059_20240822_忍者と極道
基本情報
近藤信輔さん執筆の、ヴァイオレンス青年マンガ
講談社「コミックDAYS」にて、2020年1月より連載中
2022年1月から休載、2023年5月1日より連載が再開
当時のタイトルの読みが「しのはときわみ」だったが、後に改称
連載決定後「作画コンペ」が行われ作画担当に決定したが、製作途上で降板してしまい、作画も本人がすることとなった
既刊13巻
今作のメディア展開
2021年10月〜11月、大阪の画廊モモモグラにて原画展を開催
大まかな紹介
トラウマから笑えない少年・忍者<しのは>、
表向きはエリート会社員ながら裏では組を牛耳る極道<きわみ>。
そんな2人が出会った時、300年にわたる忍者<ニンジャ>
と極道<ゴクドウ>の殺し合いの炎が熱く燃え盛る!
孤独を抱えた漢達による、情熱と哀切に彩られた命のやり取り。
決めようか…忍者と極道、どちらが生きるかくたばるか!!
導入
西暦2020年、東京丸の内
取引先とスマホで電話しているリーマンと、パーカーの少年がすれ違う
凄い早業で少年が、リーマンのカバンから落ちかけたスマホを救う
「このケース、フラッシュ☆プリンセスの限定品っすよね」
道の真ん中でリーマンと少年はニチアサアニメの濃ゆいトークを始める
「君面白いなあ!私は輝村極道!”ゴクドウ”と書いて”きわみ”さ!君の名は?」
「多中忍者 ”ニンジャ”と書いて”しのは” 高校生っス」
別れ際、しのはに喋るカラスが話しかける
「パネェ〜〜 (なんか地名)速攻デオ願シャス」
墨田区某所の倉庫、入れ墨の極道が政治家のSPから銃を向けられている
「あっしをやれりゃあ、拉致った皆様は解放いたしやす、さあ打ちねぇ」
SPが引き金を引くより先に、極道が銃を抜いて額を撃ち抜く
傍らに、孫を抱いた女性都知事が座っている
極道は都知事の太腿を撃ち抜く
「アンタは”エサ”よォ、”奴ら”を誘い出すための…」
ガラスの割れる音と共に、都知事にイヤホンと目隠しがされる
同時に、ヤクザたちの首が一斉に飛ぶ
極道は言う
「来やがった、こいつを待っていた!極道界のおとぎ話…”裏社会(ウラ)で悪事(わるさ)かますと、忍者が来襲(く)る”」
銃を持つ極道以外の全ての構成員の首が飛び、極道の横に少年が立つ
「さっさと打てや、早打ち勝負だ!笑えねえんだよォ、極道のせいでよぉ」
極道が銃を打つと同時に少年は動き出し、玉が当たる前に”三本の指”で首を飛ばす
「忍手”暗刃”(あんじん) ブッ殺した」
その後、警察が倉庫で現場検証をしている
「極道は皆殺しですねぇ、はい”マルオシ”です(まるに忍とかいてマルオシ)、忍者案件」
その皆殺しにした忍者の少年は、多中忍者(しのは)であった
学校のクラスメイトっぽい少年が言う「多中は全然笑わねんだよ、無愛想ってレベルじゃねーよ」
「いつからだろう笑えなく成ったのは、やっぱアレか」
記憶には血まみれで笑う入れ墨の男の姿、極道のせいなのだろうか?
御成門、黒塗りの高級車の後部座席で笑ってるリーマン
「きわみさん、”素の顔”になってますよ」
「あ、ごめーん!やっぱ強いなぁ忍者」
男は輝村極道(きわみ)であった
側近は言う「どっかの誰かが組長やってくれりゃいいんですが」
きわみは答える「ダーメ!私、会社員が気に入ってんの”裏組長”ってことで勘弁してよ」
窓の外をみながらきわみが言う
「決めようか忍者と極道、どちらが生きるかくたばるか」
感想
最初「なんだ、この作品は…」と感じた
文字通りの「独自性」という意味と、漫画として「つかみどころがない」「書式が理解できない」という意味とで
前評判的に「名作」「おすすめ」という情報から読もうとなったので、先入観があった
一巻途中くらいから「この作品はどういう書式なのか」が分かってきた
主人公と敵側主人公は「表面上は相思相愛」「裏では絶対に相容れない宿命の敵」というキャッツアイ方式
古来より「圧倒的に勝ってきた」主人公陣営に対し、あるカリスマと開発した兵器により「劣勢→優位」へと敵陣営がひっくり返すところから始まる
8 vs 8 の個性豊かな能力者バトル
開幕で味方陣営が一人減った状態からスタート
「首を飛ばす」「”ブッ殺した”と宣言する」ということが、勝敗の決着を表すえあ
大体の漢字のルビは本来の読み方と違うものが振られている、という佐木飛朗斗文学に近いセリフ回し
…と、言う風に「超個性的な文脈」
「ほら、あの作品みたいな感じ」が、色々上げられるのだけど、どれも完全には重ならない感じ
「ミスフル」「バリハケン」の鈴木信也先生の作品の読後感にも似ている
絵だけピックアップすれば「ボボボーボボーボボ」の澤井啓夫先生のタッチも感じる
ただ、これらは「当時のジャンプの連載陣の雰囲気」という脳内の誤認によるものかもしれないけれど
なんとなく、読み進めると読後感が「押忍!!空手部」の似ているように感じた
絶望的な状況、(身体の部位欠損など)取り返しのつかない残虐描写、救いのない大規模な狂乱イベント、仲間の死を予感させる展開…
ま、これは思春期に読んだという原体験が、そう感じさせてるのかもしれない
読んだ人で「ああ、同じ同じ」みたいな人、居たらその感覚を聞いてみたい
物語の”悲劇方向へ”突っ走る救いのなさ、取り返しのつかなさ、絵の残虐表現は「シグルイ」に通ずるものがある…かも
作者を調べてみて「ああ、ジュウドウズの人!」ってなった
粗削りで、絵も超絶美麗というわけではないのだが、好きだった
「自分の精神世界を全力で展開すれば、こんなにも苛烈なのだな」というリミッター解除感
その独自性と強烈な個性から「こういう文学なのだな」という風な昇華があり、熱狂的な人気がある…のかもしれない
例えるなら「ニンジャ・スレイヤー」の”独特のワードチョイスと世界観”で人気、にも似た
メインストーリーで戦うすべてのキャラクターに「この場に至る物語」「戦う理由」というバックボーンがある
唐突に過去回想が挿入される「ベルセルク」や「ワンピース」式で必ず明かされる
「忍者もの」というより「一子相伝の暗殺拳法」や「超能力バトル」の様相
古典的なようでいて、斬新な感じもする、独特な作風
なんとなく中毒性がある…気がする
ストーリーは残虐だし、絵もエグいので、おおよそ「絵がみたい!」「続きが読みたい!」で次を求めていく感じではないのだが…
ひと呼吸おいては「やっぱり続き読も」という感じで、ずるずると最新巻まで読んでしまった
そのどぎつい `個性` に当てられるのか、中毒的に読んでしまう…のかもしれない
「くさや」や「シュールストレミング」の魅力…というと作品に失礼か
総評
作者の個性全開の強烈なヴァイオレンス作品を読みたい人におすすめ
通常は綺麗な絵・綺麗な物語の漫画を読んでる方への「時折の刺激」としても良いかもしれない
最後までお読みくださり、ありがとうございます!
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