![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/85275799/rectangle_large_type_2_4c62818c682c29d47776be676596e779.jpeg?width=1200)
断熱材入れ Day 2
地下の断熱材入れを始めたのはいいが、周りはガラクタもとい、建築材料であふれかえっている。それらは何に使われる、あるいは使われてきたのか見当がつかない。
夫が、材料は揃ってる、あとは人手だけだと言っていたわけだから
”とりあえずすべて残しとくモード”で置いてある。
とりわけ奥の壁に立てかけられている物。ドライウォールはわかるが発砲スチロールような巨大な板はなんだろう?
![](https://assets.st-note.com/img/1661102770390-cNfU152MZb.jpg?width=1200)
写真下に横たわっている白くて長い物は壁の巾木
写真左側に見えるピンクの断熱材の続きを入れて行く
重くて持ち上げられなくても、大抵のものはドラッグandドロップならぬドラッグand ロールで動かせることを夫が亡くなってから体得している。
一人掛けのカウチでさえ、ドラッグ and ロールでひとりで二階まで運んだのだから。
少しずつずらして、開いた部分から断熱材を入れて行くことにする。
2011年、私は東京で英会話教室を営んでいた。
3月のある日、講師のひとりが電話をかけて来た。
今日はクラスないよね?一応確認で。
まだ二十代後半のアメリカ人講師である。
え?あなたのクラスをキャンセルした覚えないけど?
もう5日間家から一歩も出てないんだ。それにアメリカ政府のチャーター便があって、日本国外に出ることを推奨されてる。僕の知り合いのアメリカ人はみんな前の便で脱出してる。だから僕も明日出る。クラスにはもう行けないんだ。
はああああああああ?
私はショックで眩暈がした。彼がクラスをドタキャンしたことではない。そんなことはどうにでもなる。それより私たち日本人は東京でそれまでと同じ様に今日を過ごしているのに、アメリカ政府は東京にいる自国民に日本からの退去勧告を出していたのだ。無料の政府チャーター便まで出して。
放射能汚染からアメリカ人を守るために
福島原発事故の一週間くらい後の事である。
私の人生のカオスの渦にさらなる加速がついた気がした。
一方夫はといえばその頃、カナダ・オンタリオにある湖畔で、家の地下を立ち上げ始めていた。
![](https://assets.st-note.com/img/1661133433770-xDNcdhHF79.jpg?width=1200)
今回は右に見える手前の窓ふたつから壁にかけての断熱材入れ
お互いの存在などまだ何も知らなくて
薄っすら雪の積もる地面で夫が寝袋に入った夜、私は茫然としながら代替の講師に連絡を取っている。
私たちは変わらず1万キロの距離を保ったまま同じスピードで太陽の周りをまわっていた。私が夫に追いつけるわけはなく夫が私に追いつけるわけもなく。
夫のこの建築中の寝袋エピソードを、夫とハンティングを共にしてきた同居人に話したことがあった。
だって12月のディアハントなんて大抵そんなもんだぜ
いやはやはやそうだった。ハンターは寒がりでは務まらない。少なくともいや、温かくてもマイナス20Cの夜である。
しかしこの湖畔の家は暖かく作られていて、そんな真冬も私たちは半そでシャツで過ごすことができる。
ヒーターのおかげだけではない。
夫は何度も何度もその気密性を自慢していた。
さて地下の断熱材入れ。壁際にあるドライウォールを移動させたい。
![](https://assets.st-note.com/img/1661136038824-Tf1zFNOk2H.jpg?width=1200)
手前に引っ張ろうとするがびくともしない。ひどい重さだが薄いので、支え切れなくなったら割れてしまいそうだ。
夫がドライウォールの寸法を切って壁に入れていた時のこと。ちょっとこっち持っくれと言われて下敷きになりそうになったことがあった。呆れて夫は私にはもう何も頼まなくなったのである・・・。
そんなわけで断熱材入れDay2は6枚ほど入れただけで終了。
仕事から戻ってきた同居人にドライウォールを動かすよう頼むしかない。
はっきりいってこの湖畔の田舎町で、周りにいるほとんどの人が私より力持ち。女の人も驚くほど力が強い。
庭や農場や家作りの作業を小さいころから手伝っているからだろうか。
そして大抵の人に家作りについての知識がある。
ああでも私ときたら。
この歳になるまで、家は誰かが何もない地面から立ちあげたものだって事、頭の外に置いてしまっていて。
日本にいるときは、お金を払ってやってもらうものだとばかり思っていた。スペシャリストに。
家の基礎の打ち方を知識としてさえ知らない。自分が住んでいる家なのに。壁紙を選ぶだけで家を作っている気になっていて。
まったくキミは何も知らないんだから
知ってるわけないじゃない
大体わかろうともしないだろ?
だってその分野で働いてないし!
それをレイジ―っていうんだ!!
なんですって?!
キミは何も知らない、夫のこの言葉が発端で幾度喧嘩したことだろう。生活のあらゆることで。こっちもカチンと来て必ず言い返すのでバトルはいつもどんどん大きくなった。
でも本当は夫の言う通りだった
何も知らなかった
知らない事さえ気づいてなかった、ずっと。
夫と出会うまで
今回使っている断熱材はR-12です・・(笑)
いいなと思ったら応援しよう!
![ながつきかず](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/29218130/profile_15b8241aee3fc19954e35e89fe88337e.jpg?width=600&crop=1:1,smart)