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ご質問はやはりこれでした

「電力会社の憂鬱」をご購入いただいた方から複数のコメントをいただいています。ありがとうございました。
「あなたは原子力推進なのですか反対なのですか?」という質問をいくつかお寄せいただきました。
これです。まさにこれが原子力の一番の「不幸」だと考えています。
常に、賛成か反対かという対立軸に引き裂かれます。
そもそも日本の高度成長を支えるエンジンとして国民的合意の下でスタートしたはずなんですが。。。まあそれはさておき。

現場を離れ、今は報道でしかわかりませんが。。。
反対する人は、感覚的、感情的、感傷的すぎるような気がします。
確かに福島県でいまだに避難生活を強いられる方々は気の毒で、福島第一の現場の様相は悲惨というほかありません。しかしながら、原子力を廃止させるための、押すべきボタンはこれではないような気がします。
鉦や太鼓を鳴らして電力会社に押し寄せたり、プラカードを持ち国会や官邸を取り囲むことでもないと思います。なんの生産性もありません。
また司法判断を求めるのもおかしいと思います。
確かに裁判官は司法試験を上位でパスするほど優秀な方々であるのは事実ですが、法学の対岸にあるような難解な原子力技術のことをどこまで理解されているのか疑問が残ります。司法判断で原子力を止めることはできますが、廃止させることはできません。最高裁の判断次第ですが。。。
かたや推進する方々の主張は一方的に過ぎると感じています。
上から目線で「わからん者は黙っとけ!」的な雰囲気がいつも見受けられます。説明会でのやらせ事件のような姑息なこともありました。反対論とまでいかなくても、心配論さえ聞く耳を持たないのかと疑うことがあります。
推進するために改めるべきことも多くあるはずと思っています。

私自身の原子力に対する立ち位置です。

原子力現場にいた人間ですので現段階では「世界一厳しい規制委員会の技術基準をパスしたプラントから順次再稼働」という現政府の見解に賛成です。
原子力規制員会が求める規制基準がどのようなもので、電力会社がどのような対応をしてきたかを知っているからです。
現在再稼働を認められているプラントは、恐らく東日本大震災以上のあらゆる災禍にも耐え得る対策を打てていると考えます。

ただし、あくまで「技術的には」です。

原子力規制委員会は、技術的に何を想定し、どう対策したらよいのかを考えますが、誰が運営(運転)しているかについては興味もチェックする権限もありません。
1951年の電力会社再編以来70年間にわたり連綿と続き、完全に錆びついている「企業体質」「企業文化」が今後の原子力の安全運営の障害になることは間違いありません。
これは小説のテーマでもありますが。。。
大幅な「電力システム改革」でこれをブレイクスルーするしかないと思っています。現状、送配電の法的分離が進められています。これは既存電力会社の傘の下で送配電部門を切り離したというだけで、何の改革でもなく、電力業界の構造は全く変わりません。
完全に現状体制解体の方向に移行し、出来れば原子力部門のみ全国統合し、国の責任で運営に当たるべきと考えます。
原子力推進は元々国是ですし、実際に何か起きると一民間会社の責任で処理できないことは、福島第一原子力発電所の例でも明らかです。
これには反対派・賛成派とかいう対立軸ではなく、冷静な国民的議論が必要ですが、結果、原発ゼロが時代の流れなら、受け止める気持ちはあります。電力会社自らが招いた結果ですから。

長期的には将来のエネルギー政策を熟慮すべきと思いますが、原子力以上の経済成長エンジンはこれから何年も世に出るとは思えません。
再生可能エネルギーに日が当たりますが、現段階では夢物語にすぎません。
問題は多い、それでも原子力を選択するのか。「原発ゼロ」そのかわり経済規模の縮小やむなしとするのか。どちらをとるのか。
これも国民的議論が必要です。
原発ゼロを目指せば、当然GDP世界3位などというのは無理でしょう。
でも10位とか15位の国は本当に不幸せでしょうか?
別のところにも人間の幸せはあるのでは?
コロナ禍でそう思いました。
そこまでの「覚悟あるエネルギー政策」が必要と感じます。
少し極論でした。



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