「電力会社の憂鬱」第10話
徳山副社長室
徳山営業担当副社長の部屋で、天童は直立不動で、みじろぎもせずに立っていた。
「あの後、NRの西田社長と技術本部長は、新聞記者の猛烈な追求を受けて辞任された。それは君も知っているな。」
「はい。新聞やテレビで。」
「あれから社長に頼んで、問題の想定問答を見せてもらった。
NRの事故に関する部分は、社長いや地経連会長が発言された通りに記載してあった。
営業部員が伊賀から渡されたものとは別のものだったということだ。
ファックスでは不鮮明で、会長にお見せするのには失礼だということで、地経連の報道担当者があとで届けにきたらしい。」
「どこかで誰かが差し替えたということでしょうか。」
と怪訝な顔で天童。
「伊賀は間違いなく、NRと擦り合わせたものを持って行かせたと言うし、真相は闇の中だ。
それよりも問題は事実だ。
会長の想定問答には『NR了解済』と朱記してあったし、君の印鑑も押してあった。」
「その点は申し訳ございません。
前にも申し上げましたが、あの日、別件でどたばたしており・・・。」
「言い訳はもういい。秘書部長に会長会見以上に重要な仕事なんて、あるはずがない!」
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