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情報系の資格試験の構造を整理する(特にAzure)


はじめに

ITエンジニアの実力を示すものの一つに資格試験があります。
今回は、ITエンジニアの関心の高い資格試験についてまとめてみます。

試験の分類

まず、試験の分類についてみていきます。
IT系に限らず、資格試験は大きく3種類に分類されます。

①国家試験

国が主催する試験です。
国が能力を保証してくれるため権威があり、試験そのものの品質も高いのが特徴です。

IT系では、IPAが主催する情報処理技術者試験が該当します。

②ベンダ試験

民間が主催する試験で、製品やサービスを提供している企業が主催する試験です。
その製品やサービスに関する試験となっており、主催者=提供元企業であるため、提供元が必要と認識している知識や技術が出題範囲となるため、実力を示すための重要な証拠とできます。

IT系では、AWSやOracleやMicrosoftなどが行っている試験などが該当します。

③ベンダーニュートラル試験

民間が主催する試験で、特定のベンダに依存しない団体が主催する試験です。
特定の製品やサービスというよりも、プログラミング言語やドメイン(AIやデータサイエンティストなど)の知識を幅広く問われる試験となっています。
メジャー/マイナーの試験が大量にあり、試験によって、質や価値に大きな開きがあります。

IT系では、LPIC/LinuCやPMPやG検定などが該当します。

今回構造を分析する試験

今回は、自身の身の回りでニーズの高い下記4つについて、独断と偏見で構造を分析していこうと思います。

A. 情報処理技術者試験

情報処理技術者試験は、言わずと知れたIPAが主催する国家試験です。
情報系の試験といえば、まずこれを思い描く方も多いでしょう。

B. DX推進パスポート

DX推進パスポートは、2024年2月からデジタルリテラシー推進会が実施しているもので、実体は「ITパスポート」「G検定」「DS検定」をいくつ持っているかで、Lv1,Lv2,Lv3が取得できるというものです。

C. AWS認定試験

AWS認定試験は、名前の通りAWS(Amazon Web Service)が主催するクラウド技術の認定試験です。実施団体もAWSとなっています。

D. Azure認定試験

Azure認定試験は、こちらも名前の通り、Microsoft Azureに関するクラウド技術の認定試験です。実施団体はMicrosoftとなっています。

A.情報処理技術者試験

試験概要

  • 実施団体:IPA

  • 試験日:年に2回 + 一部試験はCBTで年中受験可能

  • 試験方式:試験により異なるが基本的に午前が選択式。午後が記述式or論述式

  • 受験料:7,500円

試験一覧

試験は全部で13区分あり、レベルによって以下のように分けられています。

試験の内容は、試験の名称に概ね現れているため、ここでは一つ一つは掘り下げずに、代わりにリンクをつけますので、詳しく確認されたい方は公式さいとでご確認ください。

取得のパス

基本的に下から攻めていくのが王道で、下記のようなルートになります。

  1. ITパスポート

  2. 基本情報

  3. 応用情報

  4. 高度試験(安全確保支援士、ITアーキテクトなど)

ITパスポートは、入門的な位置づけなので、情報系の学部を修了した方は、省略して基本情報から取り始める方が多いように思います。

SIer/SESの企業では、新入社員などに基本情報の合格を求めることが多いようです。

また、基本情報相当のセキュリティとして、情報セキュリティマネジメント試験というものもあり、こちらはセキュリティ関連のお仕事をされる方は一旦取得し、上位の安全確保支援士に進む方が多いようです。

高度試験は、安全確保支援士をいれて、9種類あり、基本的にはそれぞれの専門性にマッチしたものを取得していくのが基本ですが、高度試験の中にも小論文があるものと、小論文が無いものがあります。

  • 小論文あり

    • ITストラテジスト

    • システムアーキテクト

    • プロジェクトマネージャー

    • ITサービスマネージャー

    • システム監査技術者

    • エンデベッドシステムスペシャリスト(2023年から論述式に変更)

  • 小論文無し

    • 安全確保支援士

    • ネットワークスペシャリスト

    • データベーススペシャリスト

実務経験と自身の専門性で受ける試験が変わりますが、応用情報の合格者は次に、安全確保支援士に進む場合が多いように思います。

B.DX推進パスポート

試験概要

DX推進パスポート自体に試験はありません。
DX推進パスポートは、「ITパスポート」「G検定」「DS検定」の3つの試験の組み合わせで認定されます。
なお、取得順番に制約はありませんが、ITパスポート試験は2021年4月以降の合格である必要があります。
また、DX推進パスポートは、自分で申請を行う必要があります。

試験一覧

  • ITパスポート:ITに関する基礎的なレベルの試験

    • 試験日:CBT方式でいつでも受験可能

    • 試験方式:

      • 全国の試験会場で開催(CBT)

      • 選択式問題100問

      • 試験時間120分

    • 受験料:7,500円

  • DS検定:データサイエンスに関する基礎的なレベルの試験

    • 試験日:年に2~3回

    • 試験方式

      • 全国の試験会場で開催(CBT)

      • 選択式問題100問

      • 試験時間100分

    • 受験料:10,000円

  • G検定:AIに関する基礎的なレベルの試験

    • 試験日:年に約6回

    • 試験方式

      • オンライン実施(自宅受験)

      • 選択式問題200問程度

      • 試験時間120分

    • 受験料:13,200円

取得のパス

前述の通り、順番に制約はなく、基本的に別の領域の試験のため、好きな順番もしくは、勉強スケジュールや試験日の調整がつくものから取得していくという進め方で問題ないと思います。

C.AWS認定試験

試験概要

AWS認定試験は、パブリッククラウドであるAWSの技能を問う試験です。

試験一覧

AWSの認定試験は、定期的に試験が追加・廃止されます。
最新のものは、2024年8月にAIプラクティショナーが追加され、12種類となっています。

ロールベースと専門性ベースの2つに大別され、ロールベースはレベルごとに、Foundational、Associate、Professionlと3つのランクが定義されています。

取得のパス

AWSの一つの登竜門になるのは、ソリューションアーキテクトアソシエイトとなっており、基本的なパスは下記のようになっています。

  1. Cloud Practitoner

  2. Solutions Architect Associate

  3. Solutions Architect Professional

ただし、Solutions Architect Associateから一気にSolutions Architect Professionalを取るのは、レベルが急激に上るため、他のアソシエイト級を取ってから、挑戦するのが一般的です。

アソシエイト級では、Developer Associateが開発者としては人気で、Developer AssociateからDevOps Engineer Professionalを取っていくルートもよくあるルートです。

アソシエイト級では1年。プロフェッショナル級は2年の実務経験が想定されていますが、普段使わないマネージドサービスもあるため、実務経験だけでの合格は比較的難しく、過去問対策などが一定量必要です。
逆を言えば、実務経験が浅くても試験対策をしっかり行えば合格は可能です。

すべての資格を取得し、なおかつ所属企業がAPN(AWS Partner Network)に加入している場合は、All Certifications Engineersに掲載してもらえます。

D.Azure認定試験

試験概要

Azure認定試験は、パブリッククラウドであるAzureの技能を問う試験です。

試験一覧

Azureにはわかりやすい一覧などが管理されていないため、Microsoft Learn Challengeの学習リストから一覧化をします。

試験には「XX-111」のようなユニークなIDが振られており、英字2文字がカテゴリを表し、数字3桁がカテゴリ内の試験の番号となっています。ただし、900が初級であることは固定なのですが、番号が小さくなるほど上級になるというわけではありません。

  • AIシリーズ:AI関連の試験

    • 実施区分は2

      • AI-102/AI-900

  • AZシリーズ:Azure全般の試験

    • 実施区分は11

      • AZ-104/AZ-120/AZ-140/AZ-204/AZ-305/AZ-400/AZ-500/AZ-700/AZ-800/AZ-801/AZ-900

  • DPシリーズ:データベース関連の試験

    • 実施区分は7

      • DP-100/DP-203/DP-300/DP-420/DP-600/DP-700/DP-900

  • MBシリーズ:dynamics 365関連の試験

    • 実施区分は15

      • MB-210/MB-220/MB-230/MB-240/MB-260/MB-280/MB-310/MB-330/MB-335/MB-500/MB-700/MB-800/MB-820/MB-910/MB-920

  • MDシリーズ:クライアントアプリ関連の試験

    • 実施区分は1

      • MD-102

  • MSシリーズ:Microsoft365関連の試験

    • 実施区分は4

      • MS-102/MS-700/MS-721/MS-900

  • PLシリーズ:Power Platform関連の試験

    • 実施区分は6

      • PL-200/PL-300/PL-400/PL-500/PL-600/PL-900

  • SCシリーズ:セキュリティ関連の試験

    • 実施区分は5

      • SC-100/SC-200/SC-300/SC-400/SC-900

Azureに関連するという意味では、AZシリーズが中核で、AIシリーズ、SCシリーズ、DPシリーズが主だったものになります。
ランクは、初級(Fundamentals)、中級(Associate)、上級(Expert)、専門(Specialty)という4ランクがあります。

この4つのシリーズと4つのランクを図示すると以下のようになります。
ランク分けには、公式のロードマップを参考にしています。

※公式ドキュメント間で矛盾がある場合はロードマップを優先しています。
※DP-700は2024/11時点でβ版のためプロットはしていません。

取得のパス

こちらのブログをベースに情報を整理・要約していきます。
まず、中級までです。

続いて、上級と専門です。

※ロードマップでは、一部すでに無くなった区分もあるため、新しい区分への読み替えなどを行っています。
※言葉のゆらぎが多いのですが、基本的に情報源のまま作成しています。

まとめ

アーキテクト/開発者という目線でいうと、下記のあたりがマイルストーンになるのではないでしょうか。

  • 入門レベル

    • 【情報処理技術者試験/DX推進パスポート】ITパスポート

    • 【DX推進パスポート】G検定

    • 【DX推進パスポート】DS検定

    • 【AWS】AWS Cloud practitioner(CLF)

    • 【Azure】Azure Fundamentals(AZ-900)

  • 一般レベル

    • 【情報処理技術者試験】基本情報技術者/応用情報技術者

    • 【AWS】Solutions Architect Associate(SAA)

    • 【AWS】AWS Certified Developer(DVA)

    • 【Azure】Azure Administrator Associate(AZ-104)

    • 【Azure】Azure Developer Associate(AZ-204)

  • 専門家/リーダレベル

    • 【情報処理技術者試験】高度試験

    • 【AWS】Solutions Architect Professional(SAP)

    • 【AWS】DevOps Engineer Professional(DVP)

    • 【Azure】Azure Solutions Architect Expert(AZ-305) 


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