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【血圧と認知症の真実】血圧の薬を飲むと認知症になるのか!?

今回は、血圧の薬を飲むと認知症になるのかどうか、真実をお話しします。

少し前に、週刊誌やネットニュースでこんな報道がありました。

血圧の薬は、認知症になりやすくなる。

それ以来、こんな薬飲みたくないという患者さんが増えたように思います。

そこで今回は、しっかりと論文ベースでお調べした最新の情報をお伝えします。

血圧変動が認知症の原因?

ジョンズ・ホプキンス大学が2019年に発表した研究では、どうやら血圧変動が認知症の原因ではないか、という説があります。(1)

この研究は、なんと24年間にわたり、4.761名の血圧を追跡し続けました。
3年ごとに計4回の訪問調査を行い、その都度血圧を測定。そして、5回目・6回目の調査は、4回目から15年後に実施しました。

①15年たって、血圧はどう変化したのか。
②認知症を発症しているのか。

この2点の関係性を調査したのです。
測定結果をもとに、5つのグループができあがりました。

①ずっと正常グループ(中年期および晩年期の正常血圧)
②晩年高血圧グループ(中年期正常血圧→晩年期高血圧)
③ずっと高血圧グループ(中年期および晩年期の高血圧)
④晩年低血圧グループ(中年期正常血圧→晩年期低血圧)
⑤減圧し過ぎちゃったよグループ(中年期高血圧→晩年期低血圧)

それでは、5つのグループの認知症発症リスクをみていきましょう。

結果をまとめると、

高血圧は、認知症のリスク
血圧の低下幅が大きいとリスクも大きくなる
③ 降圧剤を使って、血圧を正常範囲内に維持することが大切。

この3つの結果をそれぞれ解説していきます。


①高血圧は、認知症のリスク。

高血圧は認知症のリスクです。

ずっと血圧が正常だった人に比べて、

•晩年高血圧グループ(正常→高血圧)では、16%リスクが高い。
•ずっと高血圧グループ(高血圧→高血圧)では、49%リスクが高い。

このように認知症のリスクは上がっています。

実際に高血圧のマウスは、脳にアルツハイマーの原因であるアミロイドβが蓄積していることがわかりました。(2)
脳には、血液脳関門といって血液中の不純物が脳に入らないようにする門があります。脳に入っても良い物質と、入ってはいけない物質を血液脳関門が選別しているわけです。

優秀な血液脳関門があるにも関わらず、アミロイドβが脳にたまってしまっていた。

この原因は、はっきりとはわかっていません。

一番可能性が高いのが高血圧だといわれています。

高血圧がずっと続くことで、血液脳関門の機能が低下してしまったため、アミロイドβがすり抜けてしまった可能性が高いです。

実際にアイルランドの研究では、降圧剤を飲んでいないグループよりも、飲んでいたグループの方が、認知症の発症リスクが61%も低かったのです。(3)

降圧剤を飲めば安心なの?

それもどうやら違う、というのが②の結果です。


②血圧の低下幅が大きいと最もリスクが大きい。

ジョンズ・ホプキンス大学の研究によると、

•晩年低血圧グループ(正常→低血圧)では、11%リスクが高い。
•減圧し過ぎちゃったグループ(高血圧→低血圧)では、62%リスクが高い。

降圧剤を飲むことで、血圧が下がり過ぎてしまうことも認知症のリスクです。

具体的には、血圧が90/60未満になります。

晩年低血圧グループでは、ずっと高血圧だったグループよりもリスクが高いところにも注目です。
これは、週刊誌やネットニュースで指摘されていた通りです。

この原因としては、脳の血流を調整する機能のためです。

脳には、血流を自動で調整する機能があります。
血圧は高くなったり、低くなったりと毎日変動しています。例えば、びっくりすると血圧は高くなりますね。反対に睡眠中は、血圧は低くなっています。

実際には血圧が変動するたびに、脳の血流は変化することはありません。
自動調整機能があるため、安定した血流を保っている
からです。

しかし、高血圧になるとこの自動調整機能が低下するのでは、といわれています。

そこにきて血圧が
下がりすぎてしまったら?

脳の血流を自動調整することができず、脳の血流が低下してしまうのです。(4)

実際に、脳の血流が低下すると、脳内にアルツハイマーの原因となるアミロイドβが増えてしまいます。(5)

高血圧は血液脳関門の機能を下げることでアミロイドβが増え、認知症のリスクが上がります。
しかし、降圧剤で血圧を下げすぎてしまっても、同様にアミロイドβが増えて認知症のリスクが上がるのです。


③降圧剤を使って、血圧を正常範囲内に維持ことが大切。

それでは、いよいよ結論です。

まず、高血圧のまま放置しておくのは、認知症のリスクが上がるのでいけません。

高血圧の方は、降圧剤の服用をしましょう。

そして降圧剤を飲むときは、低血圧にならない範囲で血圧をコントロールするようにしてください。

血圧を記録する血圧ノートを使うのが良いと思います。
薬局に行けば、大抵は無料でもらえるはずです。

万が一、血圧が90/60未満になることがあれば、主治医に相談して薬を変更してもらうのが良いです。

また、降圧剤は、ARB(アンジオテンシンIIタイプ1受容体拮抗薬)と呼ばれる、血管に直接作用しない薬が良いとされています。
例えば、ディオバン(バルサルタン)、アジルバ(アジルサルタン)、アバプロ(イルベサルタン)、ブロプレス(カンデサルタン)などです。

このタイプの薬は、他のタイプと比べて、脳の血流の低下が少ないからです。(4)
ただし、高血圧の原因や薬の飲み合わせなどが原因で、ARBが使えない人もいます。
ARB以外のタイプの降圧剤を使っていても、正常血圧範囲内であれば問題ありません。

薬に比べて、降圧効果がマイルドな生活習慣を改善することも重要です。

いつかは薬を減量しても良いくらい、最終的にはいらなくなることを目指して、引き続き頑張っていきましょう。


まとめ

以上、血圧と認知症の真実でした。

いかがだったでしょうか?

週刊誌やネットニュースでは、降圧剤の負の面ばかり強調されていました。
今回の記事で、皆さんの降圧剤に対する誤解を解くことができていれば幸いです。

今回の続きの記事は3つ。

血圧が高いことによるデメリットは、認知症以外にもあります。

むしろ、こっちのが生死に直結する分やばいかも

こちらの記事で解説していますので、あわせて読んでみてください。

血圧を下げるためには減塩、そう思いますよね。

確かに間違っていませんが、実は塩分だけでなくカリウムの摂取量も重要になってにます。

そんな塩分とカリウムのバランスについて解説した記事がこちら。あわせて読んでみてください。

血圧を下げるために科学的に最も効果のある食事方法が、実は見つかっています。

そんなDASHダイエットについて解説している記事がこちら。あわせて読んでみてください。

それでは、また次回の記事もよろしくお願いします!


参考文献

(1) Walker KA, Sharrett AR, Wu A, Schneider ALC, Albert M, Lutsey PL, Bandeen-Roche K, Coresh J, Gross AL, Windham BG, Knopman DS, Power MC, Rawlings AM, Mosley TH, Gottesman RF. Association of Midlife to Late-Life Blood Pressure Patterns With Incident Dementia. JAMA. 2019 Aug 13;322(6):535-545. doi: 10.1001/jama.2019.10575. PMID: 31408138; PMCID: PMC6692677.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6692677/

(2) Gentile MT, Poulet R, Di Pardo A, Cifelli G, Maffei A, Vecchione C, Passarelli F, Landolfi A, Carullo P, Lembo G. Beta-amyloid deposition in brain is enhanced in mouse models of arterial hypertension. Neurobiol Aging. 2009 Feb;30(2):222-8. doi: 10.1016/j.neurobiolaging.2007.06.005. Epub 2007 Jul 27. PMID: 17673335.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17673335/

(3) Hughes D, Judge C, Murphy R, Loughlin E, Costello M, Whiteley W, Bosch J, O'Donnell MJ, Canavan M. Association of Blood Pressure Lowering With Incident Dementia or Cognitive Impairment: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA. 2020 May 19;323(19):1934-1944. doi: 10.1001/jama.2020.4249. PMID: 32427305; PMCID: PMC7237983.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7237983/

(4) Muller M, van der Graaf Y, Visseren FL, Mali WP, Geerlings MI; SMART Study Group. Hypertension and longitudinal changes in cerebral blood flow: the SMART-MR study. Ann Neurol. 2012 Jun;71(6):825-33. doi: 10.1002/ana.23554. Epub 2012 Mar 23. PMID: 22447734.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22447734/

(5) Koike MA, Green KN, Blurton-Jones M, Laferla FM. Oligemic hypoperfusion differentially affects tau and amyloid-{beta}. Am J Pathol. 2010 Jul;177(1):300-10. doi: 10.2353/ajpath.2010.090750. Epub 2010 May 14. PMID: 20472896; PMCID: PMC2893673.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2893673/

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