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男、「山澤 清」という生き方。

「人類が気づかないなら、もう捨てちゃえばいいんだよ。もうタイム・リミットよぉ。時代の要請がないんだもの。」
葉に衣着せぬものいいで、茶目っ気たっぷりに笑う。
御年、76歳の山澤清(やまざわ きよし)さん。

今でも、研究対象の日本海の海藻を求めて、水温4℃の日本海に
ウェットスーツ1枚で潜り、
東京から共同研究先の大手企業様が打合せに来ると、対応し
そして、他のスタッフの誰よりも力強く野菜やハーブを愛する。
(そして、時間ができるとパチンコに明け暮れる)

何とも、誰にも真似できない生き方である。
実は、私はこの師匠の農園に現在、"弟子見習い"としてお邪魔させて頂いている身。
過去に、山澤さんの登場する記事を見てここへたどり着いたのだが
周囲の友人などへ説明する際、何度も一言で彼を表そうと試みたが、難しかった。

「何か自分に看板をつけなさい」などと言われる現代の型からは大いに逸脱する
何とも説明し難い、経歴の持ち主だ。
ゆえに、唯一無二であり、この地球上、もしくは銀河系を探しても
同じことをしている方はいないだろう。
それだけは、ほぼ確かである。
無理矢理タグを付けると、「スーパーナチュラリストシャーマン」といったところか。
いや、でも何かしっくりこない...

因みに、これまで行ってきた事業だけ取り上げても
✔ハーブ栽培
✔在来野菜の生育(主に種取り)
✔化粧品製造(日本初の、個人としての化粧品製造免許取得者)
✔養鳩
✔養蚕
✔海洋研究事業(某大手企業との共同研究)
など数多ある。
しかも、これらを山澤さん含めほんの十数人程度のスタッフで行っているのである。
何というパワーだろう。

そして、これらの複数の事業は互いに関係し合っている。
例えば、養鳩事業は、有名フレンチや有名中華のコース料金の素材の食用鳩として卸されているが
その糞は、堆肥として、農園の土作りに活かされている。
また、鳩の餌も元々は農園のハーブを与えていたようだ。
(今でこそ、「ハーブ鶏」なども売られているが、これを40年近く前から実践していたのだ。)
また、農園で育てたハーブを使って石鹸や化粧品を作る。
ここ数年で始められた、在来養蚕事業も、「小石丸シリーズ」として化粧品のラインナップ入り。

全て、循環しているのだ。
現在進行中の海洋研究のプロジェクトも、これまでの植物や微生物の深く広い知識があってこその
ものである。

海の、植物プランクトンや海藻など含む生態系(生物ピラミッド)と、陸地の生態ピラミッドの相関性何て、東京などで、忙し(いふりをして)あくせくビル群で暮らしていると
忘れてしまっていたかもしれない。

日本は諸外国と比べても、圧倒的な海洋国。
国土の周りにある、海洋資源を活かさない手はないのかもしれない。
(私自身も、本農園にお邪魔して以来、いかに自分が勉強不足だったか、俯瞰的に物事を見られていなかったかを痛感させられるありがたい機会を頂いている。)

さて、話は冒頭の会話に戻る。
「人類が必要としなければ捨てる」
とは、日本に古来から存在し、日本の風土で代々受け継がれてきた「"在来種"の野菜の種子」のことを言っている。

この農園では約40年に渡り、"在来種"や"固定種"の種子を約600種近く(※2024年3月時点)繋いできた。

事務所前に陳列された
たくさんの「在来野菜」の種たち

この量は日本でもおそらく最大規模で、"在来種"は普段我々がスーパーなどで目にする大半の野菜が当てはまるF1種(人工的に作られた、1代限りの雑種)とは対極にある。
これらは、収量や形の均一性など「効率性」においては便利だし、利益重視だと合理的な面もあるが
1度種を使うと次世代は出てこない。
そして、このF1種を作るためにも"原原種"として在来野菜の種が必要で
この種が途絶えてしまうと、F1種すら作れなくなる。
F1野菜は、1度使えばまた種苗会社さんなどから種を買う必要があるが
在来野菜は種取りをきちんと行えば、半永久的に使えるサステナブルな種でもある。

様々な在来野菜の種子たち(キク科ごぼうなど)
様々な在来野菜の種子たち(セリ科人参など)
様々な在来野菜の種子たち(アオイ科各種など)
様々な在来野菜の種子たち(イネ科小麦など)

そして、農園にお邪魔して以来再三頂いているのだが、何より在来野菜は本当に味が濃く、滋味深い。
「野菜の恵みを頂いている」としっかり分かる味がする。
これは、"微量ミネラル"と言われる鉄や亜鉛、銅などの量に依存すると思われる。
つまり、栄養たっぷりの滋味深くそれぞれの野菜ごとの個性ある味わいなのだ。
▼より詳しい、在来種とF1種の違いは以下。
https://upfood.earth/species/#:~:text=この種は何代,したものを指します。

そんな、貴重な在来野菜をこれまで約40年に渡り根気強く
「種取り」(=農家さんとして、収穫し食べる分を出荷するのとは別に、今後に繋げる優良な種を保存して繋いでいく行為)を行ってきたのが山澤さんである。
何とも胆力のいる行為である。

これらの種には、"未来の食"を担うポテンシャルとパワーがあり
1度その種が途絶えてしまうと二度と取り戻すことはできない。
日本の在来生物である、トキが1度絶滅してしまったように。
食の根源、更に言うと人間の生命活動の根源である
野菜の種子は、もはや石油や穀物などと同様、我々の生命の維持には欠かせない"メジャー"の1つである。
昨今、サプリメントなど手軽に必要な栄養素を摂取することもできるが
このような合成された化合物を摂取するのがベターであるか、天然の植物から摂取するべきかは、安易に答えが出るであろう。

我々は、新たな品種、"糖度が高い"、"見た目が綺麗"、などといった分かりやすく
「見える」表面的な情報などに踊らされ、もしかすると本当に大事なものを失ってきたのかもしれない。
"You are what you eat.(人は食べたものそのものである、人は何を食べるかだ)"とも
言われるが、人は食べ物によって体を構成しているし、それなりのものを接種していると
それなりの体になる、ということであろう。
当然、"食"は「生きる」こととも直結している訳である。

そんな、栄養たっぷりの野菜を土壌の研究・改良から
長年しっかり取り組み続け、愚直にやり続けた男、それが山澤清氏76歳である。

話していると、人懐っこく愛嬌もありながらも
本質に素早く切り込み、忖度なく物事の核に迫る。
まだまだエネルギッシュであり
若くも感じるし、永遠にこのままハイパワーでやってくれそうなのだが、次の世代へのバトンパスも考えていらっしゃるようである。
「もう、この種たちは社会の要請が無ければ、処分してしまう」
これは、全国から種を集め、各地のおじいさんやおばあさんの言い伝えを元にその種を繋いできた
山澤さんなりのケジメということだろうし
この先、持続的に引き継いでいく人、仕組みがなければ彼の手で抹消する、という世の中への皮肉とある種の諦めも含むのかもしれない。
もちろん、僅かな期待も含んで。

ただ、これまでたくさんの事業もスタート
そしてクロージングも行ってきた山澤さんの引き際は、きっぱりしている。
この会話を最初にした、2024年2月6日から起算して"400日"で種を処分するという。
ただ、処分しない選択は1つあり
10万人(日本人口の約0.1%)より何らかの方法で問合せがあれば
その期間を、1年延ばす、とのことである。

彼は、電話番号も公開して良い
とのことで、以下の番号にて
次のような、何かしらの意見を待っているとのことである。
①種を残して欲しいという意見
②今回のような経緯に至った思い、そして意見や質問
③いらないから捨ててくれ
④興味なし

必ずしも、「残してくれ」という声じゃなくとも
何らかお問合せがあれば1票/10万にカウントされるという。

御年76歳にして、週6日の勤務日のうち週2回ほどはスーツでピシッと決めて農園に現れる山澤清さん。

お陰様で、既に問合せも多く頂いているが
是非、問合わせて、日本の食の未来、在来野菜の未来、種の未来に対して貴重な一票を投じて欲しい。

問合せは以下である。
山澤 清さん
080-1847-8616
(火、木 日中を除く10:00-24:00)

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