現しているかのように書くこと」を重要視しています。
とはいえ、「将来の夢」はまだ実現していないから「夢」なのであって、「もうすでに実現しているかのように書く」と、おかしな表現になってしまいます。たとえば、まだお昼ごはんを食べていないのに「ランチに食べてカレーはおいしかった」と書いたり、言ったりしたら、変ですよね?
でも、私たちの脳は、そのおかしなことを意外とすんなり受け入れてくれます。
カレーをまだ食べていない段階で「ランチに食べたカレーはおいしかった」と言うと、脳は「そうか。おいしかったのか」と素直に受け取ってくれるのです。
もちろん、脳の何割かは「いやいや、まだ食べてないだろう」とツッコミを入れるでしょう。でも、同時並行的にいろいろな役目を果たすのが「脳」であり、ある部分では「論理的な思考」が働いて「おいおい」と言う一方で、他の部分では「まあそうなのか」と素直に受け入れてくれるだけでなく、受け入れた状態が実現するように、行動させてくれるのです。
たとえば、脳は「あの店は行列ができるから、11時50分くらいにはオフィスを出たほうがいい」とか「12時まで仕事があるから、ダッシュしよう」といった工夫をしはじめ、「午前中の会議を11時40分くらいには終わらせないといけないな」とか「あらかじめコートを着ておこう」とか、細かなアイデア含めて、クリエイティブな発想をしてくれるのです。
つまり、「もう実現しているかのように書いたり、言ったりする」ことの目的は、夢の実現に向けて、脳に効果的に働いてもらうためなのです。
(2)アメリカの特殊部隊が強い理由
この理論では、「すでに実現しているかのように描写すること」を「アファメーション」と呼んでいますが、アファメーションの効用はアメリカなどではずいぶんと知れ渡っています。
ちなみに、私の師であるルー・タイスさんは「アファメーション」を広めた人物であり、アメリカの軍隊を指導していました。実際、アメリカの番組で、アメリカの特殊部隊が強い理由として、師の教えである「ゴール設定」「セルフトーク」「アファメーション」が挙げられているのを観たことがあります。
私がルー・タイスさんから教わったこと、私のメソッドで紹介していることは、アメリカの軍隊だけでなく、アメリカンフットボール、野球、バスケットボールの選手、あるいは一流のビジネスパーソンたちの間では当たり前のこととして捉えられています。
私自身、一流のCEO、スポーツ選手のコーチングをする際、ある種の極限状態に追い込まれたとき、その人の支えとなるのは、自分で設定したゴールであり、内側から湧き出てくるセルフトークであり、アファメーションであることを実感しています。
それらは内面、心の強さと言い換えてもよいかもしれません。
「心」は「筋肉」と違って、一度痛めつける必要はないため、「心を鍛える」という表現は適切ではないかもしれませんが、感覚としては「鍛える」に近いものがあります。アメリカの心理学のアンジェラ・ダックワースさんが「グリット」と呼んだような「しなやかさ」や「強さ」は、ゴール設定、セルフトーク、アファメーションによって鍛えられるのです。
(3)曹操はなぜ「梅林」の話をしたのか
これは本当にあった話かどうかはわかりませんが、最後に、『三国志』の登場人物でもある曹操の行軍時のエピソードをご紹介したいと思います。曹操が活躍したのは西暦200年前後と言われていますから、いまから1800年くらい前の話になります。
行軍中、雨も降らず、水が不足して困ったことがあったそうです。人間、お腹が減るだけならなんとかなりますが、水がなくてはどうにもなりません。そのとき、曹操は「この先にある梅林に到着したら、思う存分梅を食べよう」と言ったと伝わっています。
兵士たちは「本当に梅林はあるのだろうか」と疑ったかもしれませんが、人というのは「梅」と聞いただけで、口の中が潤うようにできています。曹操の言葉を聞いた兵士たちは、自分たちが梅を思う存分食べている姿を思い浮かべて、もう一踏ん張りしようと元気になったわけです。本人たちは、アファメーション、あるいはビジュアライデーションしている自覚はなくても、結果的にそうなったのでしょう。
今回は、カレー、特殊部隊、そして梅林の例を挙げましたが、人の脳というのは、そんなに馬鹿ではないので実際には「まだ実現していないのはわかっているけれど、実現しようとする」くらいの感覚だとは思いますが、それでも脳をだましてあげるぐらいのつもりでアファメーションを活用すると良いと、個人的には感じています。
今回も最後までお読みいただきありがとうございます。
次回またお会いできるのを楽しみにしています。
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