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基本情報
龍 幸伸(たつ ゆきのぶ)先生執筆の、オカルティック怪奇バトル漫画マンガ
集英社「少年ジャンプ+(Webサイト&アプリ)」で2021年4月6日から現在も連載中
現在、既刊15巻
受賞歴
次にくるマンガ大賞2021 Webマンガ部門 第2位
全国書店員が選んだおすすめコミック2022 第1位
マンガ大賞2022 第7位
第6回みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞(2022) 第4位
メディア展開
2024年10月よりTBS系列にてアニメ化予定
大まかな紹介
幽霊を信じないオカルトマニアの少年・高倉と、
宇宙人を信じない少女・綾瀬は、
互いの理解を超越した圧倒的怪奇に出会う――…!
オカルティック青春物語!!
集英社「少年ジャンプ+」本作紹介より
導入
高校にて、制服姿の女子と、学ラン角刈りの男子が揉めてる
女子が回し蹴りを放つが、男子が前蹴りを放ち、ふっとんで決裂
初めての彼氏みたいだが、どうやら相手は金と体が目的でだった様子
クラスに戻り、女子トーク
女子は”高倉健”を神格化しており、顔が似てたから、という理由で付き合ったようだ
ふと横に目をやると、ゴミを投げつけられていじめられてる眼鏡の少年が居る
女子はその横に座り、ゴミを投げるのを阻止する
助けてもらった男子は、廊下に駆け出して礼を言いたい様子
「綾瀬桃さん、好きなのは分かってるんですよ!」
この少年も勘違いしてるが、女子「綾瀬桃」も勘違いしている
「オカルトが好きなんですね!分かってるんですよ!」
「気安く話かけんな」といいつつ、後悔したのか「宇宙人は信じてないけど、幽霊は信じてる派だから」
「いや幽霊なんて居るわけないでしょ?」「はぁ?」と見解の相違
「だったら勝負しようぜ!もし幽霊が居たらウチのパシリにするから!」
「見せてやりましょうUFO!もし見れたら綾瀬さんもパシリになってもらいますからね!」
夜、綾瀬は廃病院、少年は廃トンネルへ、お互い実況しながら行くことに
少年は老婆の化け物に出会う
電話越しの綾瀬は「絶対抜かれちゃだめ!ターボババアにかけっこで負けたら呪われるんだよ!」
そういう綾瀬も首の短い男性風の宇宙人3人に出会い、拉致されてしまう
綾瀬は下着姿でイスに束縛された状態で目を覚ます
「我々はセルポ星人、押すしか居ないのでクローン技術で増殖してきたが、生物的進化が起こらず、感情が消滅してしまった」
「なので、生殖機能を取り戻すため、アナタがたの性器(バナナ)がほしいのです」
脳波コントロールで屈服させられかける綾瀬
その時、ターボババアの顔した、手足の長い化け物が乱入してくる
「ターボババアにのろわれちゃいましたああ!」少年であった
姿が変わり正体?を表したセルポ星人と、ターボババアに呪われた少年のバトルが始まる
が、強力な念力に歯が立たない
綾瀬は霊媒師だった祖母の記憶を思い出し「気の出し方」を思い出す
突如、髪の色が代わり、超能力に目覚めてしまう
超能力に目覚めたが、宇宙人をやっつけたのは強烈な飛び蹴りだった
そこはUFOだった。宇宙人をふっとばし外壁に穴が開く
「ターボババアに乗っ取られた少年」という問題は依然そのまま
超能力でターボババアを少年から追い出すが…
「ソイツのイチモツはワシが持っている。その限りは呪いは解けねえ。ほしけりゃトンネルに来い」
墜落したUFOから脱出したが、これからを憂う
「あんたは超能力で呪いをおさえておかないと暴走するし、ウチは制服も財布もスマホも全部なくした」
一人で問題解決しようとする少年に、二人で強力しようと言う綾瀬
「ジブン不器用なんで…」なぜかドキドキする綾瀬
少年の名前を聞くと「高倉健です」
謎のときめきを感じつつ、一話終了
感想
出会いがしら「ジャンプもカオスになったなぁ」と思った
漫画喫茶でジャケ買い的に1巻めを読んだのが出会い
当時、ジャンプ+で連載、とか知らないので「ジャンプコミックスの表紙カバーの漫画」に見えてたし
初っ端から「えー、少年誌かつ学園モノでこんなんええの?」のカオス感がすごくて
初っ端から学ランの男が「やらせろ」言うてるわ、女子高生相手にミドルの前蹴りキメてるわ、クラスで露骨なイジメしてるわ、オカルトやわ心霊やわ怪異やわ…
「週刊少年ジャンプ」本誌かつ「ヒーロー思想」「友情努力勝利」なバイアスかかってる自分としては(勘違いしているとはいえ)衝撃だった
「最近はこういうのが許されてて、かつウケてるのかなぁ」
圧倒的なスピード感と疾走感、そしてそれを可能にする確かな画力
初期の敵が「スピード勝負」なこともあるけれど、キャラの動きもシナリオ展開もすんごい疾走感で進む
ギャグパートで人物がデフォルメされたり、スピードでパースが歪むようなケレンみもあるけど
崩すことはあっても、「この人節」とでも言うべき画風は一本芯が通ってる
特に自分が「この人ならでは」と評価してるのは「カメラアングル」と「構図」
オカルトスポットで宇宙人見つける時の「頭の上から広角レンズで撮ったような画角」とか好き
1巻読んだくらいじゃ「漫画の方向性」なんてわからない、ジェットコースター☆カオスとでも言うべき怒涛の展開
妖怪やわ超能力者やわ霊能者やわ宇宙人やわ呪いで変身おもしろ超人やわ…
なんか「悪く出たハルヒ」みたいなっとる
エログロに振るときに躊躇がない
初回、大真面目に下ネタだし、それでいて生命の危機やし、脱がされるし呪われるし…
その後も、よう裸描くし、描くからにはとびっきりエロく描くし、よう殴ってる絵や痛めつけてる絵描くし、そんときは躊躇がないし
「漫画はエンタメ!」という感じで、振り切ってる感じする
それ考えると「ジャンプ+」も「よう作家の描きたいように描かせてるなー」というところに好感を持つ
そんな「カオスで掴みどころのない作風」だけど、見方によれば「漫画の歴史へのリスペクト」でできてるんじゃないかな?という気がしてきた
その一つとして「多くの漫画(シナリオ)へのリスペクト」…なのではないか?と感じる部分
例えば
好きだったおばあちゃんをある時裏切って後悔してる…って生きとったんかい!とか
その生きとったばあちゃん、えらい回想と違って超絶若くてファンキーなんだが?とか
冴えない少年が敵に襲われて飲み込まれそう…になるけど逆に力を利用してカッコいいヒーローに変身!とか、
その利用してる敵の人格の影響で口調がワイルドになるとか
流石にヒロインがそっちのほうにドッキーン!ってなって…みたいなのはないけど
パロディでもオマージュでもないけど、その話のパーツパーツは「古典のアレンジ」を多く感じる
また「多くの画風へのリスペクト」…なのではないか?と感じる部分
例えば
ターボババアに呪われたときのアランカル感とかKBTITみあるし
ギャグパートで口を四角にして舌顎の歯が強調されるのとかハガレンの荒川先生感だし
その他藤子テイストだったりクレしんテイストだったり
割と「自分の画風」が食われない程度に、漫画史を彩った数々の画風を取り入れた7色の画風の持ち主…かも
多くの漫画を読み、多く描いて、「漫画を勉強した人」を感じた
この作者の龍幸伸さん記憶になかったんで一応軽く掘ってみたんですが…
小さい時から絵が上手く、20代の頃自信満々に100P描いた漫画を持ち込みし「ボロクソに言われ」て、アシになってイチから漫画の書き方を学んだ苦労人
賀来ゆうじと藤本タツキのアシスタントをし、その間「楽しんで描く」の背中を見て刺激を受けたと言ってる
ここからは推測だけれど、
初作をボロクソに叩かれ、アシ時代の修行・下積みを経て、多くの漫画を読み、多くの影響を受けた…のではないかなと
そんな「多くのものから影響を受けて、多くのものを蓄えた」作者が「練られたカオス」として描いてる本作だ、と仮定するに
多くの受賞歴から「現在の漫画のトレンド」がここにあるのではないか
まあ受賞は、連載開始1年後くらいの2年前が多いのだけど
「新人の迸る才能」とか「見つかってなかった原石」とかではなく、「考えて狙って作った作品」で「これがウケている」のなら、それは類型的な「今ウケる作風」なんじゃないかと
総評
少年漫画でも青年漫画でもない「男の子」漫画を読みたい人におすすめ
また(私見かつ独断だが)ここ二年ほどの「現在の漫画のトレンド」を感じるのに良さそう
最後までお読みくださり、ありがとうございます!
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