選挙にまつわる二択の話。
こんばんは、華子です。
選挙へ行くことを促すTwitterの盛り上がりを尻目に、ある発見と感動を覚えていました。
みんなの選択肢が当然のごとく
「選挙に行く」「選挙に行かない」の二択である、ということについてです。
みなさんは「選挙に行けない」という選択をせざるを得ない人たちがいることをご存知でしょうか。
性別欄が存在する為に選挙に「行けない」有権者がいることをご存知でしょうか。
今日は、選挙にまつわる二択の話をします。
選挙では「なりすまし投票の防止」や「男女別に集計するため」に性別欄が設定されています。
選挙の性質上、本人確認は選挙法違反を取り締まるために必要な事項です。
しかしその本人確認が、トランスジェンダー の人にとって大きな障害になる場合があります。
以前投稿した「意外と知られていない話。」で書いた通り戸籍の性別変更には、現状とてもシビアな条件が設けられています。
そのためトランスジェンダー の中には、戸籍の変更を行わず、外見の性別と戸籍上の性別とが異なる状態で生活をしている方が少くなくない数存在しています。
それにより投票所で外見と戸籍の性別の齟齬からなりすまし投票を疑われ、性別の確認をされてしまうといった事態が起こってしまいます。
知らない人たちの前で自分の性別が明らかにされることは、とても耐え難く、つらいことであり、怖いことです。
またその当事者の中には「埋没」といって、周囲に自身がトランスジェンダー であることを伏せ、社会的には自分の望む性別で生活を送っていらっしゃる方もいます。
周囲への強制的なカミングアウトやアウティング、自分の生活が脅かされる不安、性別の確認をされることが苦痛で選挙に「行けない」有権者が存在しています。
もしこの性別欄があってもなくても良いものであるならば、それが存在する事で選挙に「行けずに」いる有権者が存在する事を知ってもらい、廃止もしくは第三の項目を設けるなどして、「行けない」という選択肢が早く消えることを私は望みます。
いくつかの自治体では、性別欄を撤廃している地方も存在しています。
2月に行われた愛知県知事選では、県内54市町村のうち34市町村が投票所入場券に性別欄を設けませんでした。
今日も女川在住のトランスジェンダー の有権者が、投票所の性別の確認をやめてほしいとして、選挙管理委員会に要望書を提出しました。
私も微力ながら署名させて頂きました。
今後、理解が進み、地方・都心関わらずトランスジェンダー の有権者が安全に選挙に行ける環境が整っていくことを望んでします。
つまり何が言いたいかというと、そんな現状があるのでTwitterでみんなが「行く」「行かない」を呟いているのをみて、
「あ、そうか、みんな「行けない」って選択肢を持った経験がないんだ。すごい羨ましい。」
と思って感動したのです。
それってすごい事です。
「行きたいのに行けない」なんていう気持ちは、本来味わわなくて良い気持ちです。
「行ける」ってすごい恵まれている事です。
どうか、享受してください。
蛇足になりますが私自身も、なりすましを疑われることこそなかれ、保険証や公的な書類で、氏名の横に並ぶ「女」の文字を目にする事がとても苦痛で、20歳をむかえ選挙権を持ってからも数年、選挙に行く事が出来ませんでした。
その理由に加え当時の私は、公なものが私を守ってくれる事は絶対にないのだろう。何もしてくれないだろう。じゃあ行く意味ない。と思っていました。
現在では整備されているトランスジェンダーへの様々な配慮や言葉は当時存在せず、大方のことは本人のわがまま、という文脈で整理されていました。
沢山の場所で「前例がない」「わがまま言うな」という言葉を聞きました。
私たちは「想定されていない人」だから。
選挙の公約で語られている権利というものが、私に約束されているものとは到底思えず「真っ当に生きている普通の人」に当てはまらなければ、その権利は施行されないような気になっていました。
しかしある年から、苦痛を押し切って選挙へ行くようになりました。
選挙で変えてほしい事以前に沢山のつまずきがある私たちですが、このデコボコ道を舗装して、私よりもっと若い世代の子が同じ辛さを味わうのを防ぐことは、大人の務めだと思ったからです。
今年も私は選挙に行きます。
ただしそこは現状、私たちにとってデコボコ道です。
権利を誰しもが平等に使えるように、このデコボコ道の舗装の過程を知って、手を貸してくれると、嬉しいです。
選挙に「行けない」という選択肢がなくなるように。
選挙に「行けない」という選択肢がない人は、それは幸せな事と思って享受していきましょう。
自分たちの将来の為に、自分の後の世代の人たちの為に。
華子
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