新しい旅立ち
店を閉じることにした。
2013年4月に開店してから10年。
CAFE SLOWは、旦那君の大切な場所だ。
頑ななまでに徹底した仕事で、
場を創り、メニューを磨いた。
けれど、脳に受けたダメージは、
彼の高次機能に障害を残し、
医師は包丁と火を使うことを止めるよう忠告した。
事業とは、可愛い子どもの様でもあるが、
時に、モンスターの様に担い手を飲み込むような恐ろしさをもつ。
人生は長い。
新しい世界へ向かおう。
旦那君の左半身は麻痺が残り硬さが見られるが、幸い、器用な彼は右利きである。
あの繊細なクロワッサンサンドや、
綺麗な字や、器用な絵が頭に浮かんだ。
カフェという「表現」を10年間形で残し、
次は新しい形で「表現」をする。
これは、新しい人生の旅立ち。