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蟹座と射手座 夫婦による、屋上ガーデンの破壊と再生

天井の防水作業もやっと終わり、2週間ぶりに、父の植木と土が屋上に運び上げられた。

これまで植木は二週間の間、地下のガレージに置かれた。その間に持ち上げるのが楽なように、少しでもいらない植木を減らすよう、職人さんから依頼された。それなのに、父(88歳)は、その間殆ど、植木に水も与えず乾燥させ、減らしもしなかった。

そんな父を見て、私は「なんて無責任な親父だ!」と憤慨した。自分の植木なんだから、なんとかしてほしいと思った。でも、実は父の行動の深層心理が痛いくらいわかっていた。

父と私は、もともと何も殺せないたち。
木が大好きな私にとっても、大量の植物がガレージに置かれて日々枯れていくのは心が痛く、その上、その中から選んで減らすのは、まるで死刑執行人のような気分だった。

多くの植物を種から育てた父にとっては、長い年月慈しんできた可愛い植物を殺すことは、とてもいたたまれなかったのだろう。私が処分を促す度に「どれも捨てられないよ。俺が育てたんだから」と繰り返すばかりだった。

大きく感情に流される父娘に変わって、頼りになる我が家のexecuter/ 実行人であり、executioner /執行人が、母(88歳)だ。彼女は昔から実務で何が必要とされているか直ぐに察知し着実に実行する。

まずは、屋上のフェンスにがっしり絡みついた3鉢のブドウのツルをナタでバサバサと解体していった。それが終わると巨大化する梅、柑橘系の木、ブドウ等のツル類や、危険なトゲの付いたサボテン、アロエなどに、処分用の印をどんどん付けていった。あっという間に、父の植木は当初の2分の1以下になり、土だけが残った。

父は、蟹座(太陽星座)。直面したくない、直視できないときは、殻に閉じ籠る。自分の内側を守ることで精一杯。母は、射手座(太陽星座)。難題に直面した時、アイデアを尽くして、やれることをやる。外に働きかけるエネルギー。

人生には、直面したくないような、難題がある。直視しなければいけないとわかっていても、できない人がいる。人は、それぞれ。

植木の持ち主が何もできない・やらない時、しなければ、更に悪い事態になる。それをカバーしてくれる人がいて本当に良かった。そして、反対もあったはず。だから70年近く夫婦でいれたのだろうか。

追伸:2週間後の土は砂漠化していた。沢山いたミミズやカタツムリはカラカラになって、発見された。大量にいた蝶か蛾の幼虫も見当たらない。一回破壊された自然は、どのくらいで戻ってくるのだろう・・・

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