小説 俺が父親になった日(第五章)~誰かのために生きること(3)~
そうは言っても、ほどほどに気を抜かないと、とても続かない。
雨があまりに酷く降る日の送り迎えは、さすがに電車を使う。
そんな日の夕飯は、個人経営の古惚けた佇まいの居酒屋で済ませることにしている。キラと出会ってから外食続きの中で初めて見つけた店。
指で押したら途端に崩壊しそうな一見粗末な見た目の店。初めて入った時は漏れ聞こえる客の物音を聞いて、連れて入って大丈夫だろうかと本気で不安になった。
だが大将と女将さんの人の好さと味の良さに、一回目で気に入った。
「あら