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小説 俺が父親になった日

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あいつと俺の14年。 毎週土曜日更新。
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記事一覧

小説 俺が父親になった日(第七章)~『普通』って(1)~

 先方との打ち合わせが伸びに伸びた。会社に戻るなり全てを明日に残してオフィスを飛び出した…

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小説 俺が父親になった日(第六章)~あいつの思いと俺の事情(4)~

 ん? 一瞬その言葉が理解できなかった。  一時預かりって…ここで預かってもらえているの…

Kazuyoshi Hara
12日前
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小説 俺が父親になった日(第六章)~あいつの思いと俺の事情(3)~

 樋口保育士は明らかに心配そうな表情だ。  「随分きつそうですが…」  「だ、大丈夫です…

Kazuyoshi Hara
2週間前
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小説 俺が父親になった日(第六章)~あいつの思いと俺の事情(2)~

 新宿駅の改札を出た直後、何度も咳込んだ。  ここ一ヶ月ずっとこんな感じ。煙草のせいかも…

Kazuyoshi Hara
3週間前
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小説 俺が父親になった日(第六章)~あいつの思いと俺の事情(1)~

 薄暗い駐輪場からバスロータリー側に、同じ方向への乗客に流されながら俺は一つ咳をした。 …

Kazuyoshi Hara
1か月前
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小説 俺が父親になった日(第五章)~誰かのために生きること(4)~

  「おぉ…」  擦れた小声でキラは感嘆の声を上げた。  ポテトサラダのバースデーケーキ…

Kazuyoshi Hara
1か月前
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小説 俺が父親になった日(第五章)~誰かのために生きること(3)~

 そうは言っても、ほどほどに気を抜かないと、とても続かない。  雨があまりに酷く降る日の送り迎えは、さすがに電車を使う。  そんな日の夕飯は、個人経営の古惚けた佇まいの居酒屋で済ませることにしている。キラと出会ってから外食続きの中で初めて見つけた店。  指で押したら途端に崩壊しそうな一見粗末な見た目の店。初めて入った時は漏れ聞こえる客の物音を聞いて、連れて入って大丈夫だろうかと本気で不安になった。  だが大将と女将さんの人の好さと味の良さに、一回目で気に入った。  「あら

小説 俺が父親になった日(第五章)~誰かのために生きること(2)~

 それでもキラの存在は、腐り切った俺自身を多少なりとも「まとも」にしてくれた。  一人の…

Kazuyoshi Hara
1か月前
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小説 俺が父親になった日(第五章)~誰かのために生きること(1)~

 朝ご飯は大事だ。俺は実家を出て以来ロクに食べていなかったが。  一応見た目はまともなも…

Kazuyoshi Hara
2か月前
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小説 俺が父親になった日(第四章)~昨日の敵は今日の友(3)~

 俺は駿に何をできたというのか?  我が息子に対して何もしなかった。莉紗に任せたと都合の…

Kazuyoshi Hara
2か月前
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小説 俺が父親になった日(第四章)~昨日の敵は今日の友(2)~

 「困るんですよね。保護者がコロコロ変わるなんて、子供にとって…」  「すみません…」 …

Kazuyoshi Hara
2か月前
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小説 俺が父親になった日(第四章)~昨日の敵は今日の友(1)~

 「どうしたんですか?」  やや甲高く響くその言葉は、てっきり早朝から汗だくの俺に向けら…

Kazuyoshi Hara
2か月前
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小説 俺が父親になった日(第三章)~薄っぺらな覚悟(2)~

 親らしいことなんて殆どしなかった。彼女に責任を全て押し付けてしまった。  むしろ自分の…

Kazuyoshi Hara
2か月前
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小説 俺が父親になった日(第三章)~薄っぺらな覚悟(1)~

 「あんた…やっぱりバカだったか」  いきなりその言いようはないだろう。  「あんた、そんなに子供好きだったか?自分の子供も育てられんのに」  何も言い返せない。でも後ろのほうは、いくらなんでももう少し言い方があるだろう。  「あんたにもちぃとは情ってもんがあるのは分かったわ。でもね、人一人育てることがどれだけ重大なことかが分からんから、そんなこと平気でできるんと違うんかね?」  「……」  受話器越しの母親の声が容赦なく俺を責め立てる。  部屋は思いつく限りの子