オンリーさん 約束された豊かな生活
━━ これは豪華な生活ですね。
金ちゃん) うん、これはかなり豊かなね…ゆとりのあるお姉さんですよ。
部屋に必ずあるのが、店屋もん
金ちゃん) この人たちは決して炊事をしない。近くに蕎麦屋さんがあって、そこから出前を取っている。
━━ ああ、出前を取っていたんですね?
ハニーさんたちが愛した「かめさん食堂」
━━ 「かめさん食堂」のメニューは、主にどういったものが?
金ちゃん ) 「かめさん食堂」は何でもありました。頼めば何でも作ってくれる。「卵焼き」って言えば卵焼きを作ってくれるし、「秋刀魚、焼いてくれ」って言えば、秋刀魚の開きを焼いてくれる。
━━ なるほどなるほど。
金ちゃん) だからハニーさん方は、ずいぶん重宝というか便利にしてました。
おかみさんは差別をしなかった
金ちゃん) 「かめさん食堂」は、おかみさんが、お姉さん方を差別、区別しない。
━━ あぁ。
金ちゃん) 良いおかみさんなんですよ。
他のお店はね、お客で来るから「お姉さん、お姉さん」ってね、そんときだけ、あれだけれども、普段は「パン助」呼ばわりですからね。
まあ、面と向かって「パン助」っていう言い方をするのは、私は聞いたことはないけど、お姉さん方が離れたあと、そこへ買い物に来たお客さんと話している時に、「あのパン助はよう」っていうような言い方してましたよね。
そういう店が多かった中で、「かめさん食堂」のおかみさんは決して蔑む言葉を使わなかった。だから、自然とお姉さん方も集まったんです。
お姉さん方は自分で炊事はしませんから…というより、炊事をする場所がなかったから、「かめさん食堂」を頼りにしていた。「かめさん」が、だいぶ安かったってこともありますけどね。
━━ なるほど。そうすると、お客さんの中で、ハニーさんの割合というのは、どんな感じだったんですか?
金ちゃん ) 殆ど(笑)。限りなく100%に近いんじゃないですか。
━━ ハニーさんばっかりだった!?
金ちゃん ) そうですよ! 結局ね、お客さんって変なもんで、ハニーさんがいるところへ行かないと言うか、行きにくい。
というのは、差別しているから、行きにくくなっちゃうんじゃないですか。
━━ あぁ~…
金ちゃん) ハニーさんたちが大勢いるところへ行ったって、一緒にテーブルで食べるってことが出来なくなっちゃった。
ハニーさんをよく思ってない人たちが、ハニーさんがいっぱいの「かめさん食堂」に行くっていうことは、難しかったんだと思います。
“パンパン”に向けられた、まなざしの変容
金ちゃん) 「私がこうやって、今、生きていられるのはお姉さん方のおかげなんだ」と。「お姉さん方が良いお客さんでいてくれたから、私は食べて来られたんだ」というようなことを言ったんですよね。