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4.旧日本統治時代にタイムスリップ?

海南島滞在中、私は南部の主要都市である三亜のホテルに宿泊していた。
欲張りにも、せっかくの海南島滞在なので、2大都市を両方とも味わいたいと思ったからだ。
三亜は熱帯気候と美しい海岸線で有名で、人口では海口、儋州に次ぐ3番目の規模だが、海南省の省都である海口に次いで、一般的には三亜が第2の都市と呼ばれる。
戦時中は日本海軍が南方進出の際の重要な軍事拠点ともなった。

滞在初日。私は上海から三亜鳳凰国際空港に到着した。
到着ロビーでは海南島らしい熱帯の魚たちが出迎えてくれた。
観光客らしい人々が興奮しながら水槽を泳ぐ熱帯魚をカメラに収めていた。

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空港から外へ出ると、予想外の殺風景だった。
まさにリゾート開発真っ最中というところで、工事中であった。
新幹線も延伸工事中。市街地は少し離れた場所にあるようだ。

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ホテルは空港近くにしたので、空港から無料のシャトルバスに乗って向かった。
辺りにはヤシが生い茂り、牛や馬などの家畜がそこらじゅうに放し飼いになっている。
拍子抜けするほどののどかな景色だ。

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初日は特に予定がなかったので、ホテルにチェックインした後で、三亜を観光することにした。
ホテルの受付でオススメの観光地を聞いたところ、奇岩の点在する海岸「天涯海角」を勧められた。
天涯海角は大変有名な景勝地で、清代には多くの文化人が訪れたという。
ホテルで行き方を聞いていたのだが、ガソリンが無くなったからバスを乗り換えてくれといきなり言われたり、道をニワトリの大群が塞いでしまってしばらく動けなくなったりで、目的地に着いたのは夕方になってしまった。

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天涯海角は非常に広く、ざっと歩いただけでも1時間ほどかかった。
帰りのバスが気になって早めに切り上げたので、もしゆっくりまわって売店でお土産を買って…とちゃんと観光をしたら2時間くらいかかったと思う。
当日は親子連れなどで大変賑わっており、いくつかある撮影スポットでは、順番を待つ人々で混雑していた。

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滞在2日目。三亜から海口へ海南東環鉄道と呼ばれる新幹線で移動した。片道の所要時間は2時間ほど。日本の新幹線と遜色なく大変快適だった。
ちなみに海口駅は市街地から大きく西に外れた農村地帯にあり、何も知らずに降りると私のように痛い目に遭う。
駅を降りると周囲に何もなく、人通りもまばらで目を疑う。

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さて、海口は人口200万人超の海南島最大の都市で、高層ビルや商店が所狭しと立ち並ぶ。
歴史的にも、1858年に清朝と英仏政府との間で天津条約が結ばれた際に開港された場所の1つで、現在でも西洋風建築や旧各国領事館などが残り、当時を偲ぶことができる。

そんな海口の歴史を知るために、私が向かったのが海口市博物館だ。
広い敷地に様々な展示がある。
ちなみにこの場所はもともと日本軍の駐屯地だったらしい。
常設展だったのか特別展だったのかは定かではないが、その中に「海南抗戦文物資料展」というコーナーがあり、海南島における日本軍との戦いに関する資料が展示されていた。

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展示では、日本軍占領前の海口の様子や、日本軍による海南島上陸作戦の様子。そして、日本軍の統治やそれに対する抗日運動について資料を交えて説明されていた。
ちなみにほとんど中国語のみの展示である。

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日本ではなかなか見つけることができなかった海南島上陸作戦当時の写真を豊富に見ることができた。
海口市街上陸前の日本軍の様子や秀英砲台を占拠した日本軍。戦勝パレードなど、分かるはずもないのだが、大叔父がどこかに映り込んでいないものかと必死になって探した。
また、海南島住民が日本軍占領後もゲリラ戦法を用いて抵抗を行っていたことも説明があった。上記の写真のような極めて簡素な道具を用いた戦いだったようだが、日本軍は非常に苦しめられたようだ。
海南島に派遣された多くの日本兵が、来る日も来る日もゲリラに苦しめられ、終わりの見えない掃討戦を行ったことを証言している。

海口市博物館を後にした私は、日本統治時代の海口の様子をとどめている海口老街へと向かった。
西洋風の建物が建ち並び、歴史的な建物の場所には説明看板がある。そこには、日本統治時代にこの建物がどのような役割を果たしたかについて記載されている。

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例えば海南書局。ここには日本統治時代に報道部が置かれており、芥川賞作家の火野葦平が滞在していたこともある。

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景観保護のために、中華人民共和国となって以降に建物につけられた看板などが取り外された痕跡もいくつか残っていた。
私が、海口老街を歩きながら、およそ75年前に大叔父が見た光景や歩いた道と極めて近いものを経験できていることに驚きを隠せなかった。

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