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日本語ワープロ黎明期と日本語入力

パソコンで日本語が扱えるようになっても、それは「扱える」ということであって、文書を入力するには高価なパソコンとプリンタ、そして専用のソフトを揃える必要があり、入力に関しても決して人にやさしいものではありませんでした。

そんな時代、パソコンではなく日本語の入力と印刷に特化した「日本語ワープロ」という装置が開発され、最初は装置のサイズもとても大きく、そしてとても高価なものでしたが、いくつかのメーカーが、それぞれ独自の方法で開発を進めていました。

日本語ワードプロセッサ

日本語ワープロワープロが製品化されるまで

https://www.jstage.jst.go.jp/article/bplus/2011/16/2011_16_16_74/_pdf

最初はタイプライターのようにオフィスで専門の人が、与えられた原稿から文書を作るという使い方でしたが、徐々に小型化され価格もこなれてきました。オフィスで使うにしても、まだ一部の人しか使えませんでしたが、文書を必要とする人が自分で操作して使うようになり始めます。

ここで質的な変化が起こります。文書を必要とする人が、まず紙の上に原稿を書いて、それを入力するという手順ではなく、何らかのメモなどは用意するでしょうが、ワープロに向かって文章を考えながら入力して文書を作るようになり始めたことです。これは特に多くの文章を書く人にとって大きな変化で、一部の作家さんたちが競うようにワープロを使い始めたようです。

ただアメリカなどでは既にタイプライターを自分で打つ人、打てる人は多くいましたが、日本ではそれまで紙と鉛筆の世界だったので、まずはタイピングの障壁は大きかったようです。パソコンを使う人にとっても、ブラインドタッチ(キーを見ないで打つこと)が出来る人なんて殆どいなくて、初心者向けPCのカナ配列はJISではなく五十音順にしていた程です。

誕生と発展の歴史

結局、考えながら打つという行為には思考を途切れさせにくいかな漢字変換が有利だということになり(ここで和文タイプのような入力方式や部首の組み合わせを使ったものが脱落しました)、かな漢字変換の方式と使いやすさが競われるようになりました。既にかな入力を会得していた人が少なかったことは、ここで独自配列が普及する余地を残し、JISだけではなく親指シフト、またはそれ以外のカナ配列も登場しました。

初期の代表的なワープロをあげておきます。

【東芝】 JW-10

【富士通】 親指シフトキーボード

【日本電気】 NWP-20

東芝が文節変換という入力方式を提案し、これはカナで文節単位で入力したところで変換キーを押し、結果の候補から目的の漢字を選択するという入力方法です。富士通はカナ配列を見直し巧妙に並べることによって、スペースキーの位置にある(だから親指で押す)2つのキーを使うことでJISよりも少ないキーで濁音の入力も1度に出来るようになっていました。また、これはまったく普及しなかったのですが、日本電気はM式という新しい入力方法を搭載していました。

【日本電気】 日本語ワードプロセッサ用新入力方式:M式

専用機に関しては、この後もそれぞれのメーカー独自の入力方式が採用されていましたが、パソコンで使う時にこれらが一般的に使えるようになったのは、フロントエンドプロセッサ(FEP)と呼ばれる拡張が取り入れられるようになってからです。

かな入力

日本語入力システム

フロントエンドプロセッサ

専用機が比較的安価で手に入るようになった頃でも、パソコンで日本語を使うには、まだまだハードルが高くコストもかかりました。そこで専用機がそれなりに使われたのですが、メーカーごとに入力方式はもちろん、使える漢字やフォントにも違いがあり、あるワープロで作った文書ファイルを他のワープロで読んで使うというのも、なかなか難しかったです。そんな制約があったものの、ワープロもパソコンも爆発的に普及し、キーボードを扱える人も、ここで大幅に増えました。いよいよ日本でも日常的にワープロやパソコンが使われるようになり、少なくともタイプライターは消滅しました。それでもまだまだ手書きはしぶとく残りましたけどね。

こちらもお読みいただければ…

君たちはどう漢字を入力するのか - 日本語入力黎明期

ヘッダ画像は、以下のものを使わせていただきました。https://commons.wikimedia.org/wiki/File:TOSHIBA_JW-10.JPG
Dddeco - 投稿者自身による著作物, CC 表示 2.5, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=3156587による

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