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【クリア】復讐譚でも炎上しなかった起源作。アサシン教団の全ては古代エジプト信仰から始まる【アサシンクリードオリジンズ】
あらすじ
舞台はプトレマイオス朝末期の古代エジプト。物語は自由の追求のために戦うアサシン教団と強力な管理による世界平和を指向するテンプル騎士団の前身である「古き結社」との今後数世紀に渡り繰り広げられる戦いの起源を追っていく。
個人的初プレイのアサクリシリーズだったが話の繋がりも違和感なく、自分のようにこれから始める人にも一番入りやすい内容でおすすめである。
クリア時間は45時間ほどで終わったがそれ以上に話の内容やステージボリュームも厚く、ゲーム体験としては疲労感も残る濃い時間と長い期間を要した内容だった。
メリハリがないため長時間は続かない
ストーリー上暗殺がテーマなために基本的なアクションはステルスアクションゲームになる。
相棒である鷹を上空に飛ばし相手の陣地の状況を確認しながら自分でプランニングし暗殺で敵を全滅させる気持ちよさと中毒性もあるのだが、
隊長格の人間でもレベルさえ伴えば簡単に暗殺できてしまい、基本的にやることが同じでメインクエストの大半のアクション操作に面白味が段々欠けてきてしまう。
見つかってしまえばそこで戦闘にもなるのだが基本攻撃ごり押しで簡単に倒せるために1対1の駆け引きの面白さはあまりない。
中盤を超えて闘技場のイベントあたりからようやく防御の固い相手との直接勝負も出てくるがここもレベルさえ基本的に伴っていればアクションの駆け引きはとくにいらないまま倒せてしまう。
ラスボスになるフラウィウスとの一戦で初めてそれっぽいタイマンにもなったが先述と同じような理由であっさり終わってしまったのはあっけなかった。
基本的に暗殺ゲームだと思ってもらえば問題ないがサブクエ含めてクリア条件になるような戦闘はやることが同じなため一日どっぷりやりこむゲームにはならなかった。
意外とクリア率が高くなかった理由
正直広大すぎて困るほどのオープンワールドの世界観は素晴らしいのだが、
イベントやエリア別に難易度がかなりレベルに依存しており尚シビアだったのはある。
先述した通りメインが暗殺なために自分のレベルが相手に追い付いてないと折角忍んで攻撃しても倒しきれない。尚且つそこで逃げられればよりレベルの高い仲間を呼ばれて一瞬で返り討ちに合うこともしばしば。
メインクエも推奨レベルより+2ぐらい上げなければスムーズにクリアはできず、ごり押して行ってもレベル差だけで瞬殺される。
そのため結局サブクエによるレベリング作業がゲーム時間の半分以上を占めるほどになっていくのは途中からめんどくさかった。
オープンワールドゲームの設計としてはなかなかメインに移りにくい設計にしたのは上手いと思ったし正しいが、
中盤以降は特にサブクエもやることがメインと同じでマンネリ化してくるためクリア率がそこまで高くなかった理由もこの辺で離脱する人が多かったのかもしれない。
サブクエの話自体は復讐ではなくメジャイ(警察)の身分として市民に寄ったイベントになるため、バエクを操作するうえでメインだけをストレートでクリアしてもかなり味気ないものにはなっていただろう。
ただレベル判定がシビアな割に周りを護衛している隊長格にレベルを合わせたら、メインのボスの方がレベルが低くて弱体化してしまうバランスなどは個人的に残念だったところもあった。
アサシン教団起源の話になるオリジンズ
アサシン教団とは
中世ヨーロッパにおいて、イスラム教シーア派の分派であるイスマーイール派の一派「ニザール派」に存在したという神秘主義的なカルト教団であり、伝説によれば彼らはアッバース朝、セルジューク朝、その他多くのイスラム帝国王朝や、十字軍の要人らを狂信的に暗殺していったという。
アサシンクリードシリーズには、上記の伝説を基にした架空のアサシン教団が描かれる。
主人公バエクは謎の結社によって息子ケムと遊んでいたところを連れ去られ、誤ってケムが殺されてしまった過去から始まる復讐譚がメインになる。
復讐ゲームは何かとプレーヤーの胸糞さを誘うらしく炎上する作品もあったが、このゲームに関してその胸糞さがない理由はやはり舞台となるエジプトの宗教観とその没入にもつながるだろう。
古代エジプトでは良き死者は蓑の原、いわゆる天国に行くとされていた。そこでは現世と変わらない生活をしており、太陽の船が昇れば現世に戻るとも信じられていた。
バエクの復讐は不幸な死を遂げてしまった息子を蓑の原へ送れるよう救い出すことでもあり、その行いが現世に戻すとも彼は信じていたことになる。
最後までバエクは復讐として多くのものを手にかけるがそれは善悪だけでなく信仰としての行いが乗っている複雑さも市民との会話で当たり前に入ってくるのは難しくもあるが面白かった。
またそのメインから外れたサブではバエクがメジャイとして市民には徹底して守る行いも見せるため彼の両面性がよく描かれる。
息子は死んでも子供には同じ目線に立てる優しさで好かれている姿もあれば、市民を殺めるような操作やイベントも一切出てこない。
メインでは徐々に自分の復讐について違和感を持つようになり、手をかけるたびに苦しんでいく過程も描かれる。
結社の誘拐がきっかけではありながら、本当は自分が誤って息子を殺してしまったのが全ての始まりであったことを彼は認めて妻アヤとの考えに違いが出て終盤は疎遠になっていく。
この辺も宗教観から外れて父と母で相違していくのは妙なリアルさも出てくる。史実を広げながらもドラマ性は複雑かつ大人向けで厚い話に仕上がっていた。
そこから彼は父でもメジャイでもない「隠れし者」として妻アヤと共にアサシン教団を創設し陰の支配者として古き結社に対抗する組織を作って話は終わっていく。
バエク自身はその後復讐心から解放され穏やかに生きているだろうと想像したくなるがアサシン教団の歴史としてはその後幾度の争いを生んでいく始まりでしかないのも彼の悲哀をさらに漂わせていく。
妻アヤの思想には無理があった
プトレマイオスを暗殺したアヤはバエクと共にアサシン教団を創設するに至り、その後も体制に対する政治と暴力性に加担し支配しようとしていく。
アヤは現代世界に繋がるレイラと通ずる現代的な思想を持っており、宗教観から来るバエクの復讐観とは相違し、挙句には息子を忘れることで彼や過去を突き放す存在になる。
プレーヤーから唯一評価が悪いのもこの思想がゲーム世界に水を差す存在になってしまったからだろう。
アヤ自体は架空の存在だと思うがあまりに自立的な女性の理想を乗せすぎてしまって、母としても女性としても無理のあるキャラクターになったと思う。
その後彼女は創始者としてアサシン教団を直接創設し裏の支配者として積極的に政治や暴力に関わるようになる。
この辺りの女性のなりふりかまわない暴力と強靭さを見せているのも違和感があった。
いろんな作品を見てきたけど自分の利害だけで暴力を誇示して改革意識の強い女性の話は見たことがない。身の回り以外で暴力を行使してしまうのは総じて男性だけで女性は身の回りに収まる。
バエクが復讐譚から悟ったことに対してアヤが世界規模の母親による正義で教団を運営していく対立的な軸にしたい意図は分からなくもないが、いささか無理がありすぎてもやもやした。
現代編のレイラは彼女の思想に共感していくためにちらちら出てくるがこの作品に関してはあの辺の演出もいらなかったかなと思える。
総評
大事な世界史の一時代をプレイできるゲームという噂通り、ピラミッドの内部まで見える古代エジプトの世界観と信仰の見せ方は素晴らしかった。
レベリングや地味なパートも多い分大人向けなオープンワールドになるが、夏休み等でじっくり遊びたいゲームを選ぶなら間違いなくおすすめできる一本になる。
シリーズでは別物の立ち位置にあり評価も分かれる作品だったらしいが最新作の燃え方を見ていると日本人は厳しすぎるのかもしれない。