ホーム・スウィート・ホーム(Home sweet home)
友人がアメリカ・ナッシュビルの旅から戻ってきた。
ハリケーンの影響で天気がすぐれなかったけれど
車での旅を楽しんできた様子である。
友達夫婦も一緒で面白かったのよ、でも
国境に来て”Canada”の表示を見たとき
ああ帰ってきたんだってほっとしたわ
まさに彼女の
home sweet home である。
夫が元気だったころ
決まって夏には彼の生まれ故郷を訪れ
ときにはビジネスに私もついて行って
何度も車で国境を越えアメリカに入国した。
でもカナダに戻ってくるとき
Home sweet home
その頃の私に
そんな気持ちはなかったなあ
日本で生まれ日本で暮らして
いつまでたっても私にとって
北米はひとまとめのカテゴリーなのかもしれない。
初めてカナダトロントのピアソン空港に降り立った時のこと。
迎えに来た夫のバンに乗り込んで
高速道路400を北上するうちに日はすっかり暮れ
トロントから離れていくうち
あたりが暗くなっていく
街の明かりが遠ざかり
そしてとうとう
見えるのはヘッドライトで照らされた路面と反射板のみとなるのである。
眠らない東京に30年以上住んだ後のことで
その暗さが
怖すぎたっけ・・・
でも気づいたのである、
何年か前のこと。
一時帰国の日本から戻ってきて
もう夫のお迎えがない空港から
湖畔の家に戻るUberの中
同じ時間帯のフライトで
空は暮れゆく。
トロントの街の明かりがなくなるころ
迫ってきたその闇に
ああこの地に戻ってきたんだなと思った私。
暗闇に
Home sweet home(笑)
そういえば
ちっともスィートでない暗がりもあった。
東北の震災のあと東京で電力消費制限があったころ。
関西に住む父の病状が思わしくなく
新幹線で東京と京都を何回も往復した。
父の様子に重い気持ちで戻ってきた品川駅が
明かりの制限でなんとも暗かったのである。
そのころ私は一度目の婚姻の離婚問題も抱えていて
駅の暗さに
ああ、東京に戻ってきたんだと思うのである。
しかし今
一時帰国で日本に戻ると
渋谷の喧騒にちょっぴり
I'm home 感があるかもしれない。
ほっとするかどうかは別として(笑)
夫が亡くなったあとも
東京というかつていた場所に戻ることを放棄して
私はカナダの湖畔に帰る。
ヘッダー写真はこの町に住む友人が贈ってくれた
Home sweet home
それを立てかけているデコイは
Animal Trap Company of Americaのアンティーク(多分・(笑))
ディアハントだけでなく水鳥も撃ってきた夫は
自分でもデコイを彫って作っていたが
いくつかのアンティークコレクションもしていて
このデコイはそんな中のひとつである。
水鳥の音とともに一日が始まる湖畔。
スクランブルエッグは最後にバターを落とすんだ。
室温のバターを。
朝食を準備する夫の声は聞こえそうで聞こえない。
けれどここが
今の私の
Home sweet home