「畳み人」という選択 / 設楽悠介
この本は幻冬舎の編集者である設楽悠介さんが、あらゆる場面において活用することのできるスキルである「畳み人」について、自身の経験を交えながら書いている本です。
まず、「畳み人」という言葉についてですが、ある事業に関して、アイデアを出す人の元で具体的に実行に移す実行部隊で、1を10にしたり、100にしたりする人のことで、一方で0を1にする人を「広げ人」と言っています。
このアイデアを実行に移すスキルは、業種問わずどこにでも通用するビジネススキルであり、部長と課長、課長と現場リーダー、顧客と営業等など社内外問わずあらゆる場面で生きるスキルだと思います。
畳み人の条件を本書でいくつか上げていましたが、その中のいくつかを抜粋して挙げてみます。
(1)広げ人のアイデアをまず面白がる
(2)常に複数の選択肢を持つ
(3)ある程度の決定権を持ち、その範囲をあらかじめ決めておく
(4)相手とその先にいる人の状況を想像してアクションを起こす
(1)広げ人のアイデアをまず面白がる
広げ人がアイデアを出した直後は、気持ちが盛り上がっており、自分のアイデアが世界一だと思っています。そこで、広げ人は「難しい」「コストがかかる」という意見を求めているのではなく、「面白い」という共感を求めているのです。そこで畳み人としてすべきことは、1番初めに面白がり、アイデアの共犯者となり、その後で具体的な話をしていけばいいのです。具体的な話をしていく時には、広げ人の足を止めないために最低限のリスクを伝えるだけでいいのです。
また、広げ人は朝令暮改であっても、文句を言ってはいけません。広げ人は、常に外の世界を見ており、その変化を見てアイデアをアップデートしているのです。成功するためには、1つのことにこだわるのではなく、状況に応じて柔軟に対応することが求められるのです。
(2)常に複数の選択肢を持つ
(1)とも関連してきますが、畳み人は広げ人の熱量を下げたり、足を止めないようにしなければなりません。何か問題が発生し、事業が進まず、モタモタしていると広げ人の熱量が下がってしまい、飽きてしまいます。そうならないために常に考え得るリスクを想定し、それに対する選択肢を考えておき、いつでも方向転換できる状態にする必要があります。
(3)ある程度の決定権を持ち、その範囲をあらかじめ決めておく
事業を円滑に進めるため、また、社内の雰囲気を良くするためにも決定権を持っていなければなりません。身の回りで信頼されている上司の特徴を考えて見るとほとんどが決定権を持っている人だと思います。一方であまり信頼されていない人は、上司の御用聞きで伝言ゲームをしているような人であることが多いと思います。後者のような人がいると、自分自身で判断ができないため事業が進みにくく、下からの信頼も薄いため、社員の士気も下がってしまい、何もいいことはありません。そこで畳み人は、ある程度決定権を持ち、その範囲については後で問題にならないよう明確に決めておく必要があります。その範囲が広ければ広いほど上下の信頼も得やすく、広げ人の負担を減らすことでより「広げる」ということに集中させてあげることができます。
(4)相手とその先にいる人の状況を想像してアクションを起こす
畳み人は物事を円滑に進めるために、社内外問わず、相手やその先の人を状況を想像して、動くことが重要です。まず、社外については、例えば打ち合わせなどを行った後に、その担当者は資料を社内に持ち帰り、上司に説明し、承認してもらい、それから案件を進める場合が多いと思います。その打ち合わせがどんなにうまくいったとしても、上司からストップがかかってしまっては何の意味もありません。そこで必要なのは、担当者が上司に説明しやすい資料を作ることです。また、社内においては、社員がどういうことを考えて働いているかを考える必要があります。社員の働く目的と会社の方針があまりにもずれている状態では、業務が円滑に進むはずはありません。そこで、まず、社員がどういう思いを持って働いているか把握し、それに合わせて業務の振り分けを考えるべきであり、もっと言えば、入社の段階で、スキルなどよりも、考え方や共感性を選考基準にすべきだと思います。
このように挙げてみましたが、本質は
「広げ人の熱量をどれだけ高い状態に保てるか」
ということに尽きると思います。
自分自身が今「畳み人」であるのか「広げ人」であるか
を認識することで今すべきことが見えてくると思います。
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ここまでは、自分が畳み人である場合でしたが、ここからは自分が広げ人になったケースについて述べていきます。
広げ人と畳み人では考えることが全く違います。
具体的に意識すべきことは
・視点は内ではなく外
・できるだけ自分でやらず、人に任せる
・嫌われる勇気を持つ
上で述べたように広げ人は、世の中の状況に敏感に反応し、進むべき方向を定めなければならないので、視点は外に向いていなければいけません。
また、広げ人は畳み人の経験が豊富な場合が多く、自分でやってしまった方が楽だと思ってしまいがちですが、それでは広げることに徹することができないので、任せられることは全て任せるべきです。
もう1つは、嫌われる勇気を持つことです。広げ人は、無理難題を言ったり、朝令暮改であったりして、嫌われたりすることがありますが気にしてはいけません。広げ人の目的は事業が成功することなので、その目的に大して真っ直ぐ進んでいけばいいのです。
※嫌われる勇気という言葉を私が使ったのは、アドラー心理学の本である「嫌われる勇気」という本が私自身好きだったという理由なので、こちらも興味がある人は読んでもらいたいです。
以上、「畳み人」という選択の紹介でしたが、こちらについては、KindleとAudibleでも販売しているので興味がある方は是非読んでもらえればと思います。もともと、私は初めにAudibleで聴きましたが、他のビジネス書に比べ、内容が入ってきやすいと思ったので、読書が苦手な方や通勤中などに聴きたい方などは特におすすめです。
また、著者の設楽さんが作った「風呂敷畳み人サロン」というオンラインサロンもありますので、興味がある方は見てみるのもいいかと思います。(とはいえ私も入ったばかりですが💧