【エグゼクティブの成功マインドを磨くCEOコーチング:シーズン1-6】自分を信じて、チャンスをつかみ取る(前編)
(1)「自分はダメだ」と思ってはいけない
こんにちは。
エグゼクティブ専門コーチの久野和禎です。
今回は書籍『CEOコーチング』の第3章で取り上げている「自分を信じる力」(コンフィデンス)についてお話ししていきたいと思います。
「自分を信じる力」というのは、何かを達成したり、実現していく際に、「自分はできる」と感じたり、いま風に言うなら「自分はいけている」と思える力のことです。「自己肯定感」「自己イメージ」「自己評価」という言葉や、「大事なのは自信だよ」というメッセージで表現されているものと同じ意味合いになります。
「自分を信じる力は大事だよ」と言われたら、多くの人は「それはそうだよね」と感じることでしょう。
では、なぜあえて「自分を信じる力」が大切であると私はお伝えしているのでしょうか。それは、多くの人が「それはそうだよね」と思っている一方で、ほとんどの人が実はその重要性をしっかりと認識できてはいないからです。
これまでの記事で扱った「目指すものがないとどこにも行くことができないので、目標は大切です」というメッセージに対しても、多くの人は「それはそうだよね」と感じることと思います。
しかし、目標を持つのは意外と難しく、いざ、「何をゴールにしていますか」と聞かれると、明確に言えなかったり、「何をゴールにすればいいのかわからない」と迷っているというケースは少なくありません。
あるいは、「自分を信じる力」と言うと、「自分を信じ過ぎると傲慢になってしまいませんか」とか「気が抜けて努力しなくなってしまうのではないか」と感じる方がいらっしゃるかもしれません。
あるいは、書籍『CEOコーチング』のメインの読者であるリーダーの方々には少ないかもしれませんが、「『自分はまだまだ……』と思う気持ちを力に変えたり、『こんなのではダメだ』というようなネガティブな気持ちをバネにしなければならないと考えている方も一定数いらっしゃるかもしれません。
ここで結論をお伝えすると、「自分はダメだからがんばろう」と思う必要はまったくありません。「ダメだ」と思うのではなく、「自分はできる」と思うことが「よいこと」なのです。
認知科学をベースに考えると、私たちの脳は「思っている状態」を実現するようにできています。
「ダメだからがんばろう」というのは、一見、反骨心があるようにも感じられますが、「ダメだ」というメッセージが無意識に残ってしまうので、「やっぱりダメなんだ」となってしまう可能性の方が高いのです。一方、「私はすごいんだからがんばろう」と思えば、「すごいんだ」というメッセージが残るわけです。
(2)私たちはネガティブなメッセージを受け取りながら生きている
ただし、「自分はすごい」ということを、自分に言い聞かせる際にも注意が必要です。
もし、「『自分はすごいんだ』と思い込ませましょう」と考えたならどうなるでしょうか。「思い込ませる」という言葉の裏には、「本当はすごくないんだけどね」というメッセージが含まれています。それを自分の無意識が捉えてしまうと、「自分はすごいんだからがんばろう」と言いながらも、内心では「すごくないかも……」と考えてしまうので、効果は良くて限定的、通常はマイナスに働いてしまいます。
私の師であるルー・タイスさんは、「人はみんな天才だ」と言っていました。この言葉には裏があり、「生まれたときはみんな天才なのですが、だんだん天才ではなくなっていく」というメッセージが込められていると私は考えています。
本来、私たちは大人になるにつれてできることが増えていきます。それなのに、年齢を重ねるごとに「できない自分」のイメージを重ねていって、あれもこれもできない自分をつくってしまう傾向があります。
マイナスのイメージは自分だけでなく、周囲からの働きかけで作られる面もあります。親や先生から、あるいは社会から「あなたはダメなんだからこうしなさい」というネガティブなメッセージが織り込まれた言葉や情報を投げ掛けられたり、指示・指導されて「私はダメなんだ」と思ってしまう人は少なくありません。
これは非常に難しい問題でもあります。
たとえば、会社で「しっかりと書類を点検しましょう」とか「お金の処理を間違いのないようにやりましょう」といった内部統制の仕組みが導入されるケースを想定してみましょう。会社全体としてはチェック機能が働き、ミスや不正が減ったりすることで、これまで以上に安全性が担保されるようになります。
組織としては、「特定の個人に対して信用しているとかしていないとかではなく、可能性は低くても、万が一の場合に備えて対策をしている」だけなのですが、従業員の皆さんはどう感じるでしょうか。きっと、「ああ、会社は自分たちのことを信用していないんだな」と感じるはずです。つまり、会社がどう思っているかに関係なく、「会社はあなたたちを信用していない」というメッセージをメンバーの意識に刷り込むことになるのです。
(3)アメリカの空港で考えた世の中の仕組み
このような事例は枚挙に暇がなく、社会の仕組みの中で生きている私たちは、日々自己評価を下げながら、もっと言えば自己評価を下げられながら生きている、とすら言えます。「ルールがなくても、自己責任でできます!」というのは認められません。自己責任だけでは社会が成り立たないと多くの人が思っているからです。
一つ、関連した事例を挙げたいと思います。
私は仕事柄、コロナ禍でも状況が許す範囲でアメリカに出張していました。時期にもよりますが、私が渡米した際、アメリカでは街中で誰もマスクをしていませんでした。
ただし、例外はあります。その1つが空港です。空港では「マスクをしていない場合は、連邦法に則って罰金もしくは逮捕の対象となります」と何度もアナウンスが流れていました。
そのときは、私自身も「空港や飛行機ではマスクを着用したほうが、お互いにとっていいよね」と感じていたため、マスク着用のルールに対して納得感がありましたが、突き詰めて考えると、ことはそう簡単ではないかもしれません。実際のところ、マスク着用に関するトラブルは世界中で起きていました。
一般論としていえば、「こうしたほうがいいよね」というように自分たちで選択したことには納得感がありますが、「こういうルールなので、こうしなさい」と言われると、自己評価が深く削られることになります。
コロナ禍の時期に、世界中で多くの人が身体だけでなく心にダメージを負ったのも、自分たちの選択、自由が削られることで自己評価が下がってしまったからではないでしょうか。
残念ながら、世の中というものは、自己評価を下げる仕組みで成り立っています。
このことを逆から考えると、お互いに認め合う、評価し合う、相手を信頼している前提に立った仕組みを構築できれば、自己評価が高い社会になっていく可能性はあります。これは、人間のポテンシャルの話でもあり、テクノロジーの発達によって「人を疑う」必要のない仕組みを構築できるようになれば、状況は少しずつ変わっていくでしょう。
たとえば、「消せるボールペンだと書き換えられるので、消せないボールペンを使ってください」と言われることがありますが、書き換え不可能なブロックチェーン技術を活用すれば、「書き換え」を疑う必要のない仕組みがつくれるはずです。
疑わないことが前提の世の中になると、社会全体の意識が逆回転しはじめて、お互いのことを信用できるようになって、自己評価も高まっていく。その意味でいえば、テクノロジーの進展は歓迎すべきものだといえます。
最後は、世の中の仕組みにまで話が及んでしまいましたが、今回もお読みいただきありがとうございます。
また次回お会いできるのを楽しみにしています。
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