欧州のインフレを生き抜けるか?
スウェーデンに移住した1年後、慣習や文化も良くわからないのに、小さな大学町に1LDKの小さなアパートを買った。
数年前に、そのアパートのローンを慌てて完済した。それは、1.7%だった住宅ローンの利率が、突如、3.4%に跳ね上がったから。この急な変化にショックを受け、ちょっと無理してでも、ローンは返してしまおうと頑張った。
その効果も束の間、世界中のインフレ、特にスウェーデンのインフレはひどくなるばかり。せっかく個人のローン利率は気にしなくて済んだのに、金融の利息以上の倍率で、アパート自体の管理費が毎年上がっていく。
今朝、その管理費が、来年から毎月1000 SEK (15000円) 上乗せされるだろうという知らせが届いた。
スウェーデンのアパートの多くは、暖房、温水、冷水は管理費に含まれている。「温める」費用が年々高騰している。そして、1936年に建てられた私のアパートは、ここ10年かけて、大規模な修繕工事を積み重ねてきた。
ヒーティング・システムをEcoタイプへ移行、全ての窓を気密性の高い3重窓へ全取り替え、手入れしていなかったアパート周辺の小道を舗装、ゴミ分別場所の枠をつけて固定化、等々。かなりの借金をして、改善を積み上げてきた。そのため、アパート自体が抱える借金に対する利息も、ものすごく上昇しているわけだ。
そもそも、外国人の私が、なんで借りないで、買ってるの?って思ったかもしれない。
それは、私が移住した17年前くらいは、借りるより買う方が簡単だったから。スウェーデンという国は、社会民主主義の国。資本主義国生まれの私には理解できないことが沢山ある。
当時は「移住」した気もなく、いつまでいるかわからなかったし、知らない国で不動産を買うなんて、あり得ないことだという「思い込み」があった。買う決断をするのに1年近くかかってしまった。
この国では、基本的に貸アパートの多くを地方自治体が持っていて、公共のシステムに自分自身を登録し、その順位によって空いているアパートを選べるというようなシステムだった。今はどうなっているのか知らないが、スウェーデン人の多くは、子供が生まれたら、大学へ行く頃に良い順位を得られるように、そのシステムに親が登録しておくものらしい(友人談)。
私のように、急に来たよそ者には、貸アパートは手に入りにくいものだった。商業的な借アパートもあったけど、私の行った2007年当時は、そのような業者の数は少なかったと思うし、どちらかというと高級な感じの物件が多かったように思う(体験談)。
賃貸しアパートも家賃が上がっているようなので、買うのも借りるのも、月々の経費はさほど違いはないのかも。
別に、アパートを買ったことを後悔してはいない。ただ、私が経験したことのない「目に見える」インフレはどこまで行くのだろう?とやはり不安になる。欧州にいると、ニュースで聞いたことが、すぐに生活に反映してくるのを感じる。危機感を体感できる感じ。
日本と北欧を行き来していて、日本にいるときは、なぜか世界ニュースは自分に影響のないこと、遠いこと、他人事みたいな錯覚に陥るのが不思議だった(コロナ以外)。メディアの話題も自国の細かいことばかり扱っているし、物価は安いままだからか、とっても幸せな国だなぁ、と思っていた。
その時代は、もう過ぎてしまったのかも。。。
先週末、いつものパン屋さんでペイストリーを3ヶ買ったら、1000円をオーバーして、ショックを受けた。急にあらゆるものが値上がりしてきたことを実感している。
幸せでいられる期間、無意味に心配することはない。ただ、世界で様々なことが起こっていることを認識することは超重要。いざ日本や自分に降りかかった時、変な情報に惑わされず、何を信じて行動するか、ちゃんと自分で判断できる人になっていたい。
追伸:この社会主義的なシステムは、良くもあり面倒臭くもある。持ち家なのだから、貸せば良いと思うが、基本的に投資マンションは禁止されていて、貸し出す際にちゃんとした理由がいる。また、基本的に何年も貸し出すのはだめで、「持ち主が住めないなら売りなさい」という考え。