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【エグゼクティブの成功マインドを磨くCEOコーチング:シーズン1-3】「コーズ」があることで人は強くなれる(後編)

(1)「考えるだけの人」にならないために


こんにちは。
エグゼクティブ専門コーチの久野和禎です。
 
前回は「コーズとは何か」についてご説明しましたが、今回は「コーズのリスク」についてお話ししていきたいと思います。
 
一言で言えば、「コーズ」について深堀りをすると「自分の過去をさかのぼってしまう」という難点が存在しています。過去がいけないわけではありません。しかし、過去にさかのぼることで、前に進む力が損なわれる可能性があることが問題なのです。
 
経営者が会社を経営していくケース、あるいは個人が何かに向かっていくとき、過去を重視しすぎないほうがいいと私は考えています。
 
ですから、「CEOコーチング」の体系における第一ステップでは「コーズ」ではなくて、「ゴール」を重要視します。目指したいゴールが先にあって、「本当に実現していくんだ」という臨場感やイメージが高まって、そこに向かって進んでいくときに、ふと我に返って「私はなぜこれをやっているんだっけ?」「何のために始めたんだっけ?」となった際に、「コーズ」が力を発揮するという順番になります。
 
世の中では「『なぜ』から始めよう」と言われることがあります。実際、その発想でうまくいく人がいるのも事実です。ただ、うまくいく人は「なぜ」を考える時点ですでに「自分が目指すもの」がわかっているケースが多いように思います。
 
ですから、私は「『なぜ』から始める」という発想をリスペクトすると同時に、「『なぜ』はわかったけれど、自分はどこに向かうんだっけ?」となってしまわないように気をつけないといけないと考えています。
 
このような理由から、私が構築したコーチングの体系は「なぜ」ではなく、「未来」からスタートするものであり、先に未来を見て、そのうえで「なぜ」に立ち戻ったほうがいいというのが、私の提案になります。
 
人は「自分とはどんな存在か」を考えすぎると迷子になってしまうことがあります。そして、深く哲学的に考えた結果、よく考えはするけれど、行動を起こさない人になってしまうリスクがあります。さらにいえば、考えることに不思議な快感を覚えてしまって、人と比べる必要はないにもかかわらず、「私は深く考えているけれど、周りの人は考えていない」というような不適切な優越感が生まれてしまうことすらあります。
 
いろいろと考えることで自分への理解が深まったり、賢くなったりするかもしれませんが、考えることに時間を費やすばかりで現実は1ミリも変わらない……。本当にそれでいいのでしょうか。
 
極端なことをいえば、1ミリも前に進まないよりも、「前に進んでさえいれば、どんな存在でもいい」くらいに私は考えています。だから私は「コーズから考える」ではなく、「ゴールからスタートする」ことをおすすめします。

(2)協力者が次から次へと現れる人の秘密


ここで一度整理してみましょう。
 
まず、目指すものを最初に考える。
 ↓
そしてその目標、夢に向かって歩み始める。
 ↓
進んでいるうちに自分の道が見えてきたとき、はっと我に返って「自分の本来の姿」「自分がどこから来たのか」に興味が湧いてきて、考えるようになる。
 ↓
その結果、「目指すもの」と「いまの自分」とが1本の糸、ロープでつながって、「ああ、なるほど。だから私はこれをやっているんだ」となり、いままで以上に前進するための力が湧いてくる――。

このような流れです。
 
コーズをしっかりと理解していると「人は強くなれる」ので、困難を乗り越えやすくなります。何かをやろうとして進んでいくと、必ずといっていいほど「壁」にぶつかるものですが、「コーズ」があれば、「やめようかな」となったときでも、「いやいや、待てよ。あの日のことを思い出そう」「あのときの悔しさを忘れてはいけない」「あのときに立てた目標、そのときの自分を理解したうえで、もう1回しっかりと再現しよう」となって、先に進む力がアップしたり、乗り越える力が桁違いに高まったりするのです。
 
コーズには、副次的な効用もあります。
前回、私の周りには「すごいなあ」と思わせてくれる人がたくさんいるという話をしたのを覚えていますか。
 
「コーズ」を自分でしっかりと理解して人に伝えられるようになると、「なるほど!」と共感してくれる人が増えて、「応援しますよ」とか「お手伝いできることはありますか」と声をかけてくれる「協力者」が増えていきます。
 
「協力してもらいたいからコーズを整理する」というテクニックの話ではなく、「なぜそれをやっているのか」が自分の中から出てくる人になっていれば、自ずと共感、協力してくれる人が増えていくということです。
 
この記事を読んでいる方の中には、「輝かしいゴールを描いてスタートして、数々の困難を乗り越えて、こうなりました!」というような「きれいなストーリー」を描いて、力強く歩んでいる人、周りに協力者がたくさんいる人のことを想像して、「自分には無理だ」と思って、諦めてしまう人がいるかもしれませんが、「コーズ」は一直線である必要はありません。
 
実際、そういうストーリーを語れる人も、嘘をついているわけではないにしても、あとから見るときれいなストーリーに見えるだけだったりします。コーズは一直線ではなく、人生のように「行き当たりばったり」でいいのです。
 
その「行き当たりばったり」のなかで一つひとつ選択していく際に、「なぜ」というのをわかったうえで選択できればいいのですが、たいていの場合は、わからないまま選択していって、あとになって「ああ、自分はこういう理由でこれを選んだんだ」とわかる。そして、それを積み重ねていって、あるとき過去を振り返ってみたときに、「こういう流れでこうきたのか!」と自分に対する理解が深まる――。
 
人は誰でもみな「自分はなぜそうしているのか」を説明できるはずです。「コーズ」というのは、「自分に対する理解」のことであり、誰もが持っているものなのです。
 
1、説明するには自分を理解する必要がある
2、周囲の人に説明できる
3、自ずと協力者が増える
 
私のコーチングにおける「コーズ」は上記のようなシンプルな構図になっています。協力者が増えるのは「おまけ」「プラスアルファ」の部分であって、まずは自分を理解することが大切になります。

(3)自分のルーツに思いを馳せてみよう

 
みなさんも、いまこれを読みながら「私のルーツは何だろう」「コーズ、価値観は何だろうか」と考えていることと思います。
 
もしいま、パソコンに文字を打ち込んだり、紙に書いたりできるのであれば、あるいは電車の中であってもスマホにメモすることができるのであれば、自分の「コーズ」について、1分でも構いませんので振り返ってみてください。
 
人間の脳というのは、聴いたり、読んだりしているうちはゆっくり動いているのですが、それをやめた瞬間、その何倍ものスピードで動くと考えられていますから、読み終わったあと、自分のコーズがご自身の中から飛び出してくるかもしれません。
 
 
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回お会いできるのを楽しみにしています。


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