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scammer(詐欺師)にお金を貸した話。

私の住むエリアの交通機関では、毎年夏2ヶ月間、電車もバスも乗り放題のサマー・カード(モバイル・アプリ)が発売される。この夏は1ヶ月くらいしか使う時間がなかったので、1枚850クローナ(約12000円)のそのカードを正規価格で買うのは高いと感じた。

それで、Facebookの「サマー・カード・シェア」グループで、1ヶ月分売りたい人のカードを探すことにした。学生時代利用した時には問題なく使えたし、スウェーデンのモバイル・ペイSwishは、お互いの本名、携帯番号、銀行口座がはっきりわかるので、悪いことをする人はそんなにいないだろう、と過信していた。

そのグループを覗いた途端、デンマーク人の女性がその「サマーカードを300クローナ(約4300円)で売りたい」と書き込みをしていた。慌てていた私は、その女性のプロファイルを深くチェックする前に「買います!」とメッセージした。

売主から直ぐに返事が来た。「私はSwish(モバイル・ペイ)を持っていないので、ボーイフレンドのSwishに送ってください」と、彼の名前と電話番号が送られてきた。

その時、一瞬「あれ?」と直感がいった。
なぜなら、そのボーイフレンドの名前はデンマーク的でも、スウェーデン的でもなく、とても中東っぽい名前だったから。私の直感は「もや」っとしていたけど、慌てていて理屈っぽいエゴが、「まぁ、国際カップルは沢山いるよね」といった。

直感を説き伏せ、早速300クローナをSwishで送金した。普通だったら、売主は1分以内に入金を確認でき、アプリ内でカードを買主へ届けることができる。ところが、1分待っても3分待っても届かない。私は、直ちにメッセージを書いたが、その後のメッセージは全て完全に無視された。

「やられた!」

冷や水を浴びたようだった。初めの直感が正しかった!売主が詐欺師に変わり、筋書きの全てが書き変わった。怒り、フラストレーション、犯罪者と関わっている恐怖心がブワァーと湧き上がった。どうしよう?メッセージを読まないならどうしょもできない。

その直後、私はコロナに罹患し、銀行や警察に連絡を取れる状態でなかった。1週間後、やっと電話をする力が出て、Swishを登録している銀行にアドバイスを求めた。

銀行:「まずは、その販売人に電話してみましたか?」
私:「えっ、Scammer/詐欺師にですか?」
銀行:「そうです。Swishは携帯番号登録だから、電話番号がわかるでしょ。まずは、電話してみてください。電話に出なければ、テキストメッセージを送ってください。」
私:「は、はい。やってみます。」

本当に不思議なのだが、私の頭の中では、サマーカードの販売人だった人物が、既にScammer/詐欺師という犯罪者に変わっていた。そのため、犯罪者に連絡を取ることは、とても恐ろしいことのように思われた。

でも、銀行のアドバイスだったので、取り敢えず連絡してみることにした。
まず、電話をかけてみたが、何回なっても取られないので、留守電になってしまった。それで、テキストメッセージを送ってみた。

「7月3日、あなたの売るサマーカードを買うために300クローナ送りました。でも、あなたはそのカードを私に送っていません。証拠となる履歴は全て残っています。もし返金しないなら、警察へ届けます。」

すると、驚くことに、1分もしないうちに返信がきた!

「あら、ごめんなさい。届いていないなんて、知りませんでした。返金しますが、今、手持ちのお金がないので、7月24日まで待ってくれませんか?その時、返します。」

私は、「オッケー」と返信した。

その直後、友人にそのことを話したら、「あんたはナイーブ過ぎる。2週間も待つ人いないよ!その間に携帯番号変えるつもりだよ。今すぐ返さなければ、今すぐ警察行きます、と言いなよ!」と言われた。

まさに。私はナイーブ過ぎる。既に一回騙されているのに、どうしてこの2回目のお願いを聞いてあげる必要があるのか?友人に言われた通りメッセージをしてみたが、結局、売主/詐欺師からは返事がなかった。

・・・
その後、警察へ行ったのか?

次の2週間、私は旧友を訪ねるためスイスへ行っていた。そのため、そのことをすっかり忘れていた。帰宅直後ホッとした時、不意にその日が7月24日だということに気がついた。だが、その日は疲れていて、早々に寝てしまった。

ところが翌朝、なんと「300クローナ入金」のお知らせが来た!

そんなことって、あるんだ。
結局、その売主は、scammer(詐欺師)なのか犯罪者なのか?
はたまた、お金を借りたかっただけなのか?

心はホッとし、清々しい気持ちだった。この詐欺師を一生恨まなくて済むことが一番嬉しかった。この詐欺師にお礼を言うのはおかしい。でも、私は何かに感謝していた。詐欺師にではなく、何かに。それで、以下の通りに書いて、送った。

私:「300クローナを今朝受け取りました。また、人間を信じても良いことを感じられたことに感謝します。」
詐欺師:返信なし

追伸: 結局、私たちの関係は、petty cashを貸したり、借りたりする関係だったの?本当に変なの。

scamming/詐欺は世界中にはびこっています。皆様もくれぐれも気をつけてください。

Image by Bee Felten Leidel from Unsplash

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