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プリンタのむかしむかし

はじめて使ったプリンタは

で書いたテレックス装置なんだと思います。これは「活字プリンタ」で括られるプリンタで、タイプライタのように印字する活字ヘッドが用意されていて、それを人間ではなく機械が打って印刷する装置です。大型機では活字をドラム状に並べて高速に印字できるようにしていました。調べると、こんな記事が見つかりました。

【富士通】 FACOM 655 ラインプリンタ装置

仕様を見ると秒あたり5行以上の印字速度。いくら英数字だけとはいえ、印刷されているところが目に見えない速さです。そういえば、大学で大型機に繋がっていたプリンタは、こういうもので、あたかも1行を1度に印刷しているように見えました。

1980年より前はパソコンが普及しておらず、マイコンで印刷をしたいときには、レジで使われているような感熱紙プリンタが転用されていました。この頃の感熱紙はあまり大きな紙にはできなかった(横20文字程度)のですが、マイコン相手であればあまり問題はありませんでした。

パソコンであれば最低でも画面と同じ横40文字は欲しいです。できれば両端に送り用の穴の付いたフォーム紙が使えれば言うことはありません。そこでミニコン向けに使われていたドットインパクトプリンタがパソコン向けに使われるようになりました。ヘッドにピンが縦に並んでいて、横方向に移動しながらタイミングを合わせてピンで紙を叩くことで、布製のインクリボンのインクが紙に移って印刷されます。

歴史を調べてみると、どうやらプリンタ用パラレル接続規格でもある、セントロニクス社が1970年に最初のドットインパクトプリンタを出したようです。パソコンで使えるようになった初期のものは、普通のモーターで常に一定速度でヘッドが動いていました。モニタに出力するようなもので1行のテキストデータをプリンタに積まれているフォントデータで展開して、オンのところだけピンを出すという感じです。ヘッドが制御されていないので、たとえ1文字しか打たなくても、右端まで動いていきます。

普通の英数字だけを印刷するのであれば、構わないのですが、プリンタに積まれているフォントデータは、必ずしもパソコンのフォントと同じではないので、記号などが違う文字に化けてしまうということもありました。

Apple][はグラフィクスが売りですから、画面をそのまま印刷したくなるのですが、文字以外の印刷が出来るプリンタはありませんでした(厳密には商品ではないですが熱転写プリンタをハックして好きなデータを送るように改造した人はいたような気もします)。

そこに登場したのがビットクイーンというプリンタです。日本のApple][ユーザだけには一世を風靡したのですが(他のパソコンはハイレゾがありません)、資料はどこにも残っていないようです。これは既成のプリンタのファームを改造して、フォントデータを展開したデータの部分を、本体から送ったビットパターンのデータでも使えるようにしたものだったと思います。1行の中をテキストとグラフィックを混在させることは出来ず、ある制御コードを送った後は、その行全体をビットパターンとして印字していたんだと思います。これでハイレゾ画面を印刷できるようになったのです(ハイレゾ画面はデータ的にはモノクロだったのも幸いでした)。

この後、日本製のパソコンが登場したあたりから、ドットインパクトプリンタも普及し始め、モーターもステッピングモーターに変わり、行の途中で折り返したり、戻る方向でも印字できるように進化していきました(そうそうカナ文字も印刷できるようになりました。Apple][はJPLUSになるまでカナ文字をもっていなかったので関係なかったのですが)。

この時代は、これとその仲間たちが売れていましたね。

MP-80

インクリボンの半分を赤にすることで2色印字ができるとか、3原色+黒の4色にして、カラーが打てるなんて言うのまで出てきましたが、ドット感が残るので、あくまで文字を打つもので、絵を出すのはなかなか厳しいものがありました。

いずれにせよ、ドットインパクトプリンタは、独特の大きな音が必ず出てしまうのと、機構を小さくするのが難しかったので、カーボンコピーが必要なオフィスでは長いこと使われましたが、ホームユースとしては徐々に使われなくなりました。

代わりに登場したのが「熱転写プリンタ」です。熱によって融解するインクリボンを使用し、サーマルヘッドの熱でこのインクリボンを溶かし紙に転写することにより印字する方式です。熱を十分に伝えるためにドットインパクトプリンタに比べると当初は印字速度が遅かったのですが、あの独特な音がしないので、夜でも安心して使えました。機構も小型化しやすかったようで、こちらのほうが安価なものも多く、こちらが主流になりました。インクリボンは少し高くついたのですけどね。

この後、ビジネス用途にはコピー機と同じ原理で、1ページを1度に印刷してしまえるレーザプリンタに、ホームユースには熱でフィルムを溶かすのではなく、タンクに用意されたインクを紙に吹き付けるインクジェットプリンタが普及していきました。

最初は文字だけだったので、データを送るのもシンプルだったのですが、グラフィックを扱うようになったり、複数のフォントや漢字を扱うようになり、データを送るプロトコルも進化していきます。時代はGUIになり、文字を自由に拡大縮小、そして回転ができるようになると、データをパソコン側で作るのか、プリンタ側で作るのかの両方が試みられ、PostScriptという言語まで出てくるようになりました。今はプリンタ側にはフォントデータを持たないことになりましたが、16ビットWindowsの時代にはWindwosのフォントデータを使うのか、プリンタのフォントを使うのかがフォント設定に残っており、画面上と同じようにプリンタから出せるのか、なかなかわかりにくいものがありました。

プリンタをデバイスとしてみた時、BASIC時代はLPRINTがおなじみで、OSになると名前がLPT:だったりlprだったり。またキューの取り扱いがいろいろであるとか、ネットワークプリンタだと、どのプロトコルを使うかとかで扱いが大変とか。それに、だいたいは詰まるものですし、さらに別の部屋にあることも多くて、今でも世話が焼けるデバイスです。世の中で紙が使われる頻度が減って本当に助かります。

参考
プリンター

ラインプリンタ - 行を印刷の単位として扱うプリンタ

プリンタ - 誕生と発展の歴史

プリンタって写真が残っていないなぁ。装置自体はまだどこかにありそうなので、探してみよう。ヘッダ写真はhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Printer_dot_matrix_EPSON_VP-500.jpg から使わせていただきました。

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