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オレンジジュースと、マーチングバンドの思い出。
娘がオレンジジュースを飲んでいる時に、ふと思い出したことがある。
小学6年生の7月。私はマーチングバンドの先頭で、学校の名前を持った札を持つ役を任されることになった。
小学校4年生以降は課外授業があった。吹奏楽か陸上どちらかを選択しなければならない。ピアノなんて習っていなかった私は、楽譜を読むなんてすごく嫌だったし、父の影響もあり走るのは好きで、迷わず陸上を選んだ。
そして、小学校6年の夏。札持ちの役は、吹奏楽をやっていない陸上のメンバーから選ばれる。私より前に決まっていた子がいたのだが、都合により参加できなくなったらしい。そしてなぜか、私と他に仲良しの友人何名かに声がかかる。
さっそく、声のかかったメンバーで話し合いをする。
「かっちゃんがやれば?」
他の友人にからかわれた。衣装はスカートで、私はスカートは大嫌いだったが、せっかくだからスカートを履けばいいじゃんと言われたのだ。もうそんな理由しか覚えていない。別にイジメられたという感じもないはずだ。けれど、学級委員なども「やって」と言われれば断れないタイプだった。
私の小学校の頃のいつもの服装は、ショートの髪に、Tシャツ&ショートパンツかキュロットで、あまり服にはこだわりがなかった。ただ、スカートは嫌いだった。理由は、なんか股のところがスースーするから。今もスカートは好きではない。…今となっては、足を出したくない、という理由だけど(笑)。
そんな私が、音楽室の準備部屋で衣装合わせをする。ベレー帽にブラウスに青いスカート。担当の先生に「似合ってるよ!」などと言われて嬉しくなった思い出は、未だに覚えている。私の母も覚えているらしく、「家に帰ってきてからも、衣装を着てルンルン気分だったよ。」と言っていた。
目立ちたくないハズなんだけど、やっぱり目立ちたい!そんな子ども特有の気持ちなんだろうと思う。でも、貴重な体験はできた。
7月末の本番になった。市内の花火大会の昼間に、各学校のマーチングバンドが行われる。駅の中心街を歩くことになっている。そして、その日は天候にも恵まれ、ものすごく暑い日だった。
スクールバスの助手席に座り、衣装を着た小学生と先生がギュウギュウに詰まったバスが所定の場所に着いた。アスファルトの上は、待つだけで暑い。陸上競技も暑いが、まだゴムのトラック上の方が涼しいんじゃないかと感じていた。さっそく、順番が来る。
先頭だったが、横には担当の先生が歩いてくれたので、ペースは考えなくていい。それでも、先頭というのはとても緊張するものだった。暑さと緊張で、歩いていたことはもう覚えていない。
私が今も鮮明に覚えているのは、帰りのスクールバスでの出来事だ。行きと同じように、ギュウギュウに詰め込まれた児童。皆、すごい汗をかいている。貰ったのは、パックのオレンジジュースだ。私は今も昔も、あんまりオレンジジュースが好きではなかったが、その時飲んだオレンジジュースはとても美味しく感じられたのだ。一気に飲んで、なくなった。
最初で最後の体験だった、マーチングバンド。私の中ではオレンジジュースとともに覚えられているのだ。40歳近くになっても、あの暑かったスクールバスで飲んだ酸味と甘ったるい感じは、まだ忘れられないのだ。なんてことないはずなのに。
子どもの頃の体験は、くだらないことでも貴重なのかもしれないな。