中森明菜「Tokyo Rose」
「Tokyo Rose」
作詞:中森明菜・上澤津孝 作曲:Masaki 編曲:Brian Setzer
1995年11月1日発売の「AKINA」名義でリリースしたシングル曲。
オリコン最高位32位。
ミリオンセラーが連発していた時期において、この順位・セールスは決して上々というものではなかったが、楽曲そのものは当時の彼女にとって見事に「ハマった」作品。
ちなみにこの「Tokyo Rose(東京ローズ)」。
Wikipediaからの引用だが、日本軍が第二次世界大戦中におこなった連合国側向けプロパガンダ放送の女性アナウンサーに、アメリカ軍将兵がつけた愛称とのこと。
歌詞にある「奇跡を起こして 運命に逆らう」「上手に生きてく 女にはなれない」といったフレーズに、現代の東京ローズをイメージした跡が見て取れる。
本作のプロデュースには、アメリカ合衆国のロカビリーバンドである元ストレイ・キャッツのブライアン・セッツァーを迎えた。ブライアンは本作のギタリストとしても参加している。
そして明菜との共作で作詞を担当した上澤津氏は、日本のロカビリーバンドMAGICのヴォーカルで、本作をTV、ステージで披露するときはMAGICのメンバーが演奏で明菜を支えた。
つまりゴリゴリのロカビリー。全く隙のないロカビリー色満載の楽曲だ。
明菜自身が作詞をしたのは「二人静~天河伝説殺人事件より~」のカップリング「忘れて…」が最初だが、共作ではあるもののシングルタイトル曲の作詞を担当したのは本作が初。
「忘れて…」でも感じたのだが、彼女の作詞センス、言葉選びはなかなかのもの。実際MCAビクター時代のアルバムでも彼女の作詞が幾つか採用されている。
一方で自身の作詞でシングル・アルバムの全曲を固めるという拘りは、本人にはないようだ。
あくまでも作品のイメージやコンセプトを最重要視する。
彼女だからこその、彼女ならではの感性がそうさせるのだろう。
自作の作詞という思い入れもあってか、ステージ上での本作での彼女はとても楽しそうだ。
パンツスタイルでマニッシュにキメてMAGICメンバーと楽しそうに絡みながら歌い踊るその光景は、まるでアメリカン50'sのショーパブのステージを彷彿とさせるノスタルジックさもあり、ロカビリーを自分なりに消化(昇華)させて明菜色に染めた「さすが明菜」というパフォーマンスだった。
声の張りやボイスコントロールも非常によい。
元々ロックテイストを難なく得意分野にしていた彼女にとって、ロカビリーというジャンルも相性が良いのは当然。
「ロカビリー」に目を付けた彼女(のプロジェクト)の慧眼、さすがである。
MCAビクター時代でやっと「自分らしい作品作りができた」といった彼女の思いが、画面を通して受け取れる作品だ。
詞・曲・アレンジ全てにおいて当時の彼女の魅力を最大限に発露した作品と言っていいだろう。
最近の曲ほどではないが、本作の韻を踏むパートはかなり早口で歌っている。
そこをクリアすれば音域の高低差も少ないので、彼女の曲の中では歌いやすいほうだろう。
なによりノリのいいアップテンポな曲であるから、楽しく歌ってスカッとするには最適な曲だ。