七つ下の君達に、伝えたい事がある。
塾バイト。
経験した事がある人、今している人はわかると思うが、高いんだ。時給が。
私は誇れる様な動機でこのバイトを始めたのではない。
でも、今君達の前に立てることは、とても誇りに思うよ。
22歳。このバイトを始めてから三年がたった。中学一年生の頃から勉強を教えてきた四人の生徒達は、あっという間に受験生になった。
集中しないお喋り大好き携帯チラ見常習犯の生徒達。
集中しな!!!!!!
って何度も怖い顔をした。
ひやひやしたこともあったけれど、年が明けてからは、皆しっかり受験生の顔になっていた。
そして、先日無事に志望校の合格判定と共に、この塾を卒業していった。
「先生、この子達にお祝いの言葉をどうぞ。」
塾長から促されて生徒達の前に立つ。
私は、君達よりたった七つしか先に生まれてきてないけれど、その少しの差で得た物が、何かしら君達の糧になれば良いな。
そんな願いを込めて、私は彼等に言葉を贈りました。
「卒業おめでとうございます。
皆、しっかりと自分が掲げた目標に向かって努力し、それが実ったことは大変嬉しいことです。
まあ、硬い挨拶はここまで。
皆はこれから高校生になります。いろんな人と出会います。その中には、良い人も悪い人も、半々ずつくらいいるし、それはこの先どこへいっても変わらないです。
だから伝えたいのは、自分を攻撃してくる人は、すぐに無視しちゃってください。
嫌なこと言ってくる人もいるし、気が合わない人もいる。そんな人達からは、自分から距離を置いて、自分を守ってください。
君達がどれだけ良い事をしても、刃の先を向けてくる人はいます。だから、そういう人と無理に関わって、心を疲れさせないでください。
逆に、大切だと思った人の事は、とことん大切にしてください。皆なら言われなくても出来るね。
とことん向き合ってください。
とことん自分の言葉を紡いで、相手に気持ちを伝えてください。
必要ならば、とことん、ぶつかり合ってください。
高校生になったら、想像以上に色々な世界が広がります。そこでもし、何か悩む事があって身動きが取れなくなったら、呼んでください。すっ飛んでいきます。
答えは用意できないかもしれないけれど、選択肢を増やすことは出来るかもしれません。
伝えたい事はひとつだけ。
いつまでも皆の味方です。
うわー人間関係めんどくさーってなったら、あ、あの先生あんなこと言ってたなって思い出してください。サイゼかマックで会議しましょう。財布の紐を緩めて待っています。」
高時給だったから始めたんじゃなかったっけ。
先生いま、随分くさいこと言ってるよ。顔真っ赤だよ。話なげーなって自分でも思ったよ。
それでも伝えたかったんだ。
先生って呼ばれる度に、君達が大切になっていった。
進め、進め。自分達らしく。
卒業おめでとう。
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