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小説 俺が父親になった日

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あいつと俺の14年。 毎週土曜日更新。
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#連載小説

小説 俺が父親になった日(第六章)~あいつの思いと俺の事情(4)~

 ん? 一瞬その言葉が理解できなかった。  一時預かりって…ここで預かってもらえているの…

Kazuyoshi Hara
12日前
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小説 俺が父親になった日(第六章)~あいつの思いと俺の事情(3)~

 樋口保育士は明らかに心配そうな表情だ。  「随分きつそうですが…」  「だ、大丈夫です…

Kazuyoshi Hara
2週間前
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小説 俺が父親になった日(第六章)~あいつの思いと俺の事情(2)~

 新宿駅の改札を出た直後、何度も咳込んだ。  ここ一ヶ月ずっとこんな感じ。煙草のせいかも…

Kazuyoshi Hara
3週間前
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小説 俺が父親になった日(第六章)~あいつの思いと俺の事情(1)~

 薄暗い駐輪場からバスロータリー側に、同じ方向への乗客に流されながら俺は一つ咳をした。 …

Kazuyoshi Hara
1か月前
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小説 俺が父親になった日(第五章)~誰かのために生きること(4)~

  「おぉ…」  擦れた小声でキラは感嘆の声を上げた。  ポテトサラダのバースデーケーキ…

Kazuyoshi Hara
1か月前
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小説 俺が父親になった日(第五章)~誰かのために生きること(3)~

 そうは言っても、ほどほどに気を抜かないと、とても続かない。  雨があまりに酷く降る日の…

Kazuyoshi Hara
1か月前
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小説 俺が父親になった日(第五章)~誰かのために生きること(2)~

 それでもキラの存在は、腐り切った俺自身を多少なりとも「まとも」にしてくれた。  一人の時のほうがむしろ時間が有り余っていた筈なのに、キラがいるだけで穏やかな時間が流れていた。その中にいる俺もまた、何処かしら穏やかな思いになることが、気付けば増えていた。  十月最初の週末だっただろうか。  西向きの窓からベランダへと風が吹き抜けた。さすがに夕方ともなると冷えるな、とノートパソコンから視線を外して思い切り背伸びをした。  「うおっ、いたの?」  背もたれから逆さまのキラが

小説 俺が父親になった日(第五章)~誰かのために生きること(1)~

 朝ご飯は大事だ。俺は実家を出て以来ロクに食べていなかったが。  一応見た目はまともなも…

Kazuyoshi Hara
2か月前
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小説 俺が父親になった日(第四章)~昨日の敵は今日の友(3)~

 俺は駿に何をできたというのか?  我が息子に対して何もしなかった。莉紗に任せたと都合の…

Kazuyoshi Hara
2か月前
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小説 俺が父親になった日(第四章)~昨日の敵は今日の友(2)~

 「困るんですよね。保護者がコロコロ変わるなんて、子供にとって…」  「すみません…」 …

Kazuyoshi Hara
2か月前
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小説 俺が父親になった日(第四章)~昨日の敵は今日の友(1)~

 「どうしたんですか?」  やや甲高く響くその言葉は、てっきり早朝から汗だくの俺に向けら…

Kazuyoshi Hara
2か月前
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小説 俺が父親になった日(第三章)~薄っぺらな覚悟(2)~

 親らしいことなんて殆どしなかった。彼女に責任を全て押し付けてしまった。  むしろ自分の…

Kazuyoshi Hara
2か月前
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小説 俺が父親になった日(第三章)~薄っぺらな覚悟(1)~

 「あんた…やっぱりバカだったか」  いきなりその言いようはないだろう。  「あんた、そ…

Kazuyoshi Hara
3か月前
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小説 俺が父親になった日(第二章)~俺たちの始まり(2)~

 私鉄で十駅ほどある新興住宅街。辿り着いた家もまた、建って間もなく煤けていないベージュのサイディング壁で囲われていた。  俺はチャイルドシートのベルトを外して、キラをアスファルトの上へと降ろしてやった。  ダボダボの服をそれなりに整えようとしゃがんだ俺の目には、キラの表情がどこか硬くなっているように見えた。  守谷巡査長がインターホンを鳴らすと、俺と似た年恰好の一見優しげな男と、その妻らしきちょっと綺麗目な女が現れた。キラの右手を握りながら、俺は一歩下がってそのやりとりをず